• ホーム
  • ニュース
  • トピックス
  • 2018年度
  • “ワン・フォー・オール”の心でアジアとスクラム:青年海外協力隊員が指導するインドとスリランカのチームがラグビー国際親善試合

“ワン・フォー・オール”の心でアジアとスクラム:青年海外協力隊員が指導するインドとスリランカのチームがラグビー国際親善試合

2018年7月27日

「チャロ、チャロ(行け行け)!」「デンナ、デンナ(こっちこっち)!」。芝生のグラウンドに、インドのオリヤ語やスリランカのシンハラ語のかけ声が響きます。

6月17日、インド東部のオディシャ州で、JICAの青年海外協力隊員が指導するインドとスリランカの7人制ラグビーのチームが、国際親善試合で相まみえました。18才以下のユースを中心にインドから男女各2チーム、スリランカから男女各1チームの計76人が参加。先住民族や貧困家庭をはじめ、さまざまな境遇の若者たちが懸命にボールを追いかけました。この舞台を支えたのは、JICAと公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)による「JICA-JRFUスクラムプロジェクト」です。

【画像】

親善試合で競い合うインド[黄色ユニホーム]とスリランカの男子選手たち(写真:飯田陽平)

試合後、スリランカの女子選手ニプニさん(18歳)は「インドの選手たちは本当に上手。とてもいい経験になった。次こそ勝ちたい」と興奮さめやらぬ表情。インドの男子選手プリオさん(16歳)は「初めて別の国のチームと試合ができてうれしかった。もっと練習したい」と笑顔で汗をぬぐいました。

【画像】

親善試合でボールを運ぶスリランカの女子選手に、タックルするインドの女子選手(写真:飯田陽平)

「さまざまな境遇の人たちの社会参加に」

2019年、アジアでは初開催となるラグビーワールドカップが日本で開かれます。世界のラグビー人口に占めるアジアの競技人口は1割と少ないなか、大会のホスト団体を務めるJRFUはアジアでのラグビーの普及と発展に取り組んできました。その一環として2013年に立ち上がったのが、「JICA-JRFUスクラムプロジェクト」でした。ラグビーを指導する青年海外協力隊員をアジアの学校や地元のクラブチーム、ナショナルチームに派遣。プロジェクト開始以来、ラグビー隊員はアジア7カ国に加えてアフリカ2カ国に派遣され、計25人を数えます(2018年6月末)。

「ラグビーは背の高い人、太った人、足の速い人など、さまざまな人が活躍できるスポーツ。貧富の差や民族の違いといった多様性を受け入れる素地があります」

JRFUとの連携の橋渡し役を務めたJICA青年海外協力隊事務局の勝又晋次長は、ラグビーの魅力をそう語ります。自身もかつて選手としてプレーした経験があり、「スクラムプロジェクトを通して、日本ラグビーならではの『One for All, All for One』(献身と協力)や『No Side』(尊敬と友情)の心を伝えたい。競技の普及だけではなく、さまざまな立場や境遇の人たちの社会参加、国や地域の平和促進などにもつながってほしい」と話しています。

教え子たち、「協力」「尊敬」を学ぶ

選手たちにスクラムの指導をする「ラグビー隊員」の徳武さん(写真:飯田陽平)

国際親善試合の日、チームを見守るJICAのラグビー隊員たちの姿がありました。

インドのオディシャ州に派遣されていた徳武寛貴さんは2016年から2年にわたり、27,000人の先住民族の子どもたちが通う学校で、約500人の生徒を指導しました。「ラグビー隊員の教え子同士が対戦できて、勝ち負けに関係なく感動した。2年間やってきてよかった。子どもたちへの愛情がより大きくなった」と喜び、「生徒たちが経験を生かし、次の世代に引き継いでほしい」と期待を込めました。

スリランカ南部のゴール県に派遣されていた森心(もり・まこと)さんは学校や空き地を巡回して、2年間で約500人の選手を育ててきました。「彼らはラグビーに出会い、仲間と協力することや相手を尊敬することなどを学び、生活での変化が見られるようになりました」と振り返ります。

インドとスリランカでは、かつてイギリスの植民地だったことから、クリケットなどのスポーツが盛んです。一方、ラグビーの競技人口はアジアの中では日本(約12万人)に続き、スリランカで約9万人、インドで約5万5,000人と、少しずつ増えています。

流通経済大学ともスクラム インドネシアで3,000人に普及

流通経済大学と連携の覚書を交わした署名式

JICAは2017年7月、流通経済大学(茨城県)との間で、青年海外協力隊に関する連携覚書(JICAボランティア大学連携事業)を締結しました。その一環として、今年2~3月には、同大学の教諭、学生ら10人がインドネシアの4州5県の学校やラグビー協会などで計約3,000人を対象に、指導や普及活動にあたりました。

元ラグビー日本代表選手で、JRFU普及育成委員会の国際協力部門長を務める向山昌利さんは「今回の親善試合の開催は、プロジェクトの持つ潜在力を示す素晴らしい機会となった。今後もJICAと連携して、主にアジアにおけるラグビーの発展、ラグビーを通じた相互理解の深化と共生、社会還元を目指していきたい」と語っています。

入賞したインドの選手たちにトロフィーを渡すJRFUの向山さん(写真:飯田陽平)

来年に日本での開催を控えたラグビーワールドカップ。協力隊員が派遣された国からの参加は実現しませんでしたが、オリンピックでは2016年のリオデジャネイロ大会から男女とも7人制ラグビーが競技として採用されました。アジアの国々から、ワールドカップやオリンピックの舞台で躍動する選手が誕生する日も、そう遠くないかもしれません。

【画像】