ミャンマーの銀行をもっと便利に 中央銀行の決済システムの開発を支援

2018年8月8日

一般銀行に山積みされた札束。カビが生えている紙幣もあるため、マスクをして仕事する銀行員も。決済システムの近代化は喫緊の課題です。

ミャンマーでは銀行振り込みが利用できるのは限られた銀行だけ、しかも相手にいつ届くかわかりません。そのため現金払いが多く、銀行窓口には常に利用者が長蛇の列、窓口にも事務作業をする銀行員のデスクの周りにもお札が山積み。これがミャンマーの銀行のこれまでの状況です。
                 
ATMや銀行窓口で振り込みをすれば、すぐに振込先の口座にお金が届く日本の常識は、日本銀行を中心に全ての銀行がつながる高度な決済システムがつくられているために実現している便利さです。

JICAは現在、ミャンマーの決済システムの近代化に向けた支援を進めています。日本の決済システムを初めて海外へ展開する取り組みで、JICAにとっても他国の中央銀行の決済システムの開発支援は前例がありません。金融取引が急拡大するミャンマーでお金の流れを円滑にし、経済成長を後押しします。

銀行間のお金のやりとりをスピーディーにする

大勢の人で混雑するミャンマーの一般銀行の窓口

ミャンマーでの銀行振り込みの手順をみると、顧客は口座を開設している銀行の窓口で支払先の銀行口座を伝え、銀行同士はFAXや電話で連絡を取っていました。

その事務処理は手作業で、その日のうちに支払先の口座に着金するかどうかはわかりません。そのため、急ぎの場合は振り込みを使えず、結局、顧客は支払先の銀行の窓口に現金を持ち込むことになります。

ミャンマーでは偽装紙幣の防止などのために中央銀行が高額紙幣を発行しておらず、多額の支払の場合は紙幣の量が膨大となります。大金を銀行まで運ぶのは不便で、さらには運ぶ道すがらで強盗に遭う危険性もあります。

JICAは、ミャンマー全体のお金の流れを円滑にする基盤として、まずは、中央銀行と一般銀行との間で日本の決済システムをモデルにしたシステムを開発。2016年からシステムの稼動が開始され、中央銀行と一般銀行の間で、銀行間の取引がオンラインで実行できるようになりました。それに伴い、現金決済から電子決済への移行を促すことができ、これまでのような多額の現金持ち運びのリスクが軽減されつつあります。

2018年から決済システムをさらに拡張

2018年から、JICAはこの決済システムの拡張を進めます。これにより、銀行間の安全で確実な決済手段がさらに整備され、ミャンマーにおける金融サービスの向上が期待されます。

例えば、異なる銀行間での即時送金ができるようになることが期待されます。そうなれば、現状は現金手渡しが多い従業員への給与支払いについて、銀行振り込みが利用しやすくなるほか、異なる銀行間での自動振り込みや自動引き落としなども可能になります。

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最大都市ヤンゴンのパゴタ(仏塔)の前で、スマートフォンを操作する若者

ミャンマーでは、経済活動の活発化やインターネット・携帯電話の普及により、銀行口座数や口座間の取引が増加し、モバイル決済のような新たなサービスが広がりつつあります。お金の流れをさらに円滑化するため、JICAは、銀行をはじめとする金融サービスの効率化を進めていきます。

決済システムの開発から制度整備、人材育成まで支援

JICAは、決済システムの開発を支援するだけでなく、決済を円滑かつ安定的に行うための中央銀行の体制・制度整備や人材育成も支援しています。

ミャンマーで決済システムの整備に携わるJICA専門家。左から乾 泰司専門家、向井 直人専門家、川畑 博司専門家。

2014年からシステムの開発や人材育成に携わってきた川畑博司JICA専門家は「ミャンマーでは銀行業務がすべて紙ベースで、しかも各部署が口伝えで業務を行っていたため、まずは煩雑な仕事の流れを把握し、整理するのが大変でした。また、紙の伝票や電話連絡など、従来の『紙』文化から脱し、システムを使って仕事をすることを理解してもらうのも一苦労でした」と語ります。

また、決済業務にとどまらず、金融システム安定化、金融政策、マクロ経済分析予測といった分野でも中央銀行の政策遂行能力を高めるための人材育成をJICAは行っています。

中央銀行での人材育成に携わってきた渡邉賢一郎JICA短期専門家(一橋大学 特任教授)は「現在、ミャンマー中央銀行は、お金の量のコントロールに依拠した統制型の金融政策から、金利メカニズムを重視した市場型の金融政策への移行途上にあります。幹部職員から若手職員を含む幅広いスタッフを対象とする研修においては、金融経済理論だけでなく、金融市場調節や市場関係者との対話などに関する実務的な知識・経験の習得にも力を入れています」と述べています。

国の経済を支える中央銀行に向けたJICAの支援は、各国に広がっています。ベトナムでは、中央銀行の金融政策や経済分析予測の能力向上に取り組んでいるほか、紙幣印刷インク製造技術向上の支援も行いました。また、東南アジア各国の中央銀行職員を対象に、中央銀行の役割や金融政策に関する日本での研修も実施しています。