野球支援、世界へ:元高校球児のJICAボランティアたちが「好プレー」!

2018年8月15日

この夏、「甲子園」で知られる全国高等学校野球選手権大会が100回目を迎えました。その熱気は海を越え、1万キロ以上離れたタンザニアの地にまで伝わっています。

現地では5年前から、約200人の「球児」が頂点をかけて競い合う「タンザニア甲子園」が開幕。チームを指導しているのは、元高校球児のJICAボランティアたちです。平和促進や相互理解などにつながるものとして、スポーツ分野での開発協力が注目される中、日本ならではの野球を生かしたJICAの取り組みが世界に広がっています。

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野球分野でJICAボランティアを派遣した国(赤色箇所)

タンザニア甲子園に根づくフェアプレーや礼儀の心

「サラマー!」。昨年12月、赤道に近いタンザニアで、ユニホーム姿の選手たちがスワヒリ語であいさつを交わし、野球の試合を始めました。決着が着くと、ホームベースの前にきちんと並んで帽子を取って一礼しました。

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タンザニア甲子園の第5回大会の開会式の様子

試合後、握手を交わし合った選手たちは「野球を通じて、規律、尊敬、正義の心を学んだ。しっかりと鍛え、相手を尊重し、正々堂々と闘う」と口をそろえます。日本の野球のフェアプレーやチームプレー、礼儀の精神が、タンザニアに根づいています。

タンザニア甲子園は2014年、JICA職員が主宰するNPO法人「アフリカ野球友の会」によって始まりました。それから、野球用具や資金の提供などさまざまな団体からの支援によって、毎年真夏にあたる12月に都市部のダルエスサラームで開かれ、昨年の第5回大会には、セカンダリースクールに通う14歳~17歳の10チーム約180人が参加しました。20時間かけてバスで駆けつけたチームもいました。

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タンザニア甲子園の試合の様子

高校野球監督歴30年のJICAボランティアが活躍!

アフリカ野球友の会やタンザニア在住の日本人たちによって野球を通じた活動が現地で地道に続けられるなか、JICAも2016年からボランティアを通じた野球指導を始めました。

ナショナルチームに指導する岩崎さん

2017年からシニア海外ボランティアの「野球隊員」として活動する岩崎広貴さん(67歳)も、その一人です。週6日間、ダルエスサラームにあるセカンダリースクールなど約20校を指導してまわり、ナショナルチームの監督も務めています。自身も元高校球児で、夏の兵庫県大会に6番サードとして出場し、県ベスト4の実績を残しました。その後も、商業学科教諭の傍ら、約30年にわたって、高校球児たちを指導し、退職を機にJICAボランティアに応募しました。

「野球人生から教わった『目標に向けて力を尽くす大切さ』を伝えたい」。しかし、数年前まで競技人口がゼロに等しかったタンザニア。学校によっては、生徒全員が十分に使えるだけのボールやバットがないため、ペットボトルのふたでバッティング練習をしたり、木の枝で素振りをしたりすることもありました。そんな中でも、「純粋に野球を楽しんでもらい、達成感や成長を実感してもらうこと」をモットーにしたと言います。

セカンダリースクールでバッティングの指導をする岩崎さん

初めは消極的だった選手たちにも、少しずつ変化が現れました。「速い球を投げるにはどうすればいい?」「ミスが多いから守りの練習をしたい!」。自ら質問や提案をするようになり、打球の受け止め方を手とり足とり教える上級生の姿も。岩崎さんは「野球は、心の成長を促す。自分がここで野球を教える意義は、これなのだと、あらためて思った」と振り返ります。

昨年、タンザニア甲子園の選抜メンバーで構成されるナショナルチームは東アフリカ大会に5年ぶりの出場を果たし、強豪のケニア相手に1点差まで詰め寄りました。現在、国内初の野球場の建設も進められており、さらなる野球の普及に期待が膨らんでいます。

JICAボランティア指導のスリランカとボツワナのチームが来日

スリランカチームと八木隊員(左から2人目)

7月末、スリランカに「野球隊員」として派遣中の八木一弥さんがコーチを務める18歳以下の同国代表チームが来日しました。甲子園100回大会を記念した行事で、神奈川県の高校球児の選抜チームと練習や試合を通して交流しました。スリランカには2002年から「野球隊員」の派遣が続けられ、同国のナショナルチームは2017年の西アジアカップで強豪のパキスタンに勝利して優勝を果たすなどの成長を遂げており、2020年の東京五輪出場を目指しています。

日本との初戦に臨むボツワナチーム

また、JICAは野球と同様に、ソフトボール分野でもボランティアを派遣しています。8月上旬に千葉県で開催された世界女子ソフトボール選手権大会には、ボランティアの中村藍子さんが指導するボツワナのチームが出場を果たしました。初戦の日本戦で敗れはしたものの、ボツワナの選手たちが好プレーで見せ場をつくるシーンもありました。

世界に広がる野球支援 34カ国に541人を派遣

スリランカで審判員の育成にあたるJICAボランティアの小山克仁さん

JICAの野球支援は、1970年のフィリピンに始まり、アジアやアフリカ、中南米など計34カ国に541人のボランティアを派遣してきました(7月末現在)。

ボランティアは、甲子園出場経験も含め、高校野球の経験者が多く、中には、仕事を退職して2度目の派遣でウガンダの代表監督を務めたり、スリランカで審判員を育成したりしているケースもあります。また、大会などに合わせた短期ボランティアのグループ派遣も実施しています。

中でも、各国に評価されているのが、チームプレーやフェアプレー、礼儀を重んじる日本式の指導方法です。これが子どもの教育に良い影響を与えるものとして、ボランティア要請時に、各国から日本式の指導が求められています。

2013年、JICAが野球・ソフトボール分野で、40年以上にわたってボランティアを派遣し、各地で普及や発展に寄与したことが評価され、国際野球連盟から特別表彰を授与されました。同年のワールド・ベースボール・クラシックでは、ボランティア経験者がコーチを務めたドミニカ共和国代表チームが優勝したほか、ボランティアから初めて野球を教わったブルキナファソの青年が、日本プロ野球独立リーグの練習生として来日したケースもあり、長年にわたる活動が少しずつ実を結んでいます。

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