【地方から世界へ:Vol.2】バイオトイレでカメルーンの衛生環境を改善:大分のベンチャー企業の挑戦

2018年8月28日

カメルーンに到着したバイオトイレ

2017年3月、完成したばかりのバイオトイレを積んだ船が、大分港を出発しました。

2か月かけて届ける先は、はるか1万キロ以上先のアフリカ中部の国カメルーンです。下水道が整備されていないこの国では、屋外に穴を掘っただけの場所で用を足す人が多く、悪臭や水質汚染にさらされ、感染症や犯罪の温床にもなっています。

そこで立ち上がったのが、大分県のベンチャー企業です。大分とカメルーンは、2002年に日本と韓国で開かれたサッカーのワールドカップで、カメルーン代表が旧中津江村(現・日田市中津江村)を合宿の拠点にして以来、交流を続けています。JICAの「中小企業海外展開支援事業」を通じて、現地で、水がいらないバイオトイレ普及の取り組みが始まりました。シリーズ「地方から世界へ」の第2回は、大分での取り組みです。

カメルーンの首都にバイオトイレ16台設置

昨年11月14日、カメルーンの首都ヤウンデ市の市庁舎とヤウンデ第一大学に、バイオトイレが8台ずつ設置されました。微生物の力で排泄物を分解する仕組みで、水洗浄やくみ取りが必要なく、臭いもでないことが特徴です。洋式で一人がゆったり座れるスペースが確保されています。

設置したのは、大分県のベンチャー企業「TMT. Japan」。富士山などの山岳地帯用のトイレ製造などを手がけてきた創業30年の地元企業など数社が、共同出資してできた会社です。同社代表の横山朋樹さんは、2002年のワールドカップ以来、「もし海外で仕事をする機会が訪れたら、カメルーンでやってみたい。そんな思いがずっとどこかにあった」と振り返ります。

ヤウンデ市庁舎に設置した際のセレモニーの様子

2014年、JICAの中小企業海外展開支援事業の案件化調査に手を挙げ、その後バイオトイレの普及・実証事業が採択されると、横山さんは10回以上カメルーンに渡航。保健衛生省、環境省など関係機関を訪問し、バイオトイレの説明を繰り返しました。大臣に直談判したこともあり、1年近くの活動を経て、ようやく設置にこぎつけました。

2017年11月にヤウンデ市であったトイレの引き渡し式には、大分から新聞社やテレビ局が取材に訪れたほか、旧中津江村の元村長の坂本休(さかもと・やすむ)さんも駆けつけました。

横山代表を突き動かしたのは、現地で目の当たりにしたカメルーンの劣悪なトイレ事情でした。ヤウンデ市には200万人以上が生活するにもかかわらず、公共トイレは数カ所。一般家庭では、穴を掘っただけのトイレを数軒が共同で使うケースがあり、雨期には排せつ物が周辺にあふれ出すこともあります。さらに、横山さんは、夜間に屋外で用を足す女性が性犯罪の被害に遭う事件もある、と女子学生から聞きました。「バイオトイレのニーズは、待ったなしだった」と振り返ります。

【画像】

これまでのトイレ(写真左)、設置されたバイオトイレ(写真右)

「トイレがあって安心」 女子学生から喜びの声

ヤウンデ第一大学に設置されたバイオトイレ

バイオトイレの設置から約9か月。ヤウンデ第一大学で利用する学生たちの声を聞きました。

「清潔で臭いもないので快適です」
「学内にきれいなトイレがあるのは安心。いつも使っています」

これまでのトイレは断水などによって水が流れず、不衛生で使う人はほとんどいませんでした。特に女子学生は「トイレに行きたくても我慢するか、自宅に帰るかしかない」状況でしたが、バイオトイレを設置してからは毎日約150人が利用しており、「勉強や研究に集中できる」といった声もあがっているといいます。

横山さんは「今後も定期的に成果や状況を確かめながら、利用者が増えるように改善していく」と気を引き締める一方、「 アフリカでは同じように衛生面の課題を抱える国もあり、バイオトイレのニーズは高い。将来的には近隣国にも活動を広げていきたい」と語ります。

大分×カメルーン 他事業にも展開

大分では、横山さんのチャレンジに刺激を受け、同じようにカメルーンの課題解決に取り組もうとする動きにつながっています。

昨年11月、横山さんが代表を務める「大分-カメルーン共和国友好協会」が実施したカメルーン視察ツアーに、大分県内の中小企業7社の経営者たちが参加しました。横山さんの活動を知って、「自分も何か途上国でできることがないか」と意気込む参加者もいたといいます。

現地では約1週間、ヤウンデ市内を見てまわったり、横山さんの人脈を生かして、現地の企業や政府関係者と意見を交わしたりしました。そのうち、大分で自動車リサイクル業に携わっている企業は、多くの廃車が放置されているカメルーンの現状に、自社のノウハウを生かせると考え、帰国後、事業化に向けて本格的に動き出しました。JICAがつないだ地域から世界への取り組みをきっかけに、地域にもまた、良い機運が生まれています。

企業や自治体、大学などとの連携で地方創生

JICAは、日本国内の中小企業や自治体、大学などと連携することによって、地方創生や地方の人材育成への貢献にも力を入れています。

国内事業部の井倉義伸部長は「日本各地には途上国の開発に役立つ素晴らしい技術があり、才能をもった人材の宝の山です。それらを再発見し、国際協力に生かしていくことが地方における民間連携の狙いです。企業などの活躍と地域の価値の再発見を通じ、国際協力が地方創生につながっていくと思います」と話しています。