ベトナムと日本の架け橋となる人材に:日越大学から初の卒業生56人巣立つ

2018年9月4日

卒業生代表として挨拶するグエン・マイン・トゥンさん。「日越大学で出会った仲間たちも大きな財産」と話します。日本人の規律を大事にする姿、思いやりの心に引かれ、日越大学への進学を決めました。

「知識だけでなく、日本の文化やビジネスのやり方を学べて大きく成長できました。日本企業で働きながら専門的なスキルを身につけ、会社の中核を担う存在になりたいです」。

ベトナムの首都ハノイにある日越大学で7月、第1回学位授与式が行われ、総代を務めた社会基盤プログラムのグエン・マイン・トゥンさんは、日越大学修士課程で学んだ2年間をこう振り返りました。トゥンさんは東京の建設会社に内定し、12月から仕事を始める予定です。日本とベトナムの架け橋となり日越大学の学生をサポートしながら、日本でもベトナムのよさを知ってもらうようにしていきたいと今後の抱負を語ります。

日越大学は2016年9月に、日本とベトナム両政府の協力のもとに設立された大学です。ベトナムにおける最高水準の研究機関、人材育成の拠点として日越をつなぐ優秀な人材を輩出することを目指しています。今回卒業した第一期生56人のうち約10人は日本企業への就職が内定、9人が日本政府等の奨学金を獲得し日本の大学に進学予定です。

JICAは、これまでの高等教育分野における支援の知見や経験を生かし、日本のトップクラスの大学と連携して日越大学に指導教員や大学運営経験を持つ専門家を派遣し、学生たちの学びを支えています。

社会で役立つ思考力や実践的な学びが特徴

ベトナム側のニーズを考慮し、日越大学には地域研究、公共政策、企業管理、環境工学、ナノテクノロジー、社会基盤の6つの修士課程プログラムがあり、それぞれのプログラムを担当する日本の幹事大学が教育プログラムの作成や教育・研究活動をサポートしています。全教員のうち約半数が日本人で、授業は英語で実施され、日本語の授業も必修となっています。

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日越大学の修士課程プログラムと幹事大学

中島淳専門家(右から2番目)と日越大学修士課程環境工学プログラムの学生たち

日越大学の学びの特徴は、従来のベトナムの教育とは異なる教育方針を採用していることです。環境工学プログラムで教鞭をとる中島淳専門家(前立命館大学理工学部環境システム工学科教授)は、「一般的にベトナムでは一方向講義の座学が中心ですが、日越大学では学生に社会で役立つ思考能力を身につけるための実践的な学びが中心です」と言います。授業中の議論や発表、フィールド学習などを重視し、学んだ知識や技術をベトナムの社会的課題に活用する問題解決型の学習を取り入れています。

ベトナム人の学生について中島専門家は、「チームワークを重んじ、お互いを助け合って一緒に成長していこうとする意識が強い」と述べ、日本のこれまでの発展や開発の歴史のなかで、失敗したことについても伝え、その教訓を生かせるようにしてほしいと学生たちにエールを送ります。「修士論文の進行が遅い学生もいて、完成までハラハラし通しでした」と苦労も振り返りながら、中島専門家は今後、ベトナム人の専任教員の育成を課題に挙げています。

また、日越大学は学生たちから日本式のきめ細かい指導も高く評価されています。横浜国立大学の博士課程に進学する企業管理プログラムのグエン・アイン・ハオさんは、「修士論文の執筆の際には指導教授が長時間、熱心に指導してくれました」と述べます。日本で研究に打ち込み、将来の夢は「教員か研究者になること」です。ナノテクノロジーを学んだル・オン・ヒュー・ドゥックさんは、教授の昼夜を問わない指導で論文が専門誌に掲載され、忘れられない思い出になったと言います。卒業後は大阪大学の博士課程で学びます。

進学や就職への手厚い支援も魅力

ベトナムでは卒業してから仕事を探すのが一般的ですが、日越大学の学務課には進学・就職それぞれの相談員が常駐。進路関係の業務を支援する田中一平専門家(法政大学学務部教学企画課長)は、「まずは学生全員にアンケートを実施し、将来の希望などを調査して対策を立てました」と話します。

キャリアセミナーに参加する日越大学の学生たち

その上で、飲食、物流、製造など幅広い業種の日本企業と連携し、年10回ほどのキャリアセミナーを実施しました。「日本語が話せる」「長期で働ける」といった企業側のニーズを学生たちに伝えながら、日本の労働文化や面接などを学ぶ場を設け、双方のマッチングを図りました。

また、学生たちが口をそろえて言うのが「日本でのインターンシップがとても役立った」ということです。2年次に行われるこの3ヵ月のプログラムで、学生たちは所属するプログラムの幹事大学で学べるほか、日本企業の見学もでき、これをきっかけに自分の進路を決めた学生も多くいます。社会基盤プログラムのグエン・シー・クオンさんは東京大学でのインターンシップに参加し、日本の研究レベルの高さに感動。帰国後、「絶対に日本で働きたい」と日本語を猛勉強して見事に九州のコンサルティング会社の内定を勝ち取りました。

ここ数年、6~7%の高い経済成長率を維持するベトナム。市場としての将来性の高さや労働力の質の高さから日系企業の進出も相次いでいます。日本式の教育で学んだ優秀なベトナム人材への需要は日系企業側から高まるなか、JICAは今後、日越大学における学士課程の新設なども支援していく予定です。