【明治150年 世界に受け継がれる日本の近代化経験:Vol.1】JICA開発大学院連携がスタート

2018年9月28日

今年2018年は、明治元年(1868年)からちょうど150年です。非西洋から先進国となった世界で最初の国である日本。その経験は、今、開発を進める多くの途上国にとってモデルケースになると言えます。

シリーズ【明治150年 世界に受け継がれる日本の近代化経験】では、日本が近代化の過程で味わった経験を途上国に伝えるJICAの取り組みを4回にわたって紹介します。日本は明治期に、外国から学んだ知恵を生かし自国の伝統を大切にしながら、自由で民主的な国の土台を作り上げました。国づくりの基礎となる憲法や法律の制定、義務教育の導入、鉄道整備など、さまざまな取り組みを進めました。

内閣官房「明治150年」関連施策推進室のロゴマーク

シリーズ第1回は、国づくりの基本となる人づくりへの取り組みです。政府の要人や留学生たちによる岩倉使節団は、明治期に欧米を巡り、さまざまな知識を得て日本の国づくりに貢献しました。

それから約150年、JICAは今年10月、途上国の未来と発展を支えるリーダーとなる人材に向け、日本の近代の経験を伝える新しいプログラム「JICA開発大学院連携」を始めます。このプログラムは日本政府が推進する「明治150年」関連施策の一つに認定されています。

欧米とは異なる日本の近代化の開発経験と、戦後、東アジアを中心とする開発途上国の発展に協力してきた国としての知見を同時に学ぶ機会を提供。今後、5年後をめどに年間合計2000人規模のJICA研修員(大学院の修士課程中心)などにその経験と知見を伝え、自国での発展に役立ててもらうことが狙いです。

関連リンク:

JICA開発大学院連携で、より深く日本を理解し、その学びを自国の発展に生かす

ABEイニシアティブを通じて日本の大学院で学ぶJICA研修員(左)

JICAは現在、アフリカの若者に日本の大学院での教育や企業インターンシップの機会を提供する「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)『修士課程およびインターンシップ』プログラム」など、JICAの人材育成事業の枠組みで来日する研修員のうち、日本の大学の学位課程への就学を通じた途上国の国づくりを担う人材育成の支援を日本各地の大学と連携して展開しています。

そんな人材に向け、「JICA開発大学院連携」では、大学の学位課程での専門分野の教育・研究に加え、日本の近現代の発展や開発の歴史を英語で提供します。「日本理解プログラム(共通プログラム)」と「各大学におけるプログラム」の2つで構成されており、後者は全国17の大学(2018年7月現在)で、この10月から本格的に始まります。

【画像】

7日間の集中講義「日本理解プログラム(共通プログラム)」

「日本理解プログラム(共通プログラム)」は、JICAの人材育成事業で来日した学生を対象にした7日間のプログラムで、政策研究大学院大学(東京都港区)で実施されています。まずは日本の近現代史などについて3日間の講義を行います。さらに、国会見学などのフィールドトリップのほか、最終日には「日本の開発経験から学んだこと」「現在の日本が抱えている挑戦」などについて、参加者がそれぞれの視点で協議し、発表します。

学生たちが参加しやすいよう夏休みや春休みを利用して開催。今年8月から9月にかけて3回実施され、来年2月にかけて今年度は合計5回(定員150名)が予定されています。

【画像】

9月に政策研究大学院大学で実施された「日本理解プログラム(共通プログラム)」の最終日の様子。

モハメド・マハムード・アハメド・エルタヘルさん

「日本の教育システムが国の発展に寄与していることがわかりました」とプログラムの感想を語るのはABEイニシアティブの長期研修員で、現在、三重大学大学院で生物資源学を学ぶモハメド・マハムード・アハメド・エルタヘルさんです。舗装などの素材に関する技術者で、エジプトでは空港運営会社で働くモハメドさんは、誰もが教育に簡単にアクセスできるようにするためには道路などの整備を進めていくことも必要と強調。帰国後は、空港だけでなく、道路や鉄道といった交通インフラの整備についても、貢献していきたいと述べます。

チャン・マイ・カイン・ゴックさん

また、明治大学大学院で国際関係学を専攻するベトナムからの人材育成奨学計画(JDS)留学生、チャン・マイ・カイン・ゴックさんは「明治時代にどんなことがあったかなど個々のできごとについては知っていましたが、歴史上のできごとがどのように結びつき、日本の発展につながっているのか明確になり、より深く日本を理解できるようになりました」とプログラムについて語ります。

夏休みを返上して参加したことは正解でした、と苦笑するチャンさんは、ホーチミン市の行政官。今後、さまざまな国との関係構築にもこのプログラムでの学びを生かしていきたいと言います。

全国17大学で、強みや特徴を生かした「各大学におけるプログラム」を展開

JICA開発大学院連携のもう一つのプログラムは、JICAの人材育成事業で研修員などを受け入れている大学のうち、全国17の大学(2018年7月現在)と連携した「各大学におけるプログラム」です。法律・政治、経済、防災、環境、農業、保健など各大学の強みを生かし、それぞれの大学で特色ある日本の開発経験を伝えます。

【画像】

「各大学におけるプログラム」を提供する大学研究科(2018年7月現在)
※大学・研究科とJICAの双方で文書にて合意できている大学研究科。
この他にも現在、相談中の大学・研究科があります。

北岡伸一JICA理事長は、「途上国の将来的なリーダーとなる人材には、日本で学んだ日本の開発経験をそれぞれの国の発展に生かし、日本との絆をさらに深めながら世界で活躍してくれることを期待しています。」と述べています。また、各大学におけるプログラムには、今後、日本人や他の先進国からの学生にも参加を呼びかけます。「さまざまな国の人々と日本の開発経験を共に学び合うことは、日本の大学にとっても大きな刺激になるはずです」。

JICAは、途上国の国づくりを担う人材が専門知識に加え、日本の開発経験を身に着け、自国の発展に役立てていけるよう今後もサポートを続けていきます。