UNRWAとも連携 パレスチナ難民を誰一人取り残さないために

2018年10月4日

ヨルダン北部イルビットのパレスチナ難民キャンプの壁に書かれた「1人の子どもも取り残さない」の文字=2012年

世界の難民2,000万人の4分の1を超えるパレスチナ難民の教育や保健・医療をどう支えるのかを話し合う、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA;ウンルワ)支援の国際会議がこのほど、アメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれ、日本の河野太郎外相が共同議長を務めました。

JICAは、パレスチナ自治区・ヨルダン・シリア・レバノンのパレスチナ難民キャンプなどで生計向上や母子手帳のプロジェクトを進めるほか、UNRWAの運営する学校へJICAボランティアを派遣するなど、パレスチナ難民を支える取り組みをUNRWAとも連携しながら進めてきました。現場を経験したJICA関係者の体験を交えて紹介します。

1950年から人道支援 約700校で50万人が学ぶ

ヨルダン・アンマンにあるパレスチナ難民キャンプ。開設から年月がたっているため、さながら「町」のようでもある

およそ70年前、イスラエル建国とその後の第一次中東戦争によって、多くのパレスチナ人が故郷を追われました。故郷を離れた人とその子孫の帰還は進まず、その人たちがパレスチナ難民と呼ばれます。

1949年に設立されたUNRWAは、翌50年から教育、医療・保健、救済・福祉などの人道支援を行っています。運営する小中学校は約700校で、児童・生徒数は計約50万人。約140ヵ所の保健所も運営しています。教員や医療スタッフなど職員は約3万人です。(注)

JICAは2000年以降、体育や美術・音楽を担当するJICAボランティアをヨルダンやシリアなどへ派遣しています。UNRWAとJICAの連携を強化し、より効果的な支援を実施するために、2011年8月、両者は包括協力協定(MOU)も結んでいます。

子どもたちに仲間や相手を思う気持ちを伝えられた

UNRWAの運営する学校で指導中の三角さん(中央)

三角梢恵さんは2010年9月から2011年春まではシリア、2011年8月から2013年1月まではヨルダンにあるUNRWAの学校で青年海外協力隊の体育隊員として活動しました。印象的だったのは、長なわとびやドッジボールを通じた子どもたちの変化でした。

「最初は勝つことが一番で、順番も守らないし、負けても結果を認めず、仲間や相手を非難していました。その子どもたちが2ヵ月ほどで、『ルールを守ろう』と話し合ったりするようになったのです」

体育の授業を受ける子どもたち。ドッジボールの練習中には仲間と作戦会議をするようになったという

ドッジボールの試合の前と後には、必ず相手チームと握手し、うまく長なわとびができない子どもも順番に練習できるように促しました。協力することで達成感が味わえることを学ぶと、順番待ちの列をつくるようになりました。

2018年9月末現在、ヨルダンにある計6か所のUNRWAの施設で、JICAボランティアが活動中です。

キャンプの難民の生計向上なども支援

自立を目指し、香水やクリームをつくる支援を受けているパレスチナ難民の女性

パレスチナ難民問題が長期化する中、JICAはUNRWAと緊密に連携しながら、難民の生計向上などにも取り組んでいます。

ヨルダンのキャンプで生活する女性に2006年から職業訓練や起業家支援を実施。2009年からは女性の就労に対する理解を広める活動を展開しています。

2016年からは、パレスチナ自治区内で、「難民キャンプ改善プロジェクト」を実施。住民参加型のアプローチを通じてコミュニティ全体で生活状況を改善するための計画づくりやその実践に取り組んでいます。

当事者のメッセージを日本の人たちに

JICA中東・欧州部の服部修職員は2015年7月から2017年7月まで、UNRWAの広報・渉外局に出向して勤務しました。

UNRWAの活動資金は、各国からの任意の拠出金でまかなわれています。服部さんの「ミッション」は、パレスチナ難民の窮状を政府や政策立案に関わる人たちに理解してもらい、日本などからの支援を維持・拡大することでした。

日本から視察団が現地に来ることがあれば、学校などの視察をアレンジしました。紛争が続き、状況が苦しいなかでも元気に明るく生きる子どもたち、日々を生きるパレスチナ難民の日常を感じてもらいました。

2015年には、ピエール・クレヘンビュールUNRWA事務局長の訪日に合わせ、日本のNGO「日本リザルツ」と協働し、ガザの中学生3人の日本訪問を企画しました。一行は東日本大震災の被災地、岩手県釜石市で地元の子どもたちと交流し、復興に向けて頑張るお互いを励まし合いました。

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岩手県釜石市での地元の中学生とガザの中学生との交流

子どもたちから発せられた言葉はとても印象的でした。

「恐怖を感じることなく、外でこんなに走り回ったのは、初めて」

子どもたちの訪日は、日本で広く紹介され、パレスチナ支援の機運が盛り上がりました。

厳しい状況のなか、服部職員は「日本の人には、まずはパレスチナ難民がいるということ、そしてパレスチナ問題をもっと知ってほしい」と訴えます。「そして、子どもたちの教育を受ける権利を保障することの大切さなどを考えてほしい」と話します。

JICAは今後もUNRWAなどと連携し、パレスチナ難民や難民受け入れ国への支援を続けていく方針です。

(注)UNRWAは、パレスチナ難民を救済する目的で1949年に国連総会により設立。パレスチナ難民問題の合意による解決が見られないことから、その活動期限は定期的に更新されている。
本部は、ガザ、アンマン(ヨルダン)、エルサレムの3ヵ所。現地事務所は5ヵ所。ヨルダン、シリア、レバノン、ヨルダン川西岸及びガザ地区の難民キャンプ 58 カ所を中心に居住するパレスチナ難民を支援する。