フィリピン・ボラカイ島の環境保全に一役:途上国の議題を解決する日本の中小企業を支援

2018年11月8日

環境汚染により閉鎖を余儀なくされたフィリピンの人気リゾート地ボラカイ島で10月末、観光客の受け入れが再開されました。環境対策が進むなか、日本の中小企業の金沢エンジニアリングシステムズ(石川県)が開発したリサイクル技術がこの島の環境改善に一役買っています。JICAは、中小企業が持つ際立つ製品・技術を途上国の課題解決につなげる仲介役を担います。

廃食油をリサイクルし燃料に有効利用

今年10月、ボラカイ島の浄水施設にある発電機の電源に、廃食油をリサイクルした燃料が活用され始めました。これは、金沢エンジニアリングシステムズの技術により、飲食店や家庭から垂れ流しされるなど環境への負荷が問題とされていた廃食油が適正に処理され、ディーゼルエンジンの燃料として有効利用が可能となったためです。リサイクルされた燃料は、軽油と違い再生可能エネルギーのため温室効果ガスの排出が削減され、しかも、軽油より安価です。

金沢エンジニアリングシステムズがソフトウエア開発を手がけるなか、独自に生み出したこの廃食油のリサイクル装置「レナジーシステム」は、既存の発電機に設置でき、廃棄物処理施設のない南北わずか7キロの小さなボラカイ島にとって、うってつけのリサイクル技術です。

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ボラカイ島の浄水施設に設置された回収した廃食油を入れるタンク(写真左)と廃食油のリサイクル装置「レナジーシステム」(写真右)

金沢エンジニアリングシステムズはボラカイ島で、ある1件のリゾートホテルにレナジーシステムを導入。その後、島内でさらなる普及を目指していた2015年、このシステムを利用した事業が、途上国のニーズに合った製品・技術を持つ日本の中小企業の海外展開を支援するJICAの中小企業海外展開支援事業の案件化調査として採択され、システム普及に向けた動きが加速しました。

飲食店から回収される廃食油

同社開発部の吉田功介さんは、「システムの普及に向け廃食油の回収が課題でした。JICAの事業として採択されたことで、政府、自治体、事業者、そして住民が連携しながら、廃食油を適切に回収・処理・廃棄する仕組みづくりを進めることができています」と言います。中小企業にとっても、JICAと連携することで事業がよりスムーズに進むようになりました。2018年からは、現地での製品普及に向けた普及・実証事業として継続されています。

「事業者、住民ともに廃食油の環境への影響という認識が低かったが、この事業をきっかけとして、環境意識を高めたい。特に、地域や子どもたちを巻き込みながら環境教育につなげていきたい」。ボラカイ島の行政担当者も島の環境改善に期待を込めます。

レナジーシステムを導入した電動トライシクルの充電ステーション

今後、このシステムは電動トライシクル(三輪タクシー)の充電ステーションなどにも広く導入される予定です。「ボラカイ島のすべての廃食油を燃料として活用できるようにしたい」と吉田さんは意気込みを語ります。

金融機関との連携や制度改革で、中小企業の参入を後押し

日本は企業全体のうち中小企業が99%を占め、その多くは地方に拠点を置くなか、中小企業の技術と途上国のニーズを橋渡しするため窓口となる役割を果たしているのが国内15ヶ所あるJICAの地方拠点です。金沢エンジニアリングシステムズがボラカイ島での中小企業海外展開事業に応募する際、地方拠点の一つであるJICA北陸は、より現地のニーズに合うよう事業内容の相談に応じるなどサポートしました。

また、JICAは、中小企業の海外展開を支援していることを広めていくため、地元企業の情報に通じた地方銀行との連携も強化しています。2016年からJICA北陸と連携のための覚書を締結した北國銀行の海外ビジネス戦略部の担当者は、「JICA事業を通じて、途上国での課題解決に役立つ技術を持ちながら海外展開に踏み出せない企業の背中を押していきたい」と積極的。すでに連携覚書が功を奏し、事業が採択された中小企業もあり、成果が出始めています。

民間の力を活用した途上国支援に向け、JICAは2012年から中小企業海外展開支援事業を開始。採択された事業数は、2012年の53件から2018年9月には累計で715件に達しました。参入分野も、農業、環境・エネルギー、水の浄化・処理、保健医療など多岐に渡ります。

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JICAの中小企業海外展開支援事業の実績(2018年度は9月時点)
・基礎調査:基礎情報収集と事業計画案を支援
・案件化調査:ビジネスモデルの策定を支援
・普及・実証事業:活動計画の実証を支援

今年9月には、「中小企業海外展開支援事業」改め、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」とし、これまでの制度を整理・統合して企業にとって、より活用しやすくしました。また、10月にはさらなる海外展開支援強化に向け、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)との連携のための覚書を締結しました。

中小企業それぞれの強みを生かした事業が、途上国の課題を解決しながらビジネスとしても成立する仕組みづくりをJICAは推進していきます。