中南米・カリブの記者が来日、日本やJICAの取り組みを取材

2018年11月16日

日本人のブラジル移住110周年、日本とメキシコの外交樹立130年などを迎えた中南米・カリブ諸国から、メディア関係者たちが10月に来日しました。ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドルの新聞社やテレビ局などに所属する7人です。

一行は12日間にわたり、日本の近代化経験や平和主義などを取材したほか、日本と同地域の共通の課題である防災や再生可能エネルギーに関する日本の先進事例を視察しました。JICAは1995年から毎年、開発途上国のメディア関係者を招き、日本やJICAへの理解を深めてもらう機会を設けています。

北岡理事長が日本の近代化経験について解説

日本が近代化を本格化した明治維新から今年で150年。非西洋から先進国となった世界最初の国で、JICAはこの経験を開発途上国への協力に生かす取り組みを行っています。

北岡理事長(前列中央)と中南米・カリブ諸国の記者たち

北岡伸一理事長は、JICA本部でインタビューを受け、「間違いや失敗もあったが、日本は近代的な価値を取り入れながら、伝統を失わなかった。JICAの協力が東アジア地域を中心に有効であったことからも、日本は開発学の中心であるべきだと思っています」と、説明しました。

こうした日本の強みを生かした、途上国のリーダーとなる人材を育成する新しいプログラム「JICA開発大学院連携」が始動したことを挙げ、「近代化と発展のための多様な経験を、教訓も含めて共有したい。ぜひ中南米からも参加してほしい」と呼びかけると、記者たちは興味深そうにメモを取っていました。

「広島の経験、後世に」 日本の平和への思いに触れる

広島を視察する記者たち

日本は戦後、同じ悲劇を繰り返さないため、国際社会で平和主義を掲げてきました。記者たちは、その発信地の一つである広島を訪れ、平和記念公園や平和記念資料館を見学。被爆者2世の方から体験や思いを聞きました。

原爆投下後の壊滅した街の写真や被爆した母親の体験、視察中にも手を合わせに訪れる市民たちの姿に、エクアドルの新聞社「エル・コメルシオ」のマイラ・リリアーナ・パチェコ・パスミニョ氏は「戦争の悲惨さ、平和の尊さは後世に伝えるべき。地球をより良い場所にしていくには、広島の経験などを伝える教育が重要と感じた」と語りました。

防災、再生可能エネルギー 共通の課題を学ぶ

消火訓練の様子

中南米・カリブ諸国は、日本と同じく地震など自然災害が多発している地域です。共通の課題解決に向けて、記者たちは日本の防災や再生可能エネルギーの先進地として知られる九州を視察しました。

福岡市民防災センターでは、東日本大震災と同じ震度7の地震、火災、強風などを体験し、被災時の適切な避難方法を学びました。ドミニカ共和国の新聞社「リスティン・ディアリオ」のリリアン・グレゴリーナ・テヘダ・テヘダ氏は、日本では幼少期から防災教育が始まることに驚き、「自国でも災害発生時の対処法など、防災意識を高めることの重要性を伝えたい」と話しました。

熱心にメモをとる記者たち

また、大分県の地熱発電や福岡県の風力発電の施設を取材した後、北九州次世代エネルギーパークを訪問。風車や太陽光パネルを視察し、リサイクルで作られた洋服や競技大会用のメダルを見学しました。2020年の東京五輪でもリサイクル製品のメダルが使われると聞き、記者たちは感心を示していました。

「日本の地熱発電は実績と経験がある。その技術・知見を広めてほしい」。そう語ったのは、コスタリカから来日した新聞社「ラ・レブリカ」のファビオ・アルベルト・パレアギレ・ガンボア氏でした。

記者たちは12日間にわたって、日本のさまざまな取り組み事例の現場を目の当たりにしました。彼らの今回の学びが帰国後に発信され、中南米・カリブ諸国の課題解決や発展のきっかけとなることを期待したいと思います。