ラオスにすべての人が安心できる保健システムを

2018年12月10日

メコン川に接する村で薪を運ぶ女性

「すべての人が、基礎的な保健医療サービスを、必要な時に負担可能な費用で利用できる状態」をUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)と言います。今月12日は国連が定めた国際UHCデー。UHCは持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの一つです。

インドシナ半島の中心部に位置する内陸国ラオスは、約7割が山岳地帯で地域が分断され、人口も600万人と少ないことなどから、ASEANの中でも最も開発が遅れている国の一つと言われています。ラオスで進むUHCの達成に向けた取り組みとJICAの協力を紹介します。

「2025年にUHC達成」の目標を支援

ビエンチャン市内の病院での母子保健の人材育成の取り組み

JICAはラオスで母子保健などの分野を中心に協力してきました。2016年以降、ラオス政府は保健分野の改革を重要課題に掲げ、2020年までの「基礎的保健医療サービスへのアクセス改善」と「受療時費用負担の軽減」、2025年までの「UHC達成」を国の目標にあげています。JICAはこれまでの協力を継続しながら、UHC達成に向けたラオスの取り組みを支援しています。

UHC達成のため、導入が検討されているのが、医師や歯科医、看護師などの免許制度です。ラオスは世界保健機関(WHO)の定義で「保健人材が極度に不足する国」となっているうえ、保健専門職の資格・免許の制度が整備されていません。JICAは支援を通じて、看護師の国家試験などの制度ができ、保健人材の質の向上が加速することを期待しています。

カルテの改善について話し合う病院スタッフ

保健医療の質の向上については、2016年から南部4県を対象に「保健医療サービスの質改善プロジェクト」も実施しています。母子保健などの分野で、医療の質の評価とカイゼンの手法を活用し、県・郡病院、保健センターで成果を上げ、その後の全国展開につなげる想定です。各病院や現場のスタッフと話し合いをしながら、医療の質の改善を促す仕組みづくり(チェックリストなど)とその導入を進めています。10月末までに、4つの県病院と7つの郡病院で導入されました。

その他、医療施設や機材の強化のため、拠点病院の整備も進めています。

保健省で政策・取り組み全般に助言

ラオス保健省の保健政策アドバイザーを務める小原専門家。女性産婦人科医賞の授賞式で

これらの取り組みをつなぎ、国として1つの方向に向かっていくため、JICAは2016年からラオス保健省に保健政策アドバイザーとして小原ひろみJICA専門家を派遣しています。UHC達成に向け、保健分野全般を対象に、制度改革や人材育成についての政策提言、技術支援、各援助団体との調整・情報共有などを行なっています。

「ラオスでも他の国でも、妊産婦が貧しいために早期の受診をためらい、やっと受診したときには重症化していて助からなかった例や、重症化のため医療費が高額になり、さらに貧困に陥ってしまうという例を数多く見てきました。貧しいから医療を受けられないということはあってはならないという強い思いが私の原点になっています」と小原専門家は話します。

小原専門家によると、ラオスはASEAN10カ国中で最も人口密度が低く、山岳地方やへき地では医療施設へのアクセスが困難。「村で保健ボランティアを育成し、村内を回り、医療へつなぐという、カンボジアやベトナムなどの成功例はこの国では難しいかもしれない、と最初に思いました」。

小原専門家は、JICAが協力を続けてきた母子保健の分野を重視するとともに、県・郡病院で助産師・看護師として活動する青年海外協力隊員の知見とネットワークを活用。現場の実情を踏まえ、隊員たちの意見も取り入れて、母子手帳の改善に向けた提言をまとめ、改定を後押ししました。

また、保健省と援助団体との調整を図って「健康保険戦略2017-2020」の策定を支援し、UHC達成のための「戦略と計画」文書のとりまとめにも貢献しました。

「人材育成、制度づくり支える責任感に感心」

小原専門家は、20年近く、ラオスやカンボジアなどの母子保健の改善・発展に努力し、WHOのガイドラインづくりにも関わってきました。その功績が認められ、2018年10月には、国際産婦人科学会連盟から女性産婦人科医賞を受けました。

母体死亡症例の検討会で発表する地元の医師。UHC実現でその肩にかかる期待は大きい

その小原専門家はラオスについて、こう話します。「この国のリーダー格の医師たちは、診察をしながら、後進の教育をし、医療の制度づくりにも関わっています。日本では考えられない責務を背負っていて、その責任感には感心させられます」。

JICAは、政策、制度、サービス、施設など、さまざまな角度からの支援を通じ、ラオスのUHC達成に向け、協力していきます。