「ブルーエコノミー」にアフリカが期待 海洋資源を生かし経済成長

2018年12月19日

地球に広がる海や川、湖などを守りながら、その恵みを経済成長に生かす。このような考え方から生まれた「ブルーエコノミー」というコンセプトに、アフリカで注目が集まっています。

約40カ国が海に面するアフリカでは、2016年の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)でブルーエコノミーの重要性が強調され、ケニアでも今年11月、「持続可能なブルーエコノミー国際会議」が開かれました。ブルーエコノミーにつながる取り組みとして、JICAはアフリカで水産分野での協力や港湾の整備などに力を入れています。

「漁業大国」モロッコに水産行政アドバイザー派遣 漁師に安定した生活を

モロッコの沿岸部の漁村

アフリカ北西部沿岸のモロッコ。水産資源に恵まれ、漁獲量と水産物輸出量は、アフリカ最大の規模を誇ります。水産物は国の総輸出額の約10%を占め、関連産業を含めて約66万人もの雇用を生んでいます。一方で、社会的、経済的に弱い立場にある零細な漁業者も少なくありません。

「漁業は、貧困層が働く最後の受け皿。魚は安くて栄養価も高いため、食料・栄養安全保障上も大事な役割を担います」

そう語るのは、「水産開発行政アドバイザー」として、2017年5月からモロッコの海洋漁業庁に派遣されているJICAの杉山俊士専門員です。海洋資源をうまく管理し、持続する水産業を実現するため、同庁による零細漁業振興や養殖開発などをサポートしています。また、これまでモロッコが日本から学んだ水産インフラ整備などの経験を生かして進めるサブサハラアフリカ諸国への南南協力も、後押ししています。

モロッコの漁村の村人から聞き取り調査をする杉山専門員

杉山専門員は赴任当初、零細漁業の実態を知るため同僚たちと数ヶ月かけ、沿岸部に点在する約25カ所の村を訪ねました。そこで漁師たちが訴えたのは「漁でケガをしたり、悪天候で漁に出られなかったりすると、すぐに生活に困る」「漁具倉庫で寝泊まりすることもある」といった過酷な状況でした。

杉山専門員は、天然資源に頼った漁村の不安定さを痛感するとともに、「水産支援は『魚』の管理に目がいきがちになるが、資源を扱う『人』にもっと着目した働きかけが必要」と言います。また漁村では女性や若者たちの働く意欲を強く感じ、観光業との連携など新たな可能性も見出すことができました。こうした「芽」を育て、漁村の生計活動の多様化と安定化を目指しています。

「東アフリカのゲートウェイ」の整備を支援 アフリカの成長へ

モンバサ港の新コンテナターミナル(手前)

JICAがこれまで取り組んできた港湾の整備も、ブルーエコノミーにつながる取り組みの一つです。アフリカ東海岸に位置し、「東アフリカのゲートウェイ」と呼ばれるケニアのモンバサ港では2016年3月、JICAの協力によって、貿易を支える新たなコンテナターミナルが完成しました。

モンバサ港は、ケニアだけでなく、ウガンダやルワンダ、南スーダンなど周辺の内陸国につながる「東アフリカ北部回廊」の物流拠点を担っています。しかし、2000年以降、食料や石油・ガスなどの貨物取扱量が急増した結果、旧コンテナターミナルでは来航した船がスムーズに貨物を下ろせず、後続の船が沖合で港が空くのを待つといった問題が起きていました。

新コンテナターミナルの完成で、同港が支障なくコンテナを取り扱える能力は127万TEU(注)にまで拡大。その結果、2017年の実際の取扱量は、2015年の108万TEUから119万TEUへと2年間で約11%伸びました。

(注)TEU(Twenty-foot Equivalent Unit)は大きさ20フィートのコンテナで換算したコンテナの個数を表す単位。

JICAケニア事務所の佐野景子所長は「内陸国へのアクセスが良いモンバサ港の発展は東アフリカ、ひいてはアフリカ全体の成長につながります。だからこそ、周辺環境の整備なども含めて包括的に開発していくことが重要」と話します。多くの地域や人を巻き込んだ一大プロジェクトは、さまざまな人たちの理解を地道に得ることが不可欠でした。同港の貨物量は2022年に年間200万TEUを超えると予想され、JICAはさらなるコンテナターミルの増設、内陸国とを結ぶ道の整備などを進めています。

【画像】

モンバサ港から東アフリカの内陸国に広がる北部回廊

ブルーエコノミー国際会議 世界170以上の国・機関が参加

発表する杉山専門員(左)

11月26日から3日間、ケニアで開かれた「持続可能なブルーエコノミー国際会議」(ケニア、日本、カナダ共催)には、日本の佐藤正久外務副大臣をはじめ、アジア、大洋州、中南米各国の閣僚や170以上の国や国際機関が出席し、世界から大きな注目を集めました。

テーマ別のパネル討論では、杉山専門員が「水産業は地場産品開発や観光との連携など、新たな雇用創出の可能性を秘めている」と説明。港湾開発分野では、古市正彦専門員が登壇し、「世界で海運貿易が増えるなか、港湾の整備に加え、港と各地の物流拠点を鉄道や道路でつないで一体的に機能させることが必要」と訴えました。

国際会議のサイドイベントで、JICAの展示ブースを訪れたケニアのケニヤッタ大統領にJICAの取り組みなどについて説明する二階達哉職員(中央)

来年、日本でアフリカの開発をテーマにしたTICAD7の開催を控えるなか、今回の国際会議を通じ、ブルーエコノミーへの大きな期待があらためて語られました。

ブルーエコノミーを取り巻く議論は、今後ますます加速しそうです。