学校教科書で注目高まる国際協力~新学習指導要領では“必修化”も

2018年12月28日

国際協力中学生・高校生エッセイコンテストの入選作品を通じて国際協力を深く考える「足元からできること」。2012年優秀賞、藤﨑由佳さん(当時中学3年生)の作品(学研教育みらい発行、中学3年生用の道徳教科書、2018年検定済)

学校の教科書や教材で、国際協力に関して取り上げられる機会が多くなっています。社会科の「世界と日本」を考える単元に加え、道徳の教科書で国際協力の意味を考えるような例もあります。2020年度より、小学校から順次、施行される新たな学習指導要領で、必修となる高校の地理総合で「国際理解と国際協力」が教えるべき内容として明記されるなか、最近の教科書に掲載された国際協力の事例やJICAの取り組みを紹介します。

道徳のなかで国際協力の在り方を考える

「そこには不思議なかまどがありました。土でつくられていて、まきを入れるたき口一つに対して、なべをかえる口が三つあります」

「『このかまどは日本人から教わったんだけど、とても便利なのよ』と、エンザロ村のお母さんたちは口ぐちにじまんします」

東京書籍発行の小学6年生用の道徳教科書(2017年検定済)の「国際理解、国際親善」の単元、「エンザロ村のかまど」の一節です。これは、1991年からケニアの地方部で、かまどの普及を通じて安全な水の確保に協力した岸田袈裟・元JICA専門家(故人)の活動です。

調理に使う炭が売られているケニアのマーケット(写真:久野真一/JICA)

多くの住民が不衛生な水を飲んで病気になっていたことや、育児をしながら非効率なかまどで調理していたことの説明があり、「岸田さんはどのような思いでかまどを考え出したのか」「困っている外国の人にどのような手助けをしたいか」という問いに続きます。

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エッセイコンテストの入賞事例でより深く

学研教育みらい発行の中学3年生用の道徳教科書(2018年検定済)には、JICAの「国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」の受賞作品が掲載されました。

エチオピアの難民キャンプの子どもたち(写真:今村健志朗/JICA)

難民キャンプに文房具を送る取り組みをしていた中学生の筆者は「あのときの私は送った先の子どもたちが喜んでくれたら、と考えたから活動に参加したのでしょう。ところが、それには大きな勘違いがあったことにようやく気付いたのです。それは、私たちが喜ぶことが必ずしも相手が喜ぶことではないということです」と振り返ります。

例えば、シャープペンシルは芯がなくなってしまうと使えず、そのうえ燃えないごみになってしまうことから、違う形の支援を考え始めたと書いています。教科書では、エッセイの全文に続き、国際協力などの取り組みを調べ、それらに取り組む意義や配慮すべき点などについて考えることを促しています。

JICAの「国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」中学生の部で審査員長を務めている教育評論家の尾木直樹さん

同コンテスト中学生の部の審査員長を務めている教育評論家の尾木直樹さんは「受賞作品が道徳の教科書に採用されるとは驚きです。同年代の中学生が実体験を通じて綴ったエッセイが、“考え、議論する道徳”の授業展開に使われるのなら、こんなに最適な教材はありません。身近な仲間の作品を使い、対話しながら国際協力について考え、生き方を模索する——なんて素晴らしい学びでしょうか!」と話しています。

次世代の学びを支える教科書作りに協力

活発な議論が交わされた2018年10月の「“世界とジブンをつなげる”国際理解セミナー」

2018年10月、JICAは、新学習指導要領に対応した「“世界とジブンをつなげる”国際理解セミナー」を開催しました。セミナーには教科書制作会社はじめ20社50人以上が出席。法整備の支援にかかわったJICA職員やインドの地下鉄建設にかかわった開発コンサルタント、途上国での活動からの学びを自身のキャリアに活かす協力隊経験者などが国際協力の現場の状況を伝えました。また、JICAの教師海外研修でザンビアに派遣された高校教諭が、現場での学びと、それをどのように授業に還元したかについて発表しました。

参加者からは「JICAの持つ開発途上国の最新情報や知見は、教材作りに有益だ」などの感想が寄せられています。

教科書会社への協力や、学校での開発教育/国際理解教育支援を進めるJICA広報室 地球ひろば推進課の齋藤克義課長は「今後もこうしたセミナーの開催や個別の問い合わせへの対応などを通じて、次世代を担う子どもたちの教科書作りに協力していきたい」と話しています。