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【TICAD7に向けて~私とアフリカ~:Vol.2】広がる「カイゼン」パートナーの輪 知見や経験を学び合うきっかけに:鈴木桃子JICA産業開発・公共政策部職員

2019年1月30日

「アフリカ・カイゼン・イニシアティブ」の署名式。左端が鈴木桃子職員。左から4人目がNEPADのマヤキ長官

2016年の夏、ケニア・ナイロビで開かれた第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)の開会式で、安倍晋三首相はこう宣言しました。

「日本はNEPAD(注1)と協力し、カイゼン(注2)をアフリカ中に広めます。導入した工場での生産性3割増を目指します」。

この9か月後、JICAとNEPADは「アフリカ・カイゼン・イニシアティブ」に関する合意文書を締結しました。アフリカが生産性や競争力の面で困難にぶつかるなか、2027年までの10年間で、カイゼンに取り組む国や機関のつながりを深め、効果的な普及を目指しています。

シリーズ【TICAD7に向けて~私とアフリカ~】の第2回は、このイニシアティブの締結に奔走したJICA産業開発・公共政策部の鈴木桃子職員の思いを通し、一丸となってカイゼンに取り組むアフリカの挑戦を取り上げます。

(注1)アフリカ各国の政治的・社会的・経済的統合を目指す政府間機構「アフリカ開発のための新パートナーシップ」。アフリカ各国が加盟。2002年設立。

(注2)高度成長期の日本で、ものづくりの品質や生産性を高めるために製造業の現場で培われた取り組み。「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」(5S)などが基本。

関連リンク:

カイゼン年次会合を開催 20か国で好事例などを共有

アフリカカイゼン年次会合の様子

昨年7月、南アフリカ共和国のダーバンで、第3回アフリカカイゼン年次会合が開かれました。JICAとNEPADが開催したこの会合には、アフリカを中心にアジア、中南米など20カ国の政策立案者や実務者、企業家、学者など約150人が参加しました。

会合では3日間にわたり、カイゼンの資格制度の運用を始めたエチオピア、製造工程の無駄を大幅に減らした各国企業など、多くの好事例や経験が発表され、参加者たちは熱心に聞き入っていました。

JICAは、新たに作成したカイゼンの実践や人材育成についてまとめた手引書「カイゼンハンドブック」を配布。会合後、参加者からは「自分の国に生かせる事例がたくさんあり、目を見張る会合だった」といったコメントが寄せられました。

年次会合ではカイゼンに取り組む現地企業も視察

第1回から中心メンバーとして運営に関わり、半年以上前から議題の考案や登壇者の選定などにあたってきた鈴木職員は「会合の度に、参加者の幅が広がってきた。『アフリカを変える』という一つの大きな意志のもと、各国が足並みをそろえ始めている」と語ります。

イニシアティブ締結の舞台裏 NEPAD長官に直談判

鈴木職員が産業開発・公共政策部に着任した2014年、カイゼンの取り組みは岐路に立たされていました。

JICAは2008年以降、アフリカの8カ国でカイゼンの普及に向けた技術協力を実施してきましたが、ほかのアフリカの国からも協力要請が相次いでおり、「50以上の国を抱えるアフリカで、どうスケールアップし、成果をあげていくのか。戦略的に考える必要がありました」と振り返ります。

試行錯誤するなかで、鈴木職員は「NEPADのマヤキ長官がカイゼンに関心をもっている」との情報を入手。NEPADがもつアフリカでのネットワークがカイゼン普及の鍵になると考え、長官の来日に合わせて、直談判する機会を得ました。

鈴木職員は、マヤキ長官を前に、入念に準備したスライド資料をもとに、アフリカでのカイゼンの実績をアピール。約10年にわたって技術協力を続けてきたエチオピアで計約52,000人を訓練し、カイゼンを導入した企業の生産性が平均約37%向上したことや、およそ9,000万ドルに値する利益を生み出したとなどを伝えると、マヤキ長官は「アフリカ全体に広めるため、ぜひ協力したい」と語ったと言います。

TICADⅥでの安倍首相のスピーチはこのわずか2か月後のことでした。

アフリカ各国で高まる変革の意識

ガーナ政府が新たに作成したカイゼンのパンフレット

JICAがカイゼンの技術協力を7か国で継続する一方で、NEPADと進める「アフリカ・カイゼン・イニシアティブ」は、技術協力で積み上げてきた国の知見や経験を生かすチャンスを広げています。

例えば年次会合をきっかけに、タンザニアやザンビアの行政関係者たちがエチオピアでのカイゼンの全国展開の経験を学ぶため、同国のカイゼン機構を訪問するなど、国同士が交流を始めています。同じくカイゼンの全国展開に力を入れているガーナでは昨年12月、企業のカイゼンニーズをさらに発掘するために、これまでのカイゼン成果を取りまとめたパンフレットを作成しました。またチュニジアは、年次会合での議論を踏まえ、カイゼンで成果を出している企業を表彰する制度を自国で作る準備を進めています。

鈴木職員は「アフリカでは今、カイゼンの事例や成果を共有し合うことによって、『自分たちもやってやる』という変革の意識が各国で芽生えています。日本の経験のみに頼った技術協力だけではなく、自分たちで未来を見据えながら成長していけるよう、私たちではコントロールできないくらいの大きな動きとなってほしい」と期待します。

TICAD7を目前に控えた6月、第4回アフリカカイゼン年次会合がチュニジアで開かれます。「TICADに向け、大きな弾みとなる会合にしたい」と鈴木職員は意気込みます。

鈴木 桃子(すずき・ももこ)
JICA産業開発・公共政策部職員。2002年国際協力事業団(旧JICA)入団。エチオピア事務所での勤務経験から、民間セクター開発に関心を持つ。総務部などを経て2014年から現職。JICA本部でカイゼンプロジェクトの総括を務める。埼玉県出身。

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