アフガニスタンで持続可能な農業を支える

2019年2月5日

かんがい事業を手がける農民たち 写真:ピースジャパン・メディカルサービス(PMS)

アフガニスタンは現在、史上最も深刻な干ばつの一つに見舞われています。人口の約8割が農民というアフガニスタンでは、農業の安定こそ国家の安定です。気候変動などにより干ばつの長期化も見込まれる状況のもと、JICAは、食糧の安全保障に向けた緊急対応に加え、農業が続けられる基盤を整備するため、かんがい事業などのハード面とともに稲作振興や政策立案の能力向上といったソフト面の双方から支援を続けています。

農業を続けていくことができれば、好んで戦争などしない

「干ばつで農業収入が減少し、家族を養うため反政府勢力に従軍する農民もいます。農業を続けていくことができれば、誰も戦争などしたくないのです」と語るのは、永田謙二JICA国際協力専門員です。

かんがい事業の整備現場

2001年のタリバン政権崩壊以降、国際社会はアフガニスタンでさまざまな復興支援を続けていますが、農民の暮らしは十分に改善されたとは言えません。

アフガニスタンの復興と再建には、持続可能な農業のための基盤整備が大きな鍵です。永田専門員は2014年から2017年にかけて、アフガニスタンの水・エネルギー省で水資源開発・管理アドバイザーを務めました。現在は、アフガニスタンの医療や農業の分野で活躍する国際NGOピースジャパン・メディカルサービス(PMS)とJICAが共同で行うかんがい事業を、アフガニスタン全土に普及させるための取り組みを進めています。

PMSは中村哲医師が代表を務める日本のNGOペシャワール会の現地NGOで、2003年からアフガニスタン東部で現地に適した石材や樹木を使った技術を活用し、かんがい事業を実施。農民たちが自ら工事を担い、かんがい設備を維持・管理できる体制は、帰還難民や社会復帰を果たした兵士の雇用拡大にもつながっています。

PMSのかんがい事業が実施された地域では、これまで16,000haを超える土地が農地としてよみがえりました。事業に関するアンケート調査で農民たちは、実施前と比較して「かんがい水量が増えて年2回の耕作が可能になり、収入が増えた」などと答えています。

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アフガニスタン東部にあるガンベリ砂漠(写真上/2005年以前)が、かんがい水路の完成で緑の大地に(写真下/2015 年) 写真:ピースジャパン・メディカルサービス(PMS)

ガンベリ砂漠に整備されたかんがい水路 写真:ピースジャパン・メディカルサービス(PMS)

日本の復興支援に期待

JICAは2010年からPMSのかんがい事業をサポートしています。治安情勢により現場での活動が制限されるアフガニスタンへの支援では、長年現地で活動し、現地の事情に通じているNGOとの連携はJICAにとって不可欠です。

スイスにある国際連合ジュネーブ事務局で開催されたアフガニスタン支援国の閣僚級会合の様子

2018年11月、スイス・ジュネーブで開催されたアフガニスタン支援国60ヵ国以上が参加した閣僚級会合で、アフガニスタンのムハンマド・フマユーン・カユミ財務大臣は、これまでアフガニスタンへの支援プロジェクトの大半は国外の援助機関主導で実施され、プロジェクト完了後は持続しないケースもあったと指摘。その教訓から「現地の技術を生かしたPMSの事例は非常に有意義」と述べました。

同会合に参加したJICAの山田順一理事は、「アフガニスタン政府のリーダーシップを支えながら、干ばつへの対応能力の強化に向け、長期的な視点で開発に取り組むことが重要」と語ります。

稲作技術の改良で生産性が倍増

JICAは、比較的干ばつ被害の少ない地域で稲作技術の改良に向けた取り組みも進めています。アフガニスタンでは、コメは小麦に次ぐ主要穀物です。2005年から長く復興開発支援に関わり、2014年から農業支援に携わる中原正孝JICA専門家は、「アフガニスタンは長期にわたる戦乱で、かんがい施設などの農業インフラが損壊、農業の専門家もおらず、農業技術の普及も遅れていました」と言います。

稲作振興支援プロジェクトが実施されている東部タハル県で、田植えをする農民

特に、稲作については行政の農家に対する支援体制が手付かずのなか、JICAは2007年から東部ナンガハル県で稲作農業改善プロジェクトを開始。その成果を踏まえ、2011年からは全国8県を対象にした稲作振興支援プロジェクトを通じ、普及員や研究員に稲作改良技術の研修を実施しました。

その結果、2014年から2017年にかけて、普及員が指導した農家の展示圃場総数約2,500ヶ所のコメの平均収量は約6.3㌧/ha(もみ)となり、それまでと比較してほぼ倍増しました。

アフガニスタンの将来を担うPEACE帰国生たち

今後は、種子生産や収穫後の加工技術の改善など、質の向上支援も目指します。アフガニスタンの開発を担う人材育成に向けたJICAの長期研修受入事業「未来への架け橋・中核人材育成プロジェクト(PEACE)」により、日本の大学で農業経済や稲作技術を学び、帰国した研修生たちとも協働しています。

また、中央政府に権限が集中するアフガニスタンでは、現場のニーズが政策に反映されてないことも少なくありません。そのため、JICAは、農業灌漑(かんがい)牧畜省と地方の農業事務所との間で現場の課題を共有して解決を目指す仕組みをつくり、効果的な政策につながるよう組織体制の強化プロジェクトを通じてサポートしています。