ナウルで初の気象観測始まる:大洋州で気象人材を育成

2019年2月28日

南太平洋に浮かぶ島国ナウルで、2018年12月22日、初めて気象観測が始まりました。この観測データが国連専門機関の世界気象機関(WMO)の通信網によって世界中に通報された瞬間、ナウル気象局内に大きな拍手が巻き起こりました。気象局のグレイメア・イカ職員は「これから自分たちがこの国の気象サービスを担っていくんだ」と決意を新たにします。

ナウル気象局に設置された雨量計を確認するグレイメア職員(左)

グレイメア職員は、JICAが大洋州の気象人材の育成に向けたプロジェクトで気象観測に関わる技術や知識を一から身につけたナウル気象局の初の職員です。

このプロジェクトにより、ナウルをはじめ、大洋州での気象業務が強化されることは、この地域のみならず、日本をはじめ地球規模での気象予測の精度が上がることにつながり、世界各国の気候変動対策や気象災害への備えなどに大きく役立つことが期待されます。

気象観測の空白地帯を解消する

JICAは、2014 年から4年間、フィジー気象局を拠点に大洋州10ヵ国の気象人材の育成に取り組みました。各国気象局は限られた予算やスタッフの中で気象観測業務を実施していますが、その技術や経験は十分とは言えません。なかでも、唯一、気象局がなかったナウルについて、「政府は、気候変動に向けた対応への意識が高まるなか気象業務を開始したいという意向はあったものの、知識も人材もなく、まったくのゼロからのスタートでした」と言うのは、プロジェクトチーフの黒岩宏司専門家です。約30年にわたり、フィジーをはじめ大洋州での気象観測・予報システムの整備や気象人材の育成に携わってきました。

【画像】

プロジェクトでは、フィジーを拠点に、キリバス、ツバル、バヌアツ、ナウル、トンガ、ニウエ、クック諸島、サモア、ソロモン諸島の10ヵ国で気象人材の育成を支援(緑色で囲まれた領域)

フィジー気象局で実施された観測方法の研修

ナウル政府から気象局職員として任命されたグレイメア職員は、フィジー気象局で実施された研修のほとんどに参加。世界基準の機材を用いた気圧、気温、湿度などの観測技術をはじめ、気象の解析・予測などなどあらゆる気象業務について学びました。

ナウルの細かい気象観測データが蓄積されることは、ナウルにとって災害や気候変動への備えとなるだけでなく、適切な農作物の作付け時期の予測など農業生産性の向上にもつながります。

また、気象現象には国境がありません。世界各国の気象予測は、世界中から集まる気象データの解析で成り立っています。そのため、正確な数値が多いほど予測の精度は高まります。大部分が海上となる大洋州は、これまで「気象観測の空白地帯」とされてきました。ナウルで気象観測が開始されるなど大洋州の気象業務が強化されることで、予報や警報の改善に加え、航空機や船舶のより安全な航行に向けた気象情報の提供が可能となるのです。

大洋州の気象観測・予報の拠点として重要な役割を担うフィジー

日本の支援で建設されたフィジー気象局

このプロジェクトでは、対象国の気象人材の育成や観測・予報業務の強化と同時に、拠点となるフィジー気象局が大洋州の人材育成活動をリードする体制を築くことも大きな目標でした。プロジェクトの後半では、各国のニーズに合わせた研修のほとんどをフィジー気象局の職員が担当。ナウルでの気象観測開始のための技術指導をしたのもフィジー気象局のサジバ・シャルマ職員です。「一国の気象局の立ち上げに貢献できたことは、フィジー気象局にとっても大きな自信になりました」と誇らしく語ります。サジバ職員は、JICA専門家と共にカリキュラムや教材の整備にも尽力しました。

フィジー気象局で気象衛星解析について指導する黒岩専門家(左)

4年間のプロジェクトを振り返り、黒岩専門家は、多くの先進国や国際機関が大洋州での気象プロジェクトを実施する際、フィジー気象局に協力を要請するなど、世界的にもフィジー気象局の評価は一層高まりつつあるとする一方で、「大洋州は地球規模での気象予測にとって大変重要な地域。世界的な観測網の拡大や観測技術の高度化に対応していくために、大洋州各国の気象人材の育成は年々その重要度を増しています」と述べます。

丁寧な人材の育成は日本ならではの支援

フィリピンの気象庁で解析手法を指導するJICA専門家(左)

JICAはこれまで、大洋州をはじめ、フィリピン、ミャンマー、ベトナム、モーリシャスなどで、気象レーダーの設置といったインフラ面と共に、気象予報官の育成などソフト面で支援を進めていきました。

JICAで気象分野の支援を担う赤津邦夫国際協力専門員は、「途上国のニーズや状況をきめ細かく調査し、最適な機材や技術を投与して日本の気象庁の協力を得ながら長期間にわたって現場の技術者に直接指導している点がJICAの支援の特徴です」と言います。

日本は世界でも有数の気象予測の技術を持っており、気象庁が運用する気象衛星ひまわりのデータも多くの途上国で重要な役割を果たすなど、日本の最新技術を生かした支援が広がっています。