東北の経験を途上国へ:インドネシア・スラウェシ島の復興計画を支援

2019年3月6日

東日本大震災からもうすぐ8年を迎えます。被災地は今も、地域産業やコミュニティーの再生、集団移転など、さまざまな復興課題と向き合っています。

そうしたなか、JICAは被災地の自治体と協力し、同じように地震や津波で大きな被害を受けた途上国と経験を分かち合って、ともに復興を目指す取り組みを進めています。今年1月には、インドネシア・スラウェシ島の復興のために、宮城県東松島市と岩手県釜石市などの復興経験や教訓を生かすプロジェクトが始まりました。

東松島市と釜石市の職員がインドネシアで伝える「住民主体の仕組みづくり」

復興セミナーで登壇する東松島市復興政策課の川口貴史・主任

JICAは2月11、12日、インドネシアのスラウェシ島・パル市とジャカルタで「復興セミナー」を開きました。現地の行政官に向け、住民主体の復興を重視してきた宮城県東松島市と岩手県釜石市の職員3人が登壇し、それぞれの取り組みを報告しました。

2018 年9月に発生したスラウェシ島地震では、死者・行方不明者2700人超、住宅の損壊約10万戸(2019年1月8日時点)という甚大な被害が出ました。これまで暮らしていた地域が津波や液状化に伴う地すべりによって住めなくなり、住民の集団移転が大きな課題の一つとなっています。一方、東松島市や釜石市も震災後、津波で浸水した地域の住民の移転という問題に直面し、そこから多くの教訓を得ました。

復興セミナーの様子(写真左から釜石市石井重成室長、金野尚史係長)

「移転先を選ぶ過程で重視したのは、住民のみなさんからの提案です」。セミナーでそう強調したのは、東松島市復興政策課の川口貴史・主任です。移転の計画段階で、住民の8割以上から同意を得ることができたといい、「住民主体の仕組みづくりが復興計画の合意形成に欠かせない」と訴えました。

一方、釜石市復興推進本部事務局の金野尚史係長は、当初住民との議論が不十分なまま復興を急いだため、合意形成が困難になる例があったことを共有。「まちづくりは『急がば回れ』で進めるほうがいい。丁寧な住民との対話が復興の鍵です」と語りました。同市では、医療・福祉、経済、建築など幅広い分野の専門家たちが復興方針の話し合いに加わり、市民と行政をつなぐ役割を担ったことも紹介しました。

セミナーに参加した中部スラウェシ州のサイクラ公共事業・空間計画局長は、「インドネシアと日本の間で考え方や文化などの違いはあるが、復興を着実に前進させるためには、自治体と住民の協議が非常に重要だと感じた」と感想を述べました。

スラウェシ島の復興を総合的に支援

被災直後に実施したスラウェシ島での調査の様子

JICAは今年1月から、スラウェシ島の復興計画の策定や実施に協力する「中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト」を開始しました。昨年の災害発生直後にインドネシア政府からの支援要請を受け、JICAは現地に調査団を派遣し、同国の国家開発計画庁と協議を重ねてきました。

今後、東日本大震災の復興で得られた知見や教訓を生かしながら、防災対策につながるインフラの強靭化、土地利用や建築の規制に加え、地域の産業復興、コミュニティー再生など、災害に強いまちづくりを総合的に進めていく方針です。

プロジェクトを担当するJICA社会基盤・平和構築部の泉貴広職員は、「復興は住民の暮らしを中心に据えるべきであり、そのためには議論の中心になりがちなインフラ整備などのハード面だけではなく、生業の回復やコミュニティーの再生などソフト面への配慮も重要。東松島市や釜石市と協力し、インドネシアの人たちの暮らしが一日も早く改善されるようサポートしていきたい」と話します。

スマトラ沖大地震の被災地と東松島市の「相互復興」 観光促進などの成果も 

バンダアチェ市のマグロ漁の技術指導の様子

JICAはこれまでも東日本大震災の経験を途上国と共有してきました。

2013年から東松島市と連携を始め、草の根技術協力によるプロジェクトとして、2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波で被害を受けたインドネシアのアチェ州バンダアチェ市の復興を支援してきました。

両市には漁業や観光業という共通の産業があり、市職員や住民が互いの現場を訪問。意見交換や現場体験などを続けた結果、バンダアチェ市では漁業体験を取り入れた観光施策、地域資源を生かして人を呼び込む動きが生まれたほか、共同農園の運営や地域産品市の開催などにもつながっています。

バンダアチェ市の共同農園

東松島市でも、バンダアチェ市を訪問した市民が帰国後にさまざまなイベントを開き、また、漁業技術を学びに来日した研修員との共同作業が地元の若手育成にも役立っています。復興政策課の川口主任は「同じような災害を経験し、復興のため地道な努力を続ける姿は互いに刺激を与え、自分たちを見直すきっかけにもなってくれています」と言います。

バンダアチェ市のアミヌラ・ウスマン市長も「東松島市で学んだ研修員たちによる牡蠣養殖やカゴ漁、農園活動などが、目に見える経済活動として軌道に乗り始めています。バンダアチェ市は高い失業率や貧困問題を抱えており、これらを解決するためにも、これからも東松島市と協力関係を維持していきたい」と期待しています。