【私の思い】日本の防災の力を世界へ:地球環境部 小林千晃職員

2019年3月28日

2011年、日本と赴任国ブラジルで起こった大災害が、防災への取り組みの原動力となりました。今年3月、ブラジルの防災政策の転換期に大きく貢献したとして、地球環境部の小林千晃職員がブラジルから国家市民防衛勲章を授与されました。「世界で頻発する自然災害に、日本がもつ防災の力を生かしたい」と力を込めます。

「親切さや勤勉さで両国の絆を促進」 ブラジルから国家市民防衛勲章

「親切さや勤勉さをもって、日本とブラジルの間の絆、国際協力の促進に尽力してくれました。小林さん、その献身をありがとうございます」。3月22日、駐日ブラジル大使館で、エドアルド・サボイア大使は小林職員に日本語でそう伝え、ブラジルの民間防衛に尽力した個人や組織に贈られる国家市民防衛勲章を授与しました。

勲章を受け取った小林職員は、「防災協力は人的、ビジネスリスクの低減につながり、両国の友好・経済関係をさらに強くしていくと確信しています。その一端に関わることができ、とても光栄」と、笑顔を見せました。

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勲章を首に下げ、スピーチする小林職員。奥はエドアルド・サボイア大使。

転機となったブラジルの土砂災害

土砂災害が起きた直後のリオデジャネイロ

2011年1月、ブラジル・リオデジャネイロで起きた土砂崩れの現場に、当時ブラジル事務所勤務だった小林職員は、言葉を失いました。避暑地として知られる緑豊かな古都の街並みは、変り果てていました。

雨期だったリオデジャネイロでは、3日間で平年の3、4か月分に相当する降水量を記録。山が崩れ、土石流となって街に押し寄せたのです。ブラジル政府の公表では900人以上が死亡、1万戸以上の家屋が全壊しました。

「都市に人口や経済基盤の集積が進むにつれ、住宅が災害リスクの潜む周辺部まで広がったため大きな被害が出ました。経済発展が進んだ中進国の新たな課題としてブラジル社会に大きな衝撃を与え、防災体制の近代化に舵を切る転機となった」と小林職員は振り返ります。

ブラジルの防災を総合的に支えるプロジェクト始動

土砂災害直後、ブラジルの国家災害リスク管理センター長官(当時)とブラジルの各地を回り、防災力強化の重要性を伝える小林職員(右)

ブラジル政府は災害直後、予防に重点を置いた大規模な防災事業への投資を始めたものの、防災に関する制度整備や技術、人材の育成は十分ではありませんでした。

そんな中、支援要請を受けた小林職員らJICAのメンバーが同国政府と協議を開始。2013年、土砂災害リスクの評価、リスクを考慮した都市計画の立案、災害警報の発令など、防災行政を根本から支援する「統合自然災害管理国家戦略強化プロジェクト」が始まりました。

当時、小林職員は強い使命感に駆られていました。土砂災害の2か月後、日本も東日本大震災に直面したからです。「自分の国と赴任国で同時に大きな災害が起き、自分は防災を担当。両国が協力して災害に強い国となるきっかけを作りたい」。

防災政策の近代化に寄り添う日本の協力 関係機関の連携がスムーズに

防災の関係省庁などによる会議の様子

関係省庁や災害リスクが高い自治体など複数の機関をまたぐ親密な連携が欠かせないなど、防災施策の転換は一筋縄ではいきませんでしたが、小林職員らは、各機関の考えや意見が共有されるよう心掛け、日本の知見の活用も、ブラジルの実情に沿うように提案しました。

その結果、ブラジル地域開発省の国家災害リスク管理センターのアルミン・ブラウン長官は「各機関が役割を理解して話し合えるようになりました。小林職員はJICAのプロフェッショナルとして、個人としてもブラジル政府の多くの関係者と密な議論を交わし、課題を見極め、我々にはない視点で提案をしてくれた」と話します。

ジャパンブランド”防災”による日本と中南米をつなぐ

気象レーダー導入にかかるブラジル国パラナ州政府との協議風景

2014年に帰国後、中南米部南米課に配属されると、今度は日本の民間企業の技術をブラジルの防災力強化に生かすプロジェクトの計画を立ち上げました。

一つは、都市部での雨量観測精度を高め、早期に警戒情報を出すため、日本無線株式会社と連携。人口170万人超のパラナ州クリチバ市に雨量を高精度で観測する気象レーダーを設置しました。同社の斉藤優社長は、「都市での豪雨は日本も共通する課題。技術に加え、人材育成も並行して進めるため、今後もさらにJICAと連携していきたい」と抱負を語ります。

「ブラジルのような『中進国』では、課題解決と投資促進を同時に考えることも重要。さまざまなパートナーと新たなプロジェクトにつなげるチャンスがある」と小林職員。JICAの協力による災害リスク評価で明らかになった土砂災害の危険地域に対し、日本企業の砂防ダム技術を導入するプロジェクトも進んでいます。

防災協力を通し、日本と世界の架け橋に

国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」では、自然災害に対する強靭性や適応能力の強化が掲げられています。開発途上国は特に自然災害の被害を受けやすく、2001年からの10年間で自然災害による世界全体の経済被害は約1.7兆ドルに上るとの報告もあります。

防災は持続的発展のために、無視できない課題となっています。小林職員は「日本の防災の力を、世界に生かす時です。私は高校と大学時代を南米で過ごしました。防災の協力を通して、南米への恩返しとともに、日本との関係強化に向けた架け橋として仕事ができれば、これ以上のやりがいはありません」と、力強く語ります。

自然災害にどう備え、そこに暮らす人たちの命や生活をどう守っていけるのか。小林職員は、自分にそう問いかけ続けています。

小林 千晃(こばやし ちあき)
JICA地球環境部職員。2005年JICA入構。青年海協力隊事務局、中南米部やブラジル事務所などを経て、2017年から現職。東京都出身。