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【TICAD 7に向けて~私とアフリカ~:Vol.5】 民間企業とのパートナーシップでアフリカの発展を促進:山本晃一郎JICA社会基盤・平和構築部職員

2019年5月15日

モザンビークのナミアロ変電所建設(無償資金協力)の現場視察時に意見交換をする山本職員(右)

今年8月に開かれる第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で、大きなテーマの一つとされる「民間企業との連携強化」。JICAは1月から2月にかけ、アフリカの課題解決につながるビジネスの提案を民間企業から募り、現地企業との提携を見据えたスタディツアー(アフリカ現地課題確認調査)をアフリカ7ヵ国で4回にわたって実施しました。

その一つ、「都市交通と経済回廊の物流促進」をテーマにしたツアーで、日本の民間企業7社とともにナイジェリアとモザンビークを訪問したのは、JICA社会基盤・平和構築部の山本晃一郎職員です。シリーズ「TICAD7に向けて〜私とアフリカ〜」第5回は、大手機械メーカーでの元営業マンの経験を生かし、アフリカと日本の民間企業をつなぐ新人職員の挑戦を紹介します。

民間連携と現地の連携のファシリテーターとして

ナイジェリアでは、最大都市のラゴスとその周辺に人口が集中し、新首都のアブジャでも人口が急増。インフラ整備が追いつかず、交通渋滞や事故、大気汚染などの問題に直面しています。

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ラゴス市内周辺で渋滞するトラックの列

今回スタディツアーに参加した7社は、音羽電機工業、フランクジャパン、中外油化学工業、辻プラスチック、田中衡機工業所、日本電気、日立造船。持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献可能性などの基準で選考をクリアした日本企業です。山本職員はこのツアーに合わせ、JICAの現地事務所とともに、現地の関係省庁や物流、建設業など約10社の民間企業や参加企業との面会の機会などを設定。約1週間にわたり、各社の担当者たちとラゴスとアブジャそれぞれで市内を実際に視察した後、関連省庁や企業を訪問して課題やニーズについて意見交換しました。

「JICAのパートナーとなる日本の民間企業と、途上国をつなぐファシリテーターが私の役割です。何が現地の課題であるか、アフリカのために何ができるのかを民間企業の皆さんと現場で一緒に考えました」と語る山本職員。モザンビークでも、開発拠点となっている北部のナカラ港から内陸国のマラウイやザンビアをつなぐナカラ回廊を視察し、物流促進を図る上での課題を探りました。

日本の技術でアフリカの課題解決

ナイジェリアの起業支援を行う団体で自社の製品についてプレゼンテーションする田中衡機工業所の田中社長(右端)

スタディツアーを通じ、参加企業から現地の課題解決につながるさまざまなビジネス展開が提案されました。

帰国後に開かれた課題発信セミナーでは、田中衡機工業所(新潟県)が、ナイジェリアで問題となっている荷物を積み過ぎたトラックによる事故や道路劣化について報告。通り過ぎるトラックの積載量をセンサーで計測できる同社のシステムを紹介しました。

このシステムについて、ナイジェリアの道路や公共事業を担当する政府機関では、「過積載車両は大きな社会問題となっており、取締りのためにも、私たちにとって、大変必要なシステムです」と、大きな期待が寄せられたといいます。

同社の田中康之社長は「今回のツアーに参加し、多くの収穫がありました。港の周りで建材を積んだ過積載車両、橋梁の上で慢性的に待機するトラックの列など、重量管理の必要性を感じました。さらに調査を進め、事業を本格化させたい」と意気込みます。

ほかの参加企業も、速乾性の高い道路補修剤を使った工事の短期化や、電子タグによる物流の追跡システム導入など、自社のさまざまな技術を生かし、現地の課題解決につながるビジネス展開の糸口を探りました。

人のつながり 使命感が長く続く関係に

モザンビークのナカラ港を視察するツアーの様子

JICAは2013年の第5回アフリカ開発会議(TICADV)以降、東アフリカの北部回廊、ナカラ回廊と西アフリカを3重要地点と位置付け、総合広域開発を支援しています。沿岸から内陸部への幹線道路や港湾を中心にマスタープランを策定し、インフラ整備、産業開発を進めています。

山本職員は「物流を促進し、経済回廊全体を格差の拡大を防ぎながら発展させるためには、地域のポテンシャルを生かした産業振興と沿岸部と内陸部をつなぐ交通インフラ整備の両方が不可欠です」と強調します。

また、今回のスタディツアーを通じ、民間連携への思いを新たにしたと振り返ります。「自らの製品やサービスを通じて、現地で困っている人たちの役に立ちたい、発展に貢献したい、という純粋な使命感は、私たちも民間企業も同じ。ご参加された方たちのアフリカへの熱い思いに、私自身も触発されました。 お互いの長所を生かし合い、アフリカの課題解決を目指していくことが重要だと改めて実感しました」。

アフリカと日本の民間企業をつなぐ山本職員の挑戦は、まだ始まったばかりです。


山本 晃一郎(やまもと こういちろう)
社会基盤・平和構築部職員。大手機械メーカーの営業職を経て、2018年1月JICA入構。アフリカ、アジアのインフラ整備や都市計画のプロジェクトを担当中。愛知県出身。


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