秋篠宮皇嗣同妃両殿下が青年海外協力隊帰国隊員とご接見

2019年8月22日

派遣国での約2年間にわたる活動を終え、帰国した青年海外協力隊員の代表7人が7月23日、赤坂御所で秋篠宮皇嗣同妃両殿下からご接見を賜りました。

両殿下は、今年2019年の御代替わり後、今上天皇皇后両陛下から引き継がれる形で、帰国した青年海外協力隊員代表とご接見され、代表が任国での活動を報告する貴重な機会をいただいております。

今回両殿下にお目にかかったのは、アジア、大洋州、中南米、アフリカの国々に派遣されていた7人です。ご接見に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で北岡伸一理事長と面談しました。

【画像】

前列左から興津絵美さん、山本佳子さん、北岡理事長、椎名麻衣さん、大藤壮輔さん、
後列左から岩永憲門さん、宮田祐介さん、鵜澤光佑さん、山本前青年海外協力隊事務局長

紛争の悲しみを乗り越え、再び立ち上がる足を作る

同僚に義足歩行の話をしているところ(真ん中が宮田さん)

宮田祐介さん(職種=福祉用具、29歳、群馬県出身)は東ティモールのディリ県にある国立リハビリテーションセンターに配属され、義肢装具士として義足や装具の製作、適合業務、同僚への技術指導や知識共有を行いました。また、地方巡回へも参加し2年間で500名以上の障害者の義肢装具の制作や修理などに携わりました。加えて、医療機関へのPR活動も行い、義肢装具の認知を現地の医療スタッフに広める活動をしました。

小学校を巡回し、そろばんの指導力向上に取り組む

授業中、生徒へそろばん指導しているところ(右側が興津さん)

興津絵美さん(職種=珠算、36歳、宮崎県出身)はトンガの教育訓練省の学習・指導課に属し、トンガタプ島のハハケ地区において、同地区全22校を巡回しながら、算数の授業で児童及び教諭への珠算指導を行いました。また、そろばん及び指導書の配布を行い、授業やワークショップ用の練習問題も自ら作成して使用しました。そろばんの地方・全国大会の企画・運営を指導し、珠算大会全11大会を開催。さらに指導した学校を全国大会で地区別優勝に導きました。

柔道の普及発展に貢献、障害のある子どもたちにも指導

屋外に畳を敷いての稽古もあった。初心者指導をしている様子

岩永憲門さん(職種=柔道、26歳、長崎県出身)はペルーのアレキパ市にある体育庁アレキパ支部に配属され、日本傳講道館柔道の指導及び普及活動を行いました。クラブや小学校、盲学校、特別支援学校での巡回指導を通じ、技術だけでなく生徒たちの人間形成、教育としての柔道指導にも取り組みました。帰国後には、日本に招聘した視覚障害柔道の生徒が国際大会への出場も果たしました。

住民と共に活性化させた水利組合 農作業や水路掃除を住民と共に

水利組合の定例会議で今後の活動予定について話し合ってるところ(左手前が鵜澤さん)

鵜澤光佑さん(職種=コミュニティ開発・27歳・千葉県)はマダガスカル東部のアロチャ・マングル県にある農業畜産局にて水利組合の機能向上に取り組みました。赴任時には有名無実化していた水利組合を啓発等による組合員一人ひとりの意識向上の結果、活動終了時には定例会議、総会、工事等が自発的に実施されるようになりました。機能を失っていた組合活動の活性化は、現地の生活や文化に適応し、関係者との良い関係を構築して活動したからこその成果でした。

牛たちの病気を減らし、生産効率も向上

仕事の合間にティータイム 同僚達とのコミュニケーションは活動に不可欠!(左手前が大藤さん)

大藤壮輔さん(職種=獣医・衛生、33歳、宮城県出身)はベトナムのホーチミン市クチ郡にあるホーチミン市公営牧場にて、乳用牛や肉用牛の疾病対策、生産性向上などに取り組みました。初めは試行錯誤の繰り返しでしたが、現地の獣医師たちと話し合いを重ね、徐々に信頼関係を築き活動を進めていきました。任期後半には子牛の疾病罹患率や死亡率の低下、肥育牛の肥育効率の上昇が見られ、現地若手獣医師たちも疾病予防等に対して自主的に取り組むようになりました。

各コミュニティでフードデモンストレーションを開催

木からぶら下がって体重測定するガーナスタイルで乳幼児健診(左側が山本さん)

山本佳子さん(職種=保健師、32歳、愛媛県出身)はガーナのアッパーウェスト州ロウラ郡にあるロウラ郡保健局にて母子保健指標改善のため、栄養改善や若年妊婦予防の活動をしました。妊婦貧血や子供の低栄養の改善のため、女性だけでなく地域の酋長など主要な人材も巻き込み、調理実習形式のデモンストレーションを実施しました。また、各コミュニティで栄養不良児の早期発見、その後の経過観察のための家庭訪問事業を現地栄養士と共に行いました。

羊毛フェルト商品を生産する女性グループの品質向上に貢献

フェルト商品サンプル製作作業の様子(右側が椎名さん)

椎名麻衣さん(職種=コミュニティ開発、31歳、千葉県出身)は、キルギスのイシククリ州カラコル市のNGO一村一品組合に配属され、特産品の商品開発、組織強化を目的にNGOスタッフ及び組合メンバーに対し品質管理指導に取り組みました。主に特産品の一つである羊毛フェルト商品のサイズ不統一という問題に対し、生産グループの女性たちに分かりやすい設計図作成を試み、トレーニング時に普及、定着させるよう実施し、商品品質の統一化に貢献しました。

ご接見では、それぞれの任地での課題や、関係者と協力し取り組んだ過程、そして、その成果について、両殿下にご報告させていただきました。また、帰国後の仕事や進学についてお話が広がり、2年間の協力隊活動が現在につながっていることもお伝えしました。両殿下は熱心に温かく耳を傾けてくださり、参加者は終始和やかな雰囲気の中でご報告を終えることができました。