天皇皇后両陛下が帰国した青年海外協力隊員、日系社会青年ボランティアとご懇談

2019年10月18日

派遣国での約2年間にわたる活動を終え、帰国した青年海外協力隊員と日系社会青年ボランティアの代表が9月10日、赤坂御所で天皇皇后両陛下とご懇談の栄を賜りました。

1965年に青年海外協力隊が発足した当初から今日に至るまで続いている帰国隊員のご懇談ですが、令和元年となった本年も帰国隊員の代表が両陛下へ任国での活動をご報告致しました。

今回天皇皇后両陛下にお目にかかったのはアジア、大洋州、中南米、アフリカの国々に派遣されていた青年海外協力隊員7人と日系社会青年ボランティア1人です。ご懇談に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で北岡伸一理事長と面談しました。

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前列左から 曾根さん、山本さん、北岡理事長、内田さん、馬場さん、
後列左から 松本さん、竹内さん、高野さん、堀井さん、小林青年海外協力隊事務局長

リハビリ知識・技術の向上と、透析リハビリの継続へ

患者へのリハビリ提供と同僚への指導(左が竹内さん)

竹内寛貴さん(職種=理学療法士、32歳、熊本県出身)は、モンゴルのウランバートルにある総合病院、シャスティン・国立第3中央病院リハビリテーション科に配属されました。活動先は、脳血管疾患・心疾患・整形疾患の中核病院として、リハビリと患者家族への指導を積極的に取り組んでおり、竹内隊員はこれらの疾患に加え、透析患者へのリハビリを行うなど、さまざまな患者のリハビリを同僚と共に実施しました。透析リハビリでは、同僚に現地指導を行うことで、帰国後も継続して実施される病院運営体制を構築する成果を残しました。

学生が自主的に勉強できる工夫や仕組みを伝える

3年生の文法の授業の様子(左が馬場さん)

馬場葉子さん(職種=日本語教育、40歳、神奈川県出身)は、インドネシアのリアウ州にある国立リアウ大学日本語教育学科に配属され、文法や会話、ビジネス日本語等の授業を担当しました。課外では、日本語能力試験の勉強会を開始し、自らが帰任した後も継続されるように、計画表や進捗表等を用いて学生が自主的に勉強を進められる仕組みを伝えました。また、国際交流基金の専門家を招いて、学科のカリキュラム改善のためワークショップを企画実施しました。

スリランカの球児たちに野球を通して心身の成長を育む

初めて野球をする子どもに教えている様子(左が高野さん)

高野光一さん(職種=野球、25歳、東京都出身)は、スリランカの硬式・軟式野球協会に配属され、南部のゴール県を拠点に野球の指導と普及を行ないました。同県にある学校6校を巡回して、国内での大会で勝つことを目標に現地コーチと共に練習に取り組みました。また技術面のみならず子どもたちの心の成長も育みました。その他にも、2019年1月には読売巨人軍との連携で野球教室をスリランカ国内3カ所で実施しました。

世界遺産における生態調査の開始とデータベースの構築

活動の最終日に配属先の同僚と(手前の列の左から三番目が堀井さん)

堀井大輔さん(職種=生態調査、30歳、滋賀県出身)は、パラオのコロール州政府の保全・法執行部にて、世界遺産ロックアイランドの生態系の調査を配属先同僚と連携して開始し、調査結果のデータベースを構築しました。鳥類の調査では635枚の調査票を、ウミガメ調査では1,028枚の調査票を収集したほか、植物調査や外来種調査も行いました。また、同僚にPCスキル等を指導する講座を開講し、自身の帰国後を見据えて対応しました。

ホンジュラス産コーヒーを使った商品開発を指導 環境教育なども実施

地元の小中学生にコーヒーゼリーの作り方を指導(写真中央が内田さん)

内田有紀さん(職種=食品加工、34歳、茨城県出身)は、ホンジュラスのラ・パス県マルカラ市にあるラオス協同組合にて、女性や若者を中心としたコーヒー生産者を対象に、コーヒーを使用した商品開発に関する講習会を実施し、オリジナル商品を発表しました。受講者の中からはカフェを開店し、コーヒーゼリーを定番商品として販売する者も出ました。また、小中学生や農業専攻の学生に対する食品講習会、市の環境整備を目指したゴミ拾い活動も実施しました。

講習会を開催し、看護の質の向上を目指す

集中治療室の看護師に向け、改定した看護経過表についての勉強会を開催(写真中央が山本さん)

山本貴子さん(職種=看護師、35歳、奈良県出身)は、ボリビアのポトシ県ポトシ市、市立ダニエル・ブラカモンテ病院で看護師(集中治療室派遣)として活動しました。病棟における問題点を分析、不足した医療物品の調査を行い、医療環境の改善に貢献しました。また、看護師の知識や技術の向上を目指し講習会を計17回実施、看護教育委員会設置の提案も行いました。その結果、現地スタッフの技術が改善すると共に、看護の質の向上につながりました。

ウガンダで主に整備するのはボロボロになった日本の中古車

2年生の生徒と油まみれになりながらの実習(中央の黒い服が松本さん)

松本英徳(ひでのり)さん(職種=自動車整備、37歳、茨城県出身)は、ウガンダのジンジャ県にある職業訓練校の自動車科にて、自動車整備士の育成に寄与する活動に取り組みました。同校にて電気系統(コンピューターを使った修理や点検等)に関する座学や実習の授業を実施し、同僚と共に概念や実技について指導を行いました。また、自身の専門性をもとに当国初の単車整備教材を完成させ、現地教員がより実践的な実習授業を実施できる体制を整備しました。

日系人高齢者への福祉活動の支援 日系社会の若い世代とともに

日系高齢者のお楽しみ会で、介護予防体操を行っているところ(中央手前が曾根さん)

曾根友美さん(職種ソーシャルワーカー・38歳・東京都出身)はアルゼンチンのブエノスアイレスにある在亜日系団体連合会にて、日系人高齢者の福祉向上のため、各地を巡回し介護予防体操やレクリエーションを行いました。また日系社会の福祉関係者と協調し、福祉人材育成に努め、曾根隊員の巡回は各地の高齢者の楽しみとなり、日系社会の福祉活動への刺激となりました。巡回により得られたデータは、貴重な情報として配属先や大使館領事部とも共有されました。

ご懇談後、参加者は、「和やかな雰囲気のもと両陛下が一人一人の報告を熱心に聞いてくださり大変嬉しく思った」、「帰国後の進路についてもご関心を寄せてくださり、大きな励みになった」などと感想を述べました。