「一人ひとりができることをしていこう」:池上彰さんがSDGsをわかりやすく解説

2020年3月10日

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JICA地球ひろばで小学生にSDGsを講義するジャーナリストの池上彰さん

「SDGsをひと言で表すと、『対立している国もあるけど、これだけは一緒に取り組もうと決めた17個の目標』なんです」

わかりやすい解説で知られるジャーナリストの池上彰さんは小学生たちにこう語ります。JICA地球ひろばで開催された「SDGs特別講義」で、池上さんは子どもたちの目線、子どもたちの言葉でSDGsについて話しました。

子どもたちが驚いた「タピオカのレジ袋」

池上さんと子どもたちは、「世界のごみの重さ」の展示コーナーで、ごみ袋を測りの上に載せます。ここでは、各国が出している1週間分のごみの量がわかります。

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「世界のごみの重さ」の展示コーナーでは各国のごみの量を手で持って比較体験できます

「日本のごみ袋は、一体どれだろう?」と池上さんが言うと、子どもたちは数人がかりでごみ袋を持ち上げ、測りの上へと載せていきます。

「ごみの量は、豊かな国ほど多くなっていくんだ。たとえば『食品ロス』って聞いたことがあるかな? 賞味期限がぎりぎりのお弁当などは、食べようと思えば食べられるにも関わらず、ぽいぽい捨てられてしまうでしょう。でも、それらをうまく世界中の人が食べられるようにできれば、ごみ問題だけではなく、飢餓問題も解決することができるんだよ」

次に足を運んだのは、世界で使われている「環境に優しいレジ袋」の展示コーナーです。地球温暖化や海洋流出への対策として、プラスチックごみの総量を減らすことが各国に求められています。なかでも、子どもたちが「えー」と声を出して驚いたのが、微生物の働きによって、水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」によるレジ袋です。

各国のレジ袋、エコバッグを展示したコーナー。タピオカの原料であるキャッサバを原料としたレジ袋には子どもたちも興味津々

「このレジ袋には、英語で「I am not plastic(アイ・アム・ノット・プラスチック=私はプラスチックではありません)」と書かれているね。実は、タピオカと同じ原料でできたレジ袋なんだ。タピオカの原料は何かわかるかな? そう、キャッサバだね。プラスチックごみの代表格として、ほかにもストローがある。そこで、リサイクル可能な紙や木材によるストローの開発が進められているんだよ」

SDGsの目標は一つひとつが絡み合っている

子どもたちは国名の書かれたパネルをはめ込むと、その国のSDGsの達成状況が表示される展示物にもチャレンジ。次々に各国のパネルをはめ込み、日本の達成状況が表示されると、まじまじと画面を見つめました。

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国名を選択すると、各国のSDGs達成度がパネル表示される展示。緑=目標に達している、黄=努力を要する、オレンジ=より一層の努力を要する、赤=達成までほど遠い、グレー=データ不足により測定不能、で色表示される
※出展:ベルテルスマン財団・持続可能な開発ソリューションネットワーク
※2018年時点の達成状況

「日本が達成できているのは教育だけだね。貧困削減が達成できていないのはどういうことかと言うと、日本では貧困状態で困っている子どもがたくさんいるんだ。でも、それは食べるものがない『絶対的な貧困』ではなくて、栄養バランスの取れた食事ができない『相対的な貧困』なんだ。君たちが普段学校で食べている給食は栄養のことを考えて献立がつくられている。それって、実はすごく恵まれたことなんだ」

池上さんは、最後に、水問題が子どもの教育や衛生環境に関連していることについても触れました。

バケツ1杯の水の重さを体験する子どもたち

「みんなは、家で水道の蛇口をひねると水が出てくるのが当たり前だと思っているよね。でも、そうじゃない国もたくさんあるんだ。水道もなければ、井戸さえもない地域だって存在する。そうすると、1日に何キロメートルも歩いて、川や湧き水が出ているところまで水を汲みに行き、重いバケツを持って何往復もすることになる。それじゃあ、学校に行く時間なんてなくなってしまうよね。水がなければ、トイレの排泄物も流せない。こんなふうにSDGsは、一つひとつがそのほかの目標と絡み合っているんだ。そして、JICAはそういう国や地域の人々が、安心して暮らしていけるための支援活動をしているんだよ」

講義の最後、子どもたちが「こんなにすごい目標、本当に達成できるのかな」とつぶやくのを見て、「そうだね。でも、目標を掲げたことが大きな一歩なんだよ」と伝えた池上さん。すると、子どもたちは「すごいことはできないけど、ごみの分別や、賞味期限の近い食べものから食べるようにしてみます」と、自分たちでもできる身近なことを発見。一人ひとりができることをしていけば、未来は今より豊かなものになっていくことを学びました。

SDGs特別講座や各目標についてわかりやすく解説した『世界がぐっと近くなる SDGsとボクらをつなぐ本』(池上彰監修、学研プラス刊)

今回の池上さんの「SDGs特別講義」の様子は、2月に発売された『世界がぐっと近くなる SDGsとボクらをつなぐ本』に掲載されています。

JICA地球ひろばでは、SDGsの理解や促進に向けた展示をしています。新型コロナウィルス感染症の感染予防のため、当面の間、3月31日まで臨時休館となっております。ご来館の際は、ホームページ等で最新の状況をご確認の上、お越しください。