特集

ASEAN共同体発足から1年−「質の高い成長」の実現を目指して

【画像】2015年12月、10カ国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は、域内の関係深化に向けて大きく動き出しました。「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の3本柱から成る「ASEAN共同体」が発足したのです。

域内人口は欧州連合(EU)を上回る約6億3000万人、GDPはアジアで中国、日本に次ぐ第三位の2兆4320億米ドル。巨大市場としても世界を牽引する役割が期待されています。

一方で、陸・海・空における域内の連結性(物や人の移動の円滑化)、貿易や物流など制度面の共通化、災害発生時や人材育成などにおいて相互に助け合う体制づくりといった、加盟国全体が一つの共同体として機能していくための課題は、まだまだ尽きません。

JICAは、ASEANの連結性実現中期計画である「ASEAN連結性マスタープラン」を全面的に支援し、日本の知見と技術を生かした協力を展開してきました。そして今後も、ASEAN共同体を深化させるための工程表である「ASEAN2025」に寄与する協力として、「質の高い成長」(注1)を目指した支援は続きます。

(注1)質の高い成長とは:持続可能な開発目標(SDGs)が達成しようとしている目標の一つ。
成長の果実が社会全体に行きわたり誰一人取り残さない「包摂性」、環境や社会への配慮、地球温暖化対策の観点を含み、世代を超えた「持続可能性」、経済危機や自然災害等さまざまなショックへの耐性に富んだ「強靭性」の3つを兼ね備えた成長を重視するもの。

「道」が地域をつなぎ、成長力を生み出す

港、道路、橋が一本の道となり、各国主要都市をつないでいる「回廊」は、アクセス条件の悪い地域や内陸部にも産業開発の可能性を見出します。

ASEAN域内の陸の連結を担うのは、ベトナムのダナンからミャンマーのモーラミャインにまで伸びる「東西経済回廊」と、ホーチミン、プノンペン、バンコク、ダウェイという4ヵ国のメコン経済の中心地をつなぐ「南部経済回廊」です。

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JICAは、道路の改修や、港湾・トンネルの整備を各地で支援。さらには、両回廊のミッシングリンクであった大河メコンに、二つの橋を建設する支援を実施しました。人と物の流れの効率化を実現し、沿線地域の経済成長に大きく貢献しています。

ラオス:東西経済回廊に架かる「第2メコン橋」

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写真提供:久野真一/JICA

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笑顔で橋について語るラオス側の入国管理官。写真提供:久野真一/JICA

2006年12月の開通から10年。タイとラオスを結ぶ「第2メコン橋」は、東西経済回廊の要衝として、物流のみならず、二国間の国境を越えた教育や雇用機会の促進など、地域住民の生活水準向上にもつながっています。1日あたりの交通量は、2009年の256台から2015年には1,947台と約8倍に。ラオス国内初の経済特区に日本企業が続々と進出する契機にもなりました。

カンボジア:南部経済回廊に架かる「つばさ橋」

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写真提供:久野真一/JICA

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開通を喜ぶ近隣住民ら

カンボジアからベトナム最大の都市ホーチミンにつながる橋として、2015年4月に開通しました。これまで、フェリーに乗船するにも最大7、8時間の待ち時間を要していましたが、5分ほどで渡河が可能に。タイの首都バンコクまで陸路でつながったことから、国際物流を支える大動脈としても持続的に機能することが期待されています。

連結性と発展を支える仕組みづくり

国や地域づくりの基盤を担うインフラには、適切な維持・管理が必要です。また、支える仕組みや制度があってこそ、持続的かつ効果的な運用が可能となります。JICAは、ASEAN域内に留まらない国際的な物流を円滑にするための通関制度支援や、旅客サービスの向上など、各国のニーズと発展レベルに応じた協力で、縁の下からもASEANの成長を後押しします。

ベトナム:貿易円滑化に貢献!日本の最先端技術

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通関関連手続きを行う税関職員。新システムによりビジネス環境も改善(ベトナム)

飛躍的に輸出入件数が増大しているベトナム。JICAは、ベトナム向けに日本の通関ITシステムを応用し、物流の円滑化を図るという取り組みを支援しています。現在、約66,000の輸出入者がその恩恵を受けています。さらには、ミャンマーへの導入も支援しています。

ミャンマー:環状鉄道に快適な運行と旅客サービスを

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ヤンゴン環状線を走行する日本の中古車両

車両や線路の不十分な整備・維持管理に起因する揺れなどが課題となっていたヤンゴン市内を走る環状鉄道に、JICAは新型車両導入や、線路の改修工事を支援しています。さらには、その持続的な保守・運用と旅客サービス向上を図るため、ミャンマー国鉄職員の人材育成支援も実施中です。段階的に鉄道運行とサービスを改善していくことで、「質の高い成長」を目指します。

「知」を共有し合い、より強固につながる

ASEAN加盟各国が、それぞれの知見と経験を伝え合い、学び合う取り組みも活発です。JICAはその体制づくりを支援するとともに、ASEANと日本間のネットワーク構築も支援。地理的にも経済的にも相互依存が強い日本からの教訓も生かすことで、さらなる能力向上が期待されています。

シンガポール:発展の鍵は「人材育成」、その術をASEAN各国に

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10年以上にわたり実施されている「海上安全管理」研修

1998年に「援助卒業国」となったシンガポール。現在はJICAとの連携のもと、ASEAN域内に自らの経験を共有しています。特に人材育成には力を入れており、その象徴的なプログラムが「21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」。海上安全、税関、国境管理など、他のASEAN加盟各国のニーズに合わせた幅広い分野の研修を実施しています。

タイ:共同体としての災害医療能力向上のために

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国際緊急援助隊医療チームの活動の様子(2013年 フィリピン)

災害が発生した際に、ASEAN域内で迅速に被災地医療を行うための取り組みが進んでいます。JICAは災害多発国である日本の経験および国外での豊富な災害医療経験を持つ国際緊急援助隊の知見を活用し、タイをハブとして、ASEANにおける災害医療分野の地域連携体制の構築を支援しています。