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援助効果から開発効果へのパラダイムシフトを目指して

−韓国・釜山で援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム開催−

2011年12月09日

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中国やインドなど、新興国のドナーも参加し、南南協力・三角協力の推進が合意された

先進国、新興国、途上国およびNGO等の代表が一堂に会し、効果的な開発援助のあり方などについて話し合う閣僚級の国際会合「第4回 援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム(釜山ハイレベル・フォーラム)」が11月29日から12月1日にかけて、韓国・釜山で開催された。第2回と第3回のハイレベル・フォーラムで採択されたパリ宣言(2005年)とアクラ行動計画(2008年)の総括のほか、南南協力・三角協力(注1)、官民連携、気候変動等、開発効果のさらなる向上を目指し、新たな課題について議論された。また、今回の成果文書として、新興国も合意した「釜山宣言」(注2)が採択された。

本会合には156ヵ国の政府代表団と約40の国際機関の首脳らを含む約3,500人が参加。JICAからは渡邉正人理事、細野昭雄JICA研究所長、北野尚宏東・中央アジア部長らが出席し、南南協力・三角協力や中国、経済開発協力機構(OECD)・開発援助委員会(DAC)との対話などのセッションに登壇した。

注目の集まった首脳級の開会式演説

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「韓国の発展を支えたのは教育の力であり、教育が発展の鍵」と新興ドナーの立場から教育の重要性を訴える李大統領

開会式には会合の議長国である韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長、OECDのアンヘル・グリア事務総長、クリントン米国務長官らが出席。李大統領は基調演説で、韓国の戦後復興と経済発展、援助国としての役割について述べ、国際社会へのさらなる貢献のため政府開発援助(ODA)を増額することを表明した。

グリア事務総長は、開発援助の効率化については残された課題が多いと認識しており、引き続き国際社会が共同歩調を取りながら行動していく必要があると力説。潘事務総長は、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けたさらなる協力の必要性を訴えた。また、援助は平和と安全のための投資であることや、被援助国が自国の発展のために果たすべき役割と新興国の責任、民間セクターの持つダイナミズムにも言及した。

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開発のアプローチを「援助」から「投資」という考え方に転換する必要があると主張したクリントン国務長官

開会式で特に注目を集めたのは、米国の国務長官として初めて、援助効果にかかるハイレベル・フォーラムに出席したクリントン国務長官。米国は、世界のトップドナーであり、国際的にその動向が注目されていた。クリントン国務長官は、今後、伝統的ドナーが新興ドナーや民間セクターと協働していくことが重要と指摘。具体的な優良事例として、JICAが長年、ブラジルで技術協力に取り組んできた「日伯セラード農業開発協力事業」の実績を基に、日本とブラジルによって開始されたモザンビークへの農業開発に関する三角協力を評価した。

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アジアの開発経験をアフリカの経済成長の議論に取り込むべきと指摘したカガメ大統領

途上国側の代表として登壇したルワンダのポール・カガメ大統領は、カントリーシステム(途上国の政策・制度)の強化と活用をドナーに求めるとともに、「効果的な援助には信頼と責任の共有が必要だ」と述べた。また、援助効果の議論が進む一方で、アフリカにおける開発目標は十分に達成されているとはいえないと述べた。

新たな脚光を浴びる南南協力・三角協力

今回の釜山ハイレベル・フォーラムでは、これまでの先進国(北)から途上国(南)への「援助効果」の議論の枠を超え、より幅広い概念として「開発効果」の観点を取り入れた点が注目される。その背景として、中国、ブラジル、インド等の新興国による南南協力や民間セクター、CSO(市民社会組織)の開発へのかかわりが増加していることが挙げられる。JICAはこのような状況を踏まえ、南南協力・三角協力のさらなる展開を視野にサイドイベントを開催。さらに、テーマ別セッションにパネリストとして登壇するなど、南南協力・三角協力のパイオニアとしての存在感をアピールした。

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南南協力は、実践レベルでの経験を共有する努力が必要と主張する細野所長

南南協力・三角協力をテーマにしたセッションでは、マルコ・ファラーニ・ブラジル外務省国際協力庁長官、ケニアの「理数科教育強化計画プロジェクト(SMASE)」担当のエノス・オヤヤ同国教育省視学官局長らと共に、細野昭雄JICA研究所長がパネリストとして登壇。細野所長は、JICAが中心となってブラジル、ケニアと実施している三角協力について紹介し、途上国側のオーナーシップ、自助努力の促進に大きく貢献してきたセンター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence: CoE)(注3)の重要性を指摘した。


日本(外務省・JICA)が、国連開発計画(UNDP)の協力を得て主催した南南協力・三角協力のサイドイベントには、約150人の聴衆が参集。中野譲外務大臣政務官のあいさつに始まり、渡邉理事とチョウ・イーピンUNDP南南協力特別ユニット部長による共同議長の下、ブラジル(ファラーニ長官)、インドネシア(ウィスマナ・スルヤブラータ国家開発企画庁次官)、ケニア(オヤヤ局長)、ソロモン(ロティ・イェツ国家災害管理局長)、中国(王道好商務部副処長)、ドイツ(ロナルド・メイヤー経済協力開発省二国間協力効果課長)の各代表がパネリストとして登壇。南南協力・三角協力の事例と教訓が共有されたほか、途上国の能力開発や、国境をまたぐ開発課題と地域内の共通課題への対応手段としての南南協力の重要性が強調されるなど、活発な議論が交わされた。

釜山宣言の合意

釜山ハイレベル・フォーラムは、成果文書「釜山宣言」の合意で締めくくられた。閉会式で、成果文書の交渉をリードしてきた、DAC援助効果作業部会のアブデル・マレク・タラート共同議長は、新興国や民間セクター、CSO等の多様な開発アクターが、同じテーブルについて共通の目標を共有ししていくプロセスは困難な道のりであったとしつつも、最終的に合意に至ったことを評価した。また、今後は、成果文書で合意されたことをいかに実行していくかが重要と付け加えた。

JICAはこれまでに欧米の援助機関や国際機関との連携を強化するとともに、韓国の援助機関(KOICA、EDCF)との協力関係の構築、タイの援助機関(TICA、NEDA)や、中国のODAを担う中国商務部との情報交換にも努めてきた。今後も協力関係のより一層の強化を図るとともに、OECD・DACにおける課題について引き続きフォローし、南南協力・三角協力による効果的な支援によって国際社会に貢献していく。


(注1) 南南協力・三角協力の定義は定まっていないが、JICAでは次のように定義している。南南協力とは、ある分野において開発の進んだ開発途上国が、別の途上国の開発を支援する国際協力の形態。三角協力は、先進国や国際機関と、支援を行う途上国が連携して、支援を受ける途上国の発展・開発のための共通の案件目標を設定し実施すること。

(注2) 釜山宣言では、パリ宣言、アクラ行動計画でうたわれている「オーナーシップの尊重」「援助の透明性と相互説明責任」「成果重視」などに加え、「幅広いパートナーシップ」をべースに「南南協力・三角協力」「民間セクターの役割」「気候変動基金関係機関との協力」など、幅広い協力の重要性について確認された。そのほか、「ジェンダー平等化の推進」「脆(ぜい)弱国における援助効果向上」「防災の対応強化」などの多様な課題が盛り込まれた。また、釜山後のモニタリング体制として、「効果的開発協力のためのグローバル・パートナーシップ」を設置し、2012年にはモニタリング指標等を策定することが決定された。

(注3) CoEとは、「成功に導くための中核的な、卓越した知恵の集合センター」を意味する。