時代が求めるグローバル人材の模範に

−青年海外協力隊経験者が野田総理に活動を報告−

2012年6月19日

6月12日、「内閣総理大臣主催 青年海外協力隊帰国隊員による報告会」が、首相官邸で開催された。今回は、2010年6月以降に活動を終え帰国した青年海外協力隊員約2,600人の中から100人が招待された。

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「内向きにならず、世界に雄飛する志を抱くことが、今の日本にとっては極めて重要」と語りかける野田総理(右)

報告会には野田佳彦内閣総理大臣、藤村修内閣官房長官らが出席。また、来賓として「日本の国際協力−特に青年海外協力隊の活動−を支援する国会議員の会(以下、協力隊議連の会)」から、会長の髙木義明衆議院議員をはじめ、顧問の松下忠洋衆議院議員(郵政・金融担当大臣)、同顧問の小渕優子衆議院議員、事務局長の樋高剛衆議院議員、齋藤勁(つよし)衆議院議員(内閣官房副長官)、山花郁夫衆議院議員、谷合正明参議院議員、小熊慎司参議院議員、川越孝洋衆議院議員、櫛渕万里衆議院議員、浜本宏衆議院議員、姫井由美子参議院議員、森山浩行衆議院議員、矢崎公二衆議院議員が参加した。外務省からは玄葉光一郎大臣や越川和彦国際協力局長、JICAからは田中明彦理事長、緒方貞子特別顧問、武下悌治青年海外協力隊事務局長らが出席した。

世界からの信頼を支える青年海外協力隊

「世界で貢献をしてきた人たちを、きちんと遇する日本にしていきたい」と述べ、帰国隊員と握手を交わす野田総理

野田総理大臣はあいさつで、昨年3月の東日本大震災に触れ、「これほど多くの国や地域、国際機関からご支援をいただけたのは、日本が積み上げてきた国際社会への貢献、その実績があればこそ。日本が勝ち得た世界からの信頼、それを縁の下で支えてきた歴代の青年海外協力隊の皆さまの活躍を大変誇らしく思います。政府としても、今後とも内向きにならずに国際貢献を続けていく決意です」と述べた。また、「貴重な体験を通じて得た素養を大きな糧としながら、時代が求めるグローバル人材の模範的な存在として、これからもご活躍いただきたい」と帰国隊員を激励し、「皆さんのようなグローバル人材を育成し、企業や社会の中で活躍できる環境整備に力を尽くしていきたい」と結んだ。

教えられることが多かった2年間

「2年間で培った行動力やコミュニケーション力を生かしたい」と語る野村さん

帰国隊員を代表し、ベネズエラでパソコンインストラクターとして活動した野村明香(はるか)さん(29歳、東京都出身)が帰国報告を行った。野村さんは中学3年生の時に「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」で、準特選に入選した経験を持つ。

「何かを伝えに行ったはずが、逆に教えられることのほうが多かった」という野村さん、赴任当初はパソコン嫌いの教師に向けた講習会の企画、実施に大変な苦労を伴った。しかし、講義中心から実習型へと内容を変更したり、どら焼きを手作りして振る舞ったりするなどの努力を重ねた結果、講習会のみならず野村さん自身や、日本に対し興味を持ってもらえるようになった。

2年間の活動で、異なる意見を持つ者を拒絶するのではなく、なぜ衝突が起こるのかを考え、互いの妥協点を模索することの大切さを学び、身につけることができたと感じている。また、多民族国家のベネズエラの人々は、他者を受け入れることに長けており、「日本人として見習うべき点が多かった」と言う。今後は日本の子どもたちにこの経験を広く伝えて、世界に向けて目や心を大きく開き、考え、行動していくきっかけにしてほしいと野村さんは願っている。

日本ファンを増やしたい

「ラオスの人たちが、日本をとても身近な友人のような存在だと思ってくれていることに気づかされました」と米田さん

続いて、ラオスで理数科教師として活動した米田勇太さん(27歳、奈良県出身)が報告を行った。米田さんは、教師の指導力向上を目指して赴任。今でも忘れられないのが、東日本大震災の後に、生徒、教師、街中の人たちから日本や家族を気遣う言葉をかけてもらったこと。「日本円で月に5,000円という少ない給料の同僚が、『日本のために』とポケットからくしゃくしゃのお金を出してくれたことは今でも鮮明に覚えています」。米田さんは、人々の優しさに感謝の気持ちで応えるべく、地震や津波についての特別講義を実施。休日にもかかわらず200人もの生徒が参加してくれた。講義の後、校庭に出て、ラオス語で「がんばれ」の人文字を作ってくれた時は、胸にこみ上げるものがあったという。

「時には欠点として挙げられる、まじめさ、優しさ、謙虚さといった日本人の性格ですが、確実に日本ファンを生み出していると感じます。先輩隊員たちの心ある行動が、自分の活動を支えてくれているのだと実感しました」と米田さん。今後は、途上国の教育改善について学び、教育のプロフェッショナルとして、途上国支援に携わり、少しでも日本ファンを増やせるような魅力ある人物になりたいと夢を語った。

「フルキャストディプロマシー」の時代

帰国隊員を労う髙木会長(上)と玄葉大臣

帰国隊員の報告に続き、協力隊議連の会を代表してあいさつを行った髙木会長は、「文化も歴史も地理も違う異国の地で生活をすること自体、並大抵の苦労ではない。グローバル人材の育成は国の一つの大きな課題でもあり、皆さんが得た貴重な経験を、これからの仕事に生かせるようなお手伝いをしなければならないと思っている」と述べた。また、玄葉外務大臣は、「先日、アフリカ開発会議(TICAD)関連でモロッコを訪れた際、何人かの大臣から青年海外協力隊の活躍について具体的な話があり、とてもうれしかった。これからは、さまざまな担い手が外交を行う『フルキャストディプロマシー』の時代。皆さんはこの外交の大切な担い手の一人であり、帰国後もしっかりと評価を受けるようなシステムを作り上げなければならないと感じている」と語った。

帰国隊員のグローバル人材としての活躍を期待する松下郵政・金融担当大臣(左)と藤村官房長官

続いてあいさつに立った藤村官房長官は「皆さんは間違いなくグローバル人材。日本の社会でも、世界を舞台とする場合でも、この経験は今後の人生に大きく生きるはず。どうぞ生かしてください」と激励した。また、10年前に帰国隊員報告会を立ち上げたメンバーの一人である、松下郵政・金融担当大臣は「青年海外協力隊は、外交の一番根っこで一番大事な仕事をしている。どうか誇りを持って次につなげていただきたい」とエールを送った。

その後、約30分にわたり懇談会が行われ、国会議員は帰国隊員の活動報告に熱心に耳を傾け、会場は大いに盛り上がった。

日本の援助はコミュニケーション

「世界を元気にすることで、日本も元気になる」と語る田中理事長

田中理事長は、報告会の最後に列席者や関係者に謝意を述べるとともに、「日本の援助は、こちらから何かを与えるだけではなく、お互いが学び合う『コミュニケーション』が特長。その最もわかりやすい例が、協力隊のみなさんの活動です。日本人の人間性を世界の人々に伝え、わかってもらう。また、世界はどういうところなのかを皆さんが理解する。そしてこれから、日本国内で、多くの人たちに自分たちが得た経験を伝えて、日本と世界とのコミュニケーションをよくしていく。これが日本の援助の良さではないか思っています。今後の活躍を期待しています」と、帰国隊員への激励の言葉を述べ、会を締めくくった。