【Featuring Africa】日本のインフラ維持管理ノウハウをアフリカへ

−阪神高速道路がケニアの道路建設事業を直接受注−

2013年5月24日

阪神高速道路株式会社は他2社と共同で2013年1月、ケニア「モンバサ港周辺道路開発事業」(注1)のコンサルティング業務を、ケニア高速道路公社(KeNHA)から受注した。これまで阪神高速道路などの旧日本道路公団系(注2)の企業が、東南アジアで相手国から直接受注した例はあるが、アフリカでは初となる。

技術協力でケニアの意識が変化

東アフリカ物流の大動脈、ナイロビ(ケニア)‐カンパラ(ウガンダ)間を結ぶ北部回廊(写真提供:佐藤浩治)

ケニアなどアフリカでは幹線道路の建設・改修が急ピッチで進んでいる。各国は延べ数千キロメートルに及ぶ道路の完成を急ぐあまり、完成後の維持管理のための体制づくりを後回しにしがちだ。

そこでJICAは、日本の道路維持管理のノウハウをケニアで生かすため、道路省、ケニア高速道路公社(KeNHA)、ケニア都市道路公社などの道路関係機関をカウンターパートとする技術協力プロジェクト(注3)を2010年に立ち上げた。このプロジェクトには阪神高速道路の社員が専門家として派遣されていた。

それまでのケニアの道路の維持管理の発想は、問題が起きたら、部分的に補修するというもの。専門家が取り組んだのは、メンテナンス業務の外部委託による長期的で信頼性の高い維持管理体制の構築だ。それは、旧来のケニアの発想を根本的に変えるものだった。

サービスを外注するには、発注者である実施機関の管理能力も問われる。専門家は外部委託のための標準積算基準や標準入札書類の作成を支援した。ケニア政府は2011年、大統領臨席の下、これを制度として正式採用することを発表した。

海外展開を見据え、円借款事業の直接受注へ

東アフリカの海の玄関口モンバサ港。年々貨物取扱量が増加しており道路など周辺のインフラ整備が急務

「モンバサ港周辺道路開発事業」は、東アフリカの物流拠点であるモンバサ港周辺の道路整備を行うもの。大型の橋を含む全長25キロメートルの新設道路は、完成後は外部委託による維持管理が予定されている。JICAの技術協力プロジェクトを通じ維持管理の重要性を痛感したKeNHAは、この事業のコンサルティング業務に、通常の詳細設計・施工監理に加え、効果的・効率的な維持管理のための設計段階での助言や、維持管理の外部委託を適正に監理するための技術指導を含めて公募した。

入札方法はプロポーザル方式による国際競争入札だった。阪神高速道路は日本のコンサルティング企業とジョイントベンチャー(JV)を組んで応募。「海外業務の受注に取り組み始めたところで実績はなかったが、維持管理をしやすくするために設計段階からできる工夫は数多くあるので、維持管理の技術やノウハウなら勝負できると考えた。JICAの技術協力プロジェクトでの経験がプロポーザル作成に大いに役立った」と、阪神高速道路の鈴木威(たけし)さんは入札の戦略を明かす。

阪神高速道路などが構成するJVコンサルタントチームは、4月から現地作業を開始している。「円借款事業での初めてのコンサルティング業務ということで戸惑いもあるが、これまで日本で培った道路建設、維持管理・運営のノウハウを少しでもケニアで生かせればと思う。将来的にはアフリカの他の国でも同様の事業に関与していきたい」と、現地でコンサルタント業務に携わる鈴木さんは今後の展開を見据える。

カウンターパートのKeNHAのサミュエル・オケッチ・オメール計画・環境局長は、「この事業はケニアで最大規模の新設道路建設事業だ。詳細設計は始まったばかりだが、すでにコンサルタントから、日本での現場知見などに基づいた有益なアドバイスを受けている。維持管理の視点を設計、建設の段階から適切に組み入れることで、道路のライフサイクルコスト軽減、資産価値の確保につながる」と効率的な維持管理実現への期待は大きい。

積極的なインフラ整備が進むアフリカで、日本が誇るインフラの維持管理技術を生かせる場は広がっている。JICAは日本企業が持つノウハウでアフリカの成長に貢献できるよう、側面支援を続けていく。

(注1)JICAが2012年6月にケニアと調印した円借款事業。
(注2)2005年に分割民営化されるまで、主として有料道路の建設・管理を行っていた特殊法人。
(注3)「道路メンテナンス業務の外部委託化に関する監理能力強化プロジェクト」(2010〜2013年)。

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