【Featuring Africa】アフリカ、インフラ投資のボトルネックを克服するには

−NEPAD、OECD、SADC、IFC、JICAがセミナーを共催− 

2013年6月11日

企業からの参加者も多く、超満員となった会場

近年の目覚ましいアフリカ経済の成長に、インフラ整備が追い付かない。世界銀行の試算では、成長を続けるために必要なインフラ整備には、サブサハラ・アフリカだけで毎年930億ドルが必要であるにもかかわらず、実際には400億ドル程度しか投資されておらず、そのほとんどは各国のODAに頼っている。

アフリカ各国は海外からの直接投資を必要としているが、政治や治安をはじめ、さまざまな要因が投資のボトルネック(障壁)となっている。日本企業にとっては、さらに地理的、文化的な隔たりが加わり、アフリカへの投資は、なかなか進まない。

アフリカ大陸には54ヵ国が存在するが、国土が狭く、人口も少ない国が多い。国単位では投資規模が小さいため、地域単位で共同体を形成し開発計画を進めている。その一つ南部アフリカ開発共同体(SADC)(注1)は、2012年8月に策定した「インフラ開発マスタープラン」の事業化に向けて、「NEPAD-OECDアフリカ投資イニシアティブ」(注2)とインフラへの民間投資促進などで関係を強化している。

そこでJICAはアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)(注3)、経済協力開発機構(OECD)、 SADC、国際金融公社(IFC)(注4)との共催で5月31日、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の公式イベントとして、神奈川県横浜市で、「官民連携によるインフラ投資環境整備に向けた挑戦」と題したセミナーを開催した。会場には、NEPADのイブラヒム・ハッサン・マヤキ長官やJICAの堂道秀明副理事長をはじめ、アフリカ各国の政府関係者、開発援助機関のほか、商社、銀行、インフラ関連企業や大学関係者など100人以上が集まった。

アフリカのインフラ開発には民間投資が必要

JICAの南部アフリカでのプロジェトを紹介する市川理事

セミナーでは、JICAの中村俊之南アフリカ事務所長がモデレーターを務め、まずモザンビークのパウロ・フランシスコ・ズクーラ運輸通信大臣、OECDの玉木林太郎事務次長、JICAの市川雅一理事が登壇。続いてNEPAD-OECDアフリカ投資イニシアティブのカリム・ダホウ・エグゼクティブ・マネジャー、SADCのレミー・マクンベ・インフラ・サービス部長、IFCのヴィプル・バガット官民連携部門グローバルリードが各機関の取り組みを紹介した後、セネガルのマッキー・サル大統領とSADCのジョアン・サミュエル・カホロ事務局次長を迎えて、官民連携によるインフラ投資についてのパネルディスカッションを行った。

冒頭、2012年8月からSADCの議長国を務めるモザンビークのズクーラ運輸通信大臣は、「インフラ開発マスタープラン」の概略を説明し、「今後5年間で640億ドル、15年間で3,100億ドルが必要だ。アフリカの持続的な成長のためにも投資をお願いしたい」と投資規模の大きさを示した。

OECDの玉木事務次長は、OECDのPPP(官民連携)を支援する手法を紹介し、「アフリカへの民間直接投資がリーマンショック以前の水準に戻ってきており、2013年は700〜850億ドルに上る見込みだが、この金額はアフリカ全体のODAの2倍に近い」と民間投資の重要性を強調した。

JICAの市川理事は、モザンビーク北部のナカラ港からマラウイを通ってザンビアの首都ルサカまで通じる「ナカラ回廊」に関するプロジェクトをはじめとする、JICAの南部アフリカでの支援を紹介するとともに、「本セミナーが、日本企業とSADC、その他アフリカ諸国、さまざまなドナーとの間で、率直な意見交換とネットワークづくりの場として活用されることを期待する」と述べた。

ボトルネックは法的規制、人材、インフラ

続いて、NEPAD-OECDアフリカ投資イニシアティブのダホウ氏は、南部アフリカ地域の投資のボトルネックに関する調査の結果を、「政策・規制や人材不足、インフラの未整備によるところが大きい」と紹介した。

SADCのマクンベ氏は、「インフラ開発マスタープラン」の六つの重点分野、エネルギー、運輸、ICT、水、気象、観光について説明。「今後5年間の短期アクションプランでは総額で640億ドルが必要となる。特にICTへの投資を優先し、それには210億ドルが必要。ブロードバンドネットワークの構築に大きな投資チャンスがある」と強調するとともに、「長期的にはエネルギー分野に1,430億ドル、運輸分野に1,000億ドル、水分野には160億ドルが必要だ」と訴えた。

IFCのバガット氏は、IFCが途上国で民間セクター開発のための技術支援や、ビジネス環境改善のためのプロジェクトを支援していることなどを紹介。「アフリカ地域におけるPPP支援スキームや投融資を通じて、日本企業のアフリカ投資に対しても積極的に支援することを検討している」と述べた。

「新しいアフリカを見に来てほしい」

SADCのカホロ事務局次長(左)とセネガルのサル大統領(右)

パネルディスカッションには、バガット氏とダホウ氏に加え、NEPAD運営委員会の議長を務めるセネガルのサル大統領とカホロSADC事務局次長を迎えた。サル大統領は、「アフリカでは民主化が進み、政治も安定してきている。経済も成長しており、投資の回収に要する期間も短くなっている。若年層人口が多く、天然資源が豊富なアフリカは、地域インフラ開発に投資が必要だ。ぜひアフリカに来て、かつてのようなステレオタイプではないアフリカをその目で見てほしい」と力説した。

IFCのバガット氏(左)とNEPAD-OECDアフリカ投資イニシアティブのダホウ氏(右)

各登壇者は、アジアとアフリカのインフラ整備の状況の違いやアフリカの可能性、日本企業の投資チャンスや企業のさらなる進出の必要性について議論した。

また、会場から「中国企業が急速に進出しているが、日本企業が進出する余地がどの分野にあるのか」と質問が挙がると、登壇者は「特に発電、送電、配電などの電力部門やソフトインフラとしての金融部門などで日本に期待している」と応じた。

最後にジョン・フィリップ・プロスパーIFCサブサハラ・アフリカ・中米カリブ担当副総裁が、「現在、アフリカの人口は10億人だが、2050年には20億人になると推計され、サブサハラ・アフリカでは、2012年から2017年の5年間で毎年5〜6パーセントのGDPの伸びが予測されている。アフリカ各国政府は、マクロ経済政策を安定させ、関税などの規制緩和を検討するなど、ビジネス環境を整えることに努めている。アフリカのインフラに投資する時期が来ている」と締めくくった。

今回のセミナーでは、アフリカの首脳クラスと各国際機関が一堂に会し、アフリカのインフラ投資におけるこれまでの経験やビジネスチャンスを共有することができた。インフラへの投資が、アフリカの地域統合や開発の加速、さらには競争力強化につながることが再認識され、今後、より多くの日本企業がアフリカへの投資に踏み出すことが期待される。


(注1)Southern African Development Community。1992年に設立された地域機関。アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、セーシェル、スワジランド、タンザニア、ナミビア、ボツワナ、マラウイ、南アフリカ、モーリシャス、モザンビーク、レソトの14カ国が加盟。
(注2)OECDの「開発のための投資」プログラムの成果をアフリカで展開することを念頭に日本政府が提唱し2006年末に立ち上げた、アフリカの投資政策にかかわる主要フォーラム。
(注3)New Partnership for Africa's Development。2001年7月のアフリカ連合(AU)首脳会議で採択されたアフリカ自身によるアフリカ開発のためのイニシアティブ。OECDと協力して投資環境改善のための具体的改革政策の特定や実施に向け、アフリカ各国の能力強化やアフリカ各国間での域内協力の促進などを支援している。
(注4)International Finance Corporation。世銀グループの一員で、途上国の民間セクター開発に融資する国際開発機関。


【TICAD Vの開催に合わせて、アフリカの開発課題、事業の最新動向、援助の在り方についての分析など、アフリカをシリーズで特集しています】