【ASEAN、40年の絆】世界に誇る高速鉄道「新幹線」をアジアへ

−高速鉄道サミットin東京−

2013年11月18日

開発途上国の高速鉄道導入を支援する取り組みの一つとして、JICAは11月4〜9日、「高速鉄道サミット」と銘打った招へいプログラムを実施した。これまでは国ごとに高速鉄道の関係者を招いてプログラムを行ってきたが、今回は東南アジア各国が抱える問題や課題を共有するため、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアから高速鉄道の実務にかかわる10人を同時に招いた。

高速鉄道とは、時速200キロ以上の速度で走行できる鉄道システムのこと。日本の新幹線やドイツのICE、フランスのTGVなどがこれに当たる。

今回のプログラム実施の背景には、6月に閣議決定された政府の成長戦略のアクションプランの一つで、国際市場の獲得を目指す「国際展開戦略」がある。プログラムは高速鉄道の概念から関連する技術、運行管理まで幅広く網羅。日本の高速鉄道が持つ強みを紹介し、日本企業や関係機関とのネットワークづくりも支援する内容となった。

「鉄道技術展」で各国の最新鉄道事情を紹介

各国の高速鉄道事業の最新状況を発表

一行は5日、日本鉄道車両輸出組合(JORSA)(東京都千代田区)で開催された「意見交換会」に出席し、日本の業界関係者など約70人と交流した。

6日は幕張メッセ(千葉県千葉市)で行われた「第3回鉄道技術展」を見学。その後、会場で各国の高速鉄道事業の最新状況について発表した。途上国の高速鉄道事業に関心を持つ日本企業や関係機関などから100人近くが来場。聴衆の関心は高く、発表後には活発に質疑応答が行われた。各国の高速鉄道計画は、国により段階や状況が異なるものの、整備に向けたさまざまな課題などを共有することができた。

大阪駅の再開発を称賛

大阪駅ホームの上の連絡橋で説明を聞く参加者一行

「駅は街の玄関口」であり、鉄道計画では極めて重要といわれる。7日は東海道新幹線で大阪に移動し、ターミナル駅開発と駅周辺の街づくりの事例として大阪駅を視察。その計画・開発の手法、財源などについて学んだ。

一行は、まず大阪駅ホームの上にある連絡橋から全体を眺めながら、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の担当者から、駅全体の構造とデザインの説明を受けた。マレーシア首相府のアフマド・スハイリ・イドラス業務管理実施局長は「大屋根のデザインが秀逸。世界の大都市の駅でも、これほど空間デザインが素晴らしいものは少ない」と称賛した。

その後、駅北側の再開発地域を見渡す上階に移動。大阪駅は単に駅としての機能を持つだけではなく、商業施設やオフィス施設も含めた複合施設であることをその目で確かめた。マレーシア首相府のエイドリアン・タン上級アナリストは「大阪駅の総合開発は大変興味深い。自国でもこうした開発が必要だと感じている。マレーシアに戻ったら、駅開発に関するセミナーを開催したい」と述べた。

車両の維持管理に高い関心

新幹線総合車両センターでは盛んに質問が飛んだ

8日は東北新幹線で仙台に移動し、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の新幹線総合車両センターを視察。約53万平方メートルの巨大な車両基地で、新幹線を運行する上で必要な車両メンテナンスの見識を深めた。

「修理は車両メーカーが行うのか」「検査頻度はどのくらいか」「メンテナンスに関するプログラムはあるのか」など維持管理に関する質問が参加者から矢継ぎ早に挙がると、「メンテナンスはグループ会社を含めて自社で行っており、その知識や技術も社内に蓄積している」と担当者が応じた。

研修を終えて、インドネシア国家開発企画庁のデイル・ウマミル・アスリ陸上輸送・鉄道副局長は「新幹線の非常に短い運行間隔は、秒単位の運行管理に支えられていると聞き、素晴らしいと思った。今回の研修で習得したさまざまな技術をジャカルタ−バンドン間の高速鉄道の参考にしたい」と語った。

また「タイは4路線の高速鉄道計画がある。日本の新幹線が順次開業してきた経験を参考にしたい。目指す最高速度は資金計画しだいだ」とタイ公的債務管理局公共インフラ事業金融部のティラージ・アタナバニッチ執行役員が述べると、ベトナムのチャン・クオク・ドン国鉄副総裁は「今回の研修には新幹線の車両メンテナンスや大阪駅の開発などが含まれており、いろいろな点で理解が深まった」と語るなど、各国の計画に反映できそうだという声が多数聞かれた。

ベトナムではハノイ−ホーチミン間約1,600キロを結ぶ壮大な高速鉄道計画がある。JICAはその調査を2011年から技術協力プロジェクトとして実施し、2013年8月にベトナム政府に提出したところだ。インドネシアではジャカルタ−バンドン間を結ぶジャワ高速鉄道の建設のためのJICAの調査が、今年12月から始まる。JICAは今後、研修や招へいプログラムを活用し、これらの調査がスムーズに進行するよう支援していく。


【今年、交流40周年を迎えた日本とASEAN。日本と深いつながりを持つASEANの開発課題やJICAの支援など、ASEANの「今」をシリーズで紹介しています】