貧困と温室効果ガス、両者の削減に挑むザンビア

−小水力発電による地方電化事業がCDM事業登録完了−

2013年12月24日

2009年のCOP 15のサイドイベントで、地方電化事業のCDM化と貧困削減の橋渡しを提唱した、ザンビア観光・環境・天然資源省のキャサリン・ナムガラ大臣(当時)

2013年9月、ザンビアの小水力発電による地方電化事業がクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism:CDM)事業として登録された(注1)。CDMは、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された、「京都メカニズム」の手法の一つで(注2)、開発途上国で実施される温室効果ガス削減活動によって削減された排出量(排出権)を先進国の温室効果ガス排出量削減分の一部に充てることができる仕組みだ。

開発と気候変動対策の両立を図る

対象となった地方電化事業では、川の流れに装置を取り付けて行うタイプの小水力発電設備を整備し、電線が引かれず、電気が行き届かない地域に電気を供給することで住民の生活環境の改善を図る。

家庭で調理や照明に使われているケロシン(灯油)やディーゼルなどの化石燃料を、水力発電によるクリーンな電力で代替することで、年間約1万1,000トンの温室効果ガス(この場合はCO2)の削減効果が期待できる。さらに、住民が家の中でケロシンやディーゼルを使うときに発生する煙でのどや目を傷めることも、火事の心配もなくなるというメリットもある。この事業がCDM事業として実施されることにより、ザンビアはクリーンで安全な電力の供給と排出権獲得の二つのメリットを享受することができる。

一方、CDM事業として国連に登録するには、クリアしなければならない数々の条件がある。例えば、事業の概要や温室効果ガス削減の算定方法・削減量などを記した「プロジェクト設計書」を作成したり、第三者機関が「プロジェクト設計書」をチェックする「有効化審査」に対応することが求められる。CDM事業は世界中でこれまでに7,000件を超える登録があるが、これらの多くは、CDMを推進する体制を早期に整え、多くの削減量を見込めるプロジェクトが存在する国に集中する傾向がある。温室効果ガス排出量が必ずしも多くはない、ザンビアをはじめとするアフリカ諸国などでは、気候変動に取り組む体制整備が遅れた上、多くの削減量が見込めるプロジェクトが少ないため、CDM登録が10件に満たない国が多数ある。

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JICAは「有効化審査」のために、住民向けにCDM事業の説明会を実施。住民からは、水力発電所の建設で電力供給が安定することを評価する声が聞かれた

事業実施とCDM事業登録の両面で協力

JICAでは、ザンビアに対し、2006年から技術協力「地方電化マスタープラン開発調査」で地方電化を体系的に進めるための国内制度づくりに協力し、円借款「電力アクセス向上事業」で資金を提供して配電網と小水力発電設備の整備に協力、ザンビアの貧困地域の人々に電力を供給する計画を支援してきた。

また、JICAは、ザンビアのCDM事業化に対する熱意に応え、同国が行うCDM事業登録に必要な書類の作成や審査手続きを支援。また、カウンターパートであるザンビア電力供給会社やザンビアのCDM担当機関である国土資源環境保護省などが、CDM事業への関心をさらに高め、将来、より多くのCDM対象事業を形成・実施できるよう、セミナーを開催したりもした。

JICAは、CDMの取り組みを拡大するため、2009年のCOP15 に合わせてCDM制度の見直しをテーマにサイドイベントを開催し、世界の議論を喚起した。その結果、2010年5月、国連のCDM理事会で、ザンビアのような後発開発途上国(注3)や小島しょ国で実施される小規模な再生可能エネルギーや省エネルギーのためのCDM事業について、手続きを簡素化することが決定された。

地球規模公共財のために

国際社会では、気候変動への取り組みに関して、先進国だけでなく途上国も温室効果ガスの削減努力を行うための枠組みが検討されており、11月11〜23日、ポーランド・ワルシャワで開催されたCOP19でも、「すべての国が目標や貢献策を自主的に作る」という大枠が決まった。

ザンビア国内のCDM事業登録は、これで2件となった(注4)。事業はまだ実施中ではあるが、近い将来、ザンビアの人々がクリーンなエネルギーを利用して健康で豊かな生活を送る一助となるだろう。また、ザンビアにとって、CDM事業登録で得た知見は、今後温室効果ガス削減活動を進めていく推進力になると考えられる。

安定した気候は、地上のすべての生物にとって共通の財産である「地球公共財」だ。人間の生活によって温室効果ガスが適正な量を超え、気候変動につながることは可能な限り排除していかなければならない。JICAはさまざまな手法で、今後も途上国の開発と気候変動対策の両立を目指す協力を続けていく。


(注1)CDM事業登録は2013年1月25日付、登録作業日は2013年9月20日付。
(注2)京都メカニズムは、各国の温室効果ガス削減数値目標を達成するための手段である市場原理を活用するところが特徴で、CDMのほかに、CDMと同様のスキームだが、先進国同士で行うJoint Implementation(JI)、削減義務を負う先進国同士が足りないクレジットを売り買いする排出量取引がある。
(注3)Least Developed Country。国連総会が認定する、特に開発の遅れた国々。現在世界に50ヵ国弱のLDCがある。
(注4)1件目はドイツの支援で登録されている。