【ASEAN、40年の絆】日本とベトナムを結ぶ環境協力

−環境分野のキーパーソン、大阪府立大学前田泰昭名誉教授に「天然資源環境省日越国交40周年記念環境功績賞」−

2013年12月25日

ベトナムと日本の国交樹立から40周年を迎える今年、大阪府立大学の前田泰昭名誉教授が、ベトナム天然資源環境省から「天然資源環境省日越国交40周年記念環境功績賞」を授与された。前田名誉教授はかつてJICAの長期専門家としてベトナムに派遣され、その後、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)(注1)の日本側リーダーとしても活躍した。これまでもJICAは、環境協力をベトナムへの支援の重要な柱としており、さまざまな協力を実施している。

深刻化するベトナムの環境問題

ハノイ近郊のニュエ(Nhue)川の汚染

ベトナムは経済成長と都市化が飛躍的に進んだ結果、都市部を中心として、河川の水質汚濁や大気汚染の深刻化、廃棄物の不適切な処理など、さまざまな問題を抱えている。

環境汚染対策を重要課題と位置づけるベトナム政府は、1994年に環境保護法を施行。2002年には天然資源環境省を設立した。また、2005年には環境保護法を改正するなど、環境対策の強化に向けた法制度や実施体制の整備に取り組んできている。一方で、政府関係機関の人員、予算不足、職員の経験不足といった理由で、せっかく制定した政策が効果的に実施されないという問題を抱えていた。

こうした状況から、ベトナムは日本に対し、過去の公害対策の経験を踏まえた支援を要請。これを受けてJICAは、2003年から本格的に環境管理分野での支援を開始した。これまで特に水分野を中心に協力を実施しており、2013年12月現在、下水道分野の円借款を7件、下水道、大気、廃棄物分野の技術プロジェクトを3件実施している。また2010年からは、円借款「気候変動対策プログラムローン」を開始しており、気候変動対策分野の支援も行っている。

ベトナムが取り組む環境管理の基礎づくりへの支援を評価

天然資源環境省のチャン・ミン・ハー国際協力局長(左)と前田名誉教授

環境問題に対するベトナム側の取り組みを支援するため、JICAは上記に加え政策アドバイザー(環境政策、下水道政策)の派遣も行っている。2004年から天然資源環境省に初代環境政策アドバイザー専門家として派遣されたのが、前田名誉教授(当時教授)だ。前田名誉教授は、4年の活動期間中に「ベトナム環境戦略10ヵ年行動計画」の作成や、環境モニタリングシステムの改善、市民への啓発活動の支援を行うなど、精力的に活動し多くの成果を上げた。また、任期終了後もさまざまな機会を利用し、天然資源環境省を中心としたベトナム行政機関の環境管理体制整備や、関係者の人材育成に継続的に携わっている。

こうした実績が認められ、10月16日、ベトナム天然資源環境省は前田名誉教授に、「天然資源環境省日越国交40周年記念環境功績賞」を授与した。

新たなプロジェクトともう一つの称号授与

前田名誉教授は、現在SATREPS「ベトナムおよびインドシナ諸国におけるバイオマスエネルギーの生産システム(植林・製造・利用)構築による多益性気候変動緩和策の研究」の研究代表者として、ベトナムに対する支援活動に取り組んでいる。

2011年に始まったこのプロジェクトでは、バイオマスエネルギー(注2)の生産・利用システム開発を支援しており、ベトナムのクアンニン省では、すでにプロジェクトで製造したバイオディーゼル燃料で観光船の試運転が始まっている。

Distinguished Professorの称号授与式。右からVNU-HCMトー・ティー・ヒェン環境科学部学部長、前田名誉教授、ファン・タイン・ビン学長、ドォー・フック学術交流局長

こうした功績を認められ、11月22日には、ベトナム国家大学ホーチミン校(VNU-HCM)から、外国人としては2例目という「Distinguished Professor」の称号を授与された。前田名誉教授は、「幸運なことに、VNU-HCMの博士課程の優秀な学生たちが、よい結果を残してくれたことと、SATREPSの実績が大きいと思います。これからも全力で日本とベトナムとの交流のために尽くしなさいという神様からの命令と解釈し、感謝をして受けてきました」と、喜びを語った。また、同プロジェクトのベトナム側リーダーであるルゥー・バン・ボイ教授も、10月にベトナムの「Full Professor」(注3)の称号を受けており、「日本との協力の成果が、ベトナム側でも大きく評価された結果と考えています」と述べる。

ベトナムの未来に向けた環境協力

外交関係樹立から40年、1992年のODA再開から20年がたった現在、日本はベトナムに対する最大の援助国となっている。この間、JICAの環境管理分野の支援も大きく広がってきた。さらに、日本企業が進出する中で、日本の環境技術を普及することへの関心も高まりを見せており、多くの企業がJICAの民間連携事業で現地調査を実施している。

2012年開催の「RIO+20」でも、グリーン成長の重要性が確認されている中で、ベトナムが持続的な発展を遂げていくためには、環境との調和は欠かせない。JICAとしても「ベトナムのすべての人々が恩恵を受ける持続可能な成長とは何か」を模索しながら、その支援に取り組んでいきたいと考えている。 


(注1)Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development:通称SATREPS。独立行政法人科学技術振興機構(JST)とJICAが共同で実施している、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間の研究プログラム。
(注2)化石燃料を除く、再生可能な生物由来の動植物資源のこと。
(注3)通常、教員の定年は男性は60歳、女性は55歳だが、Full Professor は70歳となる。


【今年、交流40周年を迎えた日本とASEAN。日本と深いつながりを持つASEANの開発課題やJICAの支援など、ASEANの「今」をシリーズで紹介しています】