交番制度は先輩に学べ(東ティモール)

−地域警察の活動強化をインドネシアで研修−

2014年3月27日

薬物、暴力、交通安全、オートバイの盗難防止などについて指導するインドネシアの警察官(右から二人目)と指導方法を学ぶ東ティモールの警察官

アジアで一番新しい国、東ティモールで地域警察・交番制度がスタートしたのは、インドネシアから独立回復した翌年の2003年。JICAが日本で実施した研修に参加し、日本の交番制度に感銘を受けた東ティモール国家警察(PNTL)の幹部(当時)の提案がきっかけだ。

日本の交番制度の特徴は、地区ごとに設けられた交番に警察官が24時間常駐し、地域住民と連携しながら安全なコミュニティーを築き上げている点にある。JICAは2008年から、東ティモールの警察官を日本に招いて研修を実施したり短期専門家を現地に派遣したりするなどして、PNTLが取り組む地域警察活動を支援してきた。

しかし、地域警察活動を東ティモール全土に展開していく上では、同国での地域警察に関する制度の整備やさらなる実践能力の強化が求められる。そこで、2013年からは3年間の予定で、地域警察活動の強化を目的とした「地域警察確立支援プロジェクト(通称:KOBANプロジェクト)」を展開。地域警察活動に必要な知識、ノウハウ、経験などを、日本やインドネシアでの研修、専門家(日本人警察官)の現地への派遣などを通じて提供している。

地域住民と警察官の信頼関係を構築

東ティモールの交番を視察する日本人専門家(左)

地域警察は、交番を拠点に管轄地域の安全と治安を守る。東ティモール国家警察法では「警察組織は地域警察の性格を有しなければならない」「警察署は、全国に442ある村の規模に基づき、村ごとに交番を設置する」と規定され、全国に交番が設置されている。さらに、警察学校では地域警察の指導にも力を入れるなど、東ティモールの警察活動の中心に位置づけられる重要な役割を持つ。交番に勤務する地域警察官は、地域住民からの相談や通報への対応、学校での防犯指導、管轄のパトロールなどを行っている。

東ティモールの治安状況は落ち着いてはいるものの、失業率の高さや貧しさによる潜在的な不安定要因も存在する。地域を安定させ紛争を予防するには、警察官と地域住民との協力や信頼関係の構築、コミュニティーでの警察官の活動強化が欠かせない。

制度の導入に伴う課題もある。業務マニュアルなどが整備されていないこともあり、地域警察官の業務が定まっていない。交通や通信の手段が限られるため、特に遠隔地での活動には支障を来すことも多い。

進むインドネシアとの協力関係

インドネシア警察官(右端)に同行して巡回連絡を学ぶ東ティモール警察官

JICAは日本の警察庁の協力を得て、1980年代からさまざまな国で交番制度の導入に協力してきた。1980年代のシンガポールに始まり、2000年からはブラジルでも協力を実施。今回、PNTLの警察官が訪れたインドネシアでも、国軍から独立したインドネシア国家警察が市民の信頼を得た市民のための警察(市民警察)となるよう、2002年から支援している。現在では、これらの三ヵ国へ交番制度を学びに訪れる国も増えている。

今回のプロジェクトでは2013年11月、PNTLの警察官30人がインドネシアを訪れた。JICAの支援で日本の交番制度を導入し、地域警察活動の強化を進めるジャカルタ近郊のブカシ県、ブカシ市の両警察署を視察し、理解を深めるためだ。研修では交番の働きや地域警察官の業務について説明を受けるとともに、地域の民家や学校に出かけ、実際の巡回連絡を体験するなどして、地域との連携の在り方を学んだ。

PNTLのリベイロ・ボアフィダさんは「警察官が頻繁に地域を巡回し、住民と気軽にあいさつをしている様子に感心した」と研修を振り返ったが、それはPNTLの警察官全員が感じたことでもあった。

警察官の業務の明確化が課題

東ティモールの交番

東ティモールとインドネシアは歴史的にさまざまな軋轢(あつれき)があったが、現在は良好な関係を構築しつつある。インドネシアは、東ティモールに技術者を派遣するなど南南協力(注)を積極的に行い、ASEAN加盟申請も後押ししている。

交番制度の研修についてもインドネシア側は協力的で、研修終了後にはインドネシア国家警察の地域警察活動に関する業務マニュアルをPNTLに贈呈した。PNTLの警察官を代表してマニュアルを受け取ったボアフィダさんは、「このマニュアルは、東ティモールで地域警察活動を展開していく上で重要な参考資料になる」と感謝の気持ちを表した。

角広志専門家と梅澤正己専門家は、東ティモールの地域警察・交番制度について、「PNTL関係者の間では、地域警察の考え方はかなり浸透しているという印象を受けた」と評価する。一方で、「業務マニュアルがないため、パフォーマンスの個人差が大きい。個々の警察官の業務評価の面でもまだまだだ」と課題を挙げた。

プロジェクトでは今後、今回と同様のインドネシアでの研修や日本での研修、さらには現地で活動を指導する専門家の派遣などを通じて、PNTLの地域警察活動の強化を支援していく。


(注)開発途上国の中である分野において開発の進んだ国が、別の途上国の開発を支援すること。途上国(南)が別の途上国(南)を支援することから「南南協力」と呼ばれる。