マグレブ諸国の治安向上に向けチュニジアとモロッコの関係者を招へい

2014年4月24日

チュニジアとモロッコの2ヵ国から、内務省など治安部門の責任者8人が、3月17〜20日、JICAの招きで来日し、警察庁や成田国際空港、テロ対策や治安対策関連の製品を開発している企業を視察した。

「テロ対策3本柱」に対応

成田国際空港の滑走路を視察する参加者

2011年のアラブの春以降、マグレブ諸国(注1)は自国と周辺地域の安定化に取り組んでいる。特に国外からのテロリストの流入を未然に防ぐため、治安対策関係機関の機能強化が喫緊の課題となっている。

しかし2013年1月16日、アルジェリア南東部イナメナスで、天然ガス精製プラントへの襲撃事件が発生し日本企業も巻き込まれるなど、北アフリカの砂漠地帯やサヘル地域(注2)は、リビア内戦終了後の武器や傭(よう)兵の周辺国への流出や、「イスラーム・マグレブのアル・カイダ(AQIM)」などイスラム原理主義武装集団勢力の伸張によって、社会情勢の不安定化が続いている。

アルジェリアでの襲撃事件後、2013年1月末に日本政府は外交政策として、1)国際テロ対策の強化、2)サヘル・北アフリカ、中東地域の安定化支援、3)イスラム諸国・アラブ諸国との対話・交流の促進という「テロ対策3本柱」を発表した。今回の招へいは、これらの政策の具体的な取り組みの一つとして行われた。

成田で空港保安について視察

一行は18日、警察庁を訪問し、日本のテロ対策の取り組みについて聞いた後、意見交換を行った。

19日には、成田国際空港を訪れ、空港保安担当者から空港内での治安対策について説明を受けた。担当者は「東日本大震災の発生時には、細かく定められたマニュアルが現実に合わず、うまく機能していないことが判明。現在はマニュアルを見直すとともに、さまざまなシナリオを想定した訓練に重点を置いて取り組んでいる」と語り、「空港、警察、航空会社など多くの関係者が連携して、コミュニケーションを取ることが重要だ」と強調した。

参加者からは「空港でのデモ発生など緊急時の対応は」「テロやハイジャック発生時の特別部隊の有無は」「車を使用した爆発テロへの対策は」「機材の維持管理体制は」などの質問が矢継ぎ早に挙がり、日本の空港保安に対する関心の高さがうかがわれた。 

日本の技術に高い関心

19日午後と20日は、テロ対策や治安対策に役立つ製品を開発している日本企業3社を訪れた。

高性能監視カメラを開発している企業では、参加者から「電力の制約があっても大丈夫か」「砂漠地帯のため砂塵(じん)があったり、昼夜の温度差が40度以上もある環境でも利用可能か」「夜間や遠方はどの程度まで監視が可能か」など、日本とは大きく異なる環境下で利用することを想定した、カメラの仕様や性能に関する質問が相次いだ。

視察を終えて、両国の参加者は「チュニジアでもモロッコでも、治安やテロ対策の問題を抱えているが、こうした問題は自国だけでは解決できない。国際社会からの支援を仰ぎつつ、各国が連携、協調して取り組んでいくことが重要だ」「今回、日本のテロ対策や治安維持に関する官民双方の取り組みを知る機会を得たことは大変有意義だった」などと語った。

国の枠を超えて「マグレブ・チーム」として

今回の招へいでは、「監視カメラなどの日本の高い技術だけでなく、震災の教訓を生かして、関係者間のコミュニケーションを重視しながら改善策を見い出していくという、日本のテロ対策や空港保安への取り組みに感銘を受けた」という感想が両国の参加者から多数聞かれた。

また、参加者は日本の知見を学ぶだけでなく、チュニジア、モロッコといった国の枠を超えて、「マグレブ・チーム」としてお互いの国の状況を共有し、意見を交換したことから、今後のテロ対策などで両国の連携が期待できる。

JICAでは現在、今回の招へいの成果を踏まえて、マグレブ諸国を対象に、治安対策やテロ対策に役立つ機材供与のための無償資金協力を検討している。また、2013年以降、北アフリカ、サヘル地域の治安向上に向けて、さまざまな取り組みを行っており、今後も研修などを中心に同地域の平和と安定に貢献していく。


(注1)アルジェリア、チュニジア、モロッコなどフランス語圏北アフリカを中心とした地域を指す。
(注2)サハラ砂漠の南辺にある北緯20度から12度の間に位置する地域。エチオピア、エリトリア、ガンビア、ジブチ、スーダン、セネガル、チャド、ナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、マリ、モーリタニアなどが含まれる。