【国際協力60周年】アンゴラと共に地雷のない世界を目指して(カンボジア)

2014年6月11日

5月19日から30日、カンボジア地雷対策センター(CMAC)は、アンゴラ国家地雷除去院(INAD)の職員10人を自国に受け入れ、地雷対策についての包括的な研修を行った。

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カンボジア北西部バッタンバン州の地雷除去現場を訪れたアンゴラの研修員

カンボジアは20年以上にわたる内戦を経て、1991年に和平合意に至ったものの、国内に大量に残された地雷や不発弾の除去は簡単ではなく、1999年まで地雷による年間死傷者数は1,000人を上回っていた。大量に残された地雷や不発弾を処理するために1992年に設立された、カンボジア政府の地雷対策実施機関、CMACの組織能力向上を目的に、JICAは、1999年から2011年まで金属探知機や灌木除去機などの機材供与や、専門家の派遣などを通じて包括的な支援を行ってきた。

230万個の地雷と不発弾を除去

CMAC本部で開かれたアンゴラ研修の開講式でスピーチする井崎宏JICAカンボジア事務所長(左端)

CMACは、2013年までに、約230万個の地雷と不発弾を除去。国際的支援と自身の努力で、効率的に地雷除去を進めるための手法やシステムを発展させてきた。このようなCMACの地雷対策の知見を、同様に地雷・不発弾問題を抱える国で生かすため、JICAは、CMACを通じて、2010〜2011年には、地方を中心に処理の難しい手製地雷が数多く埋設されているコロンビア(注1)、2012年からは、ベトナム戦争時に被弾したクラスター爆弾の3分の1が不発弾として残っているラオスを対象とした協力を行っており、今回のアンゴラの研修が3ヵ国目の協力となった。

アフリカ南西部に位置するアンゴラは、2002年の和平合意により、27年間に及んだ内戦が終結したが、カンボジア同様多くの地雷が残され、その範囲は、約125万平方キロメートルのアンゴラ国土のうち、実に1,985のコミュニティー(約1,000平方キロメートル以上)に広がっており、住民の安全を脅かしているだけでなく、開発を阻む原因にもなっている。この事態を重く見たアンゴラ政府は、日本政府にINADに対する技術協力を要請。JICAは組織改善の日本人短期専門家の派遣と、既にコロンビア、ラオスへの協力の経験を持つCMACによる南南協力(注2)とを組み合わせて、INADのキャパシティビルディングを実施することになった。

共に地雷の撲滅に向かって

シェムリアップ州のCMAC事務所にある地雷展示室を見学。中央がドド地雷除去部長

研修に参加したINADの一行は、まず、首都プノンペンにあるCMAC本部で地雷除去の枠組みや、地雷除去地の選定プロセス、機材、地雷犬、手作業などの地雷除去手法の効果的な組み合わせ方、調査の方法、情報システム・データ管理について講義を受けた後、プノンペンから車で約1時間半のコンポンチュナンにあるCMACの研修センターや、タイ国境に近いバッタンバン州にある、機材の維持管理を行う中央整備工場、また、各州の事務所の活動状況を視察し、実際の地雷除去現場も訪れた。

INAD側のリーダーを務めたマニュエル・ドド本部地雷除去部長は、「INADとCMACは、自国内の地雷を撲滅していくという共通の目的を持っている。CMACの経験と情報の共有は、後発の私たちINADにとって非常に有益だ」と話す。また「本で歴史を知る程度だったが、今回初めて来訪してみると、人々は温かく、敬意を払ってくれた」とカンボジアの印象を語った。

研修最終日には、INADの参加者から、INADでも導入していきたい手法や技術として、「地雷除去・調査を通じた土地解放(Land release)(注3)手法」「不発弾中の火薬のリサイクル」「地雷除去後と開発のリンク」「水中の地雷・不発弾の処理」など、具体的な意見が挙げられた。また、CMACでは、現場の除去員もパソコンを使えるといったマルチスキルを持っていること、異なる州事務所を訪問しても標準化された情報に基づいて業務が行われていることなどもINAD参加者には刺激となった。

「先生」としてではなく

バッタンバン州の地雷除去現場で、CMACの説明に耳を傾けるINADの研修員

今年2月、この南南協力の実施準備のために調査団の団長としてアンゴラを訪れたCMACのオム・プムロ副長官は、「最初にアンゴラとの南南協力と聞いたときにはうまくいくか正直不安も感じていた。しかし実施してみると、INADの参加者が非常に積極的で予想以上に有意義な議論もできた。われわれCMACは、教育者として訓練を受けているわけではないので、『先生』ではなく、これまでの経験を、同じく地雷・不発弾問題を抱える国として共有していきたい」と話した。

また、コロンビア、ラオス、今回のアンゴラと、CMACのすべての研修コースでコーディネーターを務めるCMACのウン・ラクスメイ国際関係担当チーフは、「先行の2カ国と比較してもINADは特に積極的で、技術的な質問やコメントが数多く出てきた」と手応えを感じていた。「JICAが橋渡しをしてくれたおかげで、世界の地雷・不発弾問題に悩む国とつながることができた。われわれの経験を同じような問題を抱える国と共有できるのはうれしい。新しい国を受け入れるたびに、初めは文化の違いで戸惑うこともあるが、こうした協力はCMACにとっても有益だと思う」と述べた。

アンゴラへの研修は今後2回予定されている。今年10月の第2回では、除去部隊長クラス、来年初頭の第3回では、本部の部長や幹部を対象とした研修を実施する計画だ。

先進国には存在しない、開発の阻害要因としての地雷

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CMACシェムリアップ州事務所の前で、研修修了証書とカンボジアのスカーフ(クロマー)を手にしたINADの研修員(CMAC、JICA関係者と共に)

通常援助を提供する側である先進国には、開発の阻害要因としての地雷は存在しない。現実問題として地雷に直面している途上国同士の南南協力は、共有される情報・知見が双方の国で実際に活用されているので説得力がある。また、CMAC職員は他国に経験を伝えることで、自信を持つようになっただけでなく、自身の能力も大きく向上している。今後、CMAC、INADの両組織が、この南南協力を通じてどのように変化していくのか、引き続きJICAは見守っていく。


(注1)コロンビアでは40年以上前から政府軍と非合法武装勢力との武力衝突が続いており、対人地雷が大量に使われてきたため、地雷・不発弾による被害者数がアフガニスタン、パキスタンについで世界第3位(2011年)と、非常に多い。現在も、ゲリラ組織などの活動が活発なため、本格的な地雷除去の実施が難しい状況にある。
(注2)途上国が別の開発途上国を支援すること。
(注3)地雷除去の効率を上げるため、地雷や不発弾汚染が疑われる土地すべての除去活動を行うのではなく、聞き取り調査を通じて地雷がないことが確認されたら土地を解放(使用が可能になる) 。疑いがある土地は、まず探知機などを使用した調査で地雷がないことを確認後に土地を解放し、最後に残った「確実に地雷が残っている土地」だけを対象に除去活動を行う手法。


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