海上の安全はわれわれが守る—ソマリア含む8ヵ国が海上犯罪取り締りを学ぶ

2014年7月22日

JICAが海上保安庁の協力を得て毎年実施している海上犯罪取り締り研修が、5月27日〜6月21日に実施された。初参加となるソマリア、パキスタンのほか、イエメン、ジブチ、スリランカ、フィリピン、ベトナム、マレーシアの8ヵ国から19人が参加した。

ソマリアの国家治安省、首相府海賊対策タスクフォースが初参加

海上保安試験研究センターで偽装パスポートの見分け方について学ぶ

この研修は、日本の海上保安分野の経験や技術を学び、各国の海上保安組織の海賊やテロ、密輸など海上犯罪の取り締り強化を目指すもの。マラッカ海峡での海賊事件急増を受け、2000年に東京で開かれた海賊対策国際会議のフォローアップとして2001年に始まった。

研修は当初、東南アジアの海賊被害に対処するため、マラッカ海峡周辺国のマレーシアやインドネシアなどの海上犯罪取り締りを担当する国の海上保安担当官らを対象に実施していた。しかしその後のソマリア海域での海賊事件の急増を受け、2008年からはイエメンやオマーンなどの中東諸国、2009年からはケニアやタンザニアなどのアフリカ諸国も参加している。

長く内戦が続いていたソマリアでは、2012年11月に21年ぶりに統一政府が樹立され、国づくりに向けて国際社会の支援が進んでいる。日本政府は2013年4月に二国間援助を再開することを決めた。これを受け、ソマリアの国家治安省および首相府で海賊対策を担当する3人が、初めて研修に参加することになった。ソマリアでは現在、海賊対策を含む海上保安分野にかかわる組織が複数存在するため、各組織の間で調整会合を開催し業務を行っている。研修員が所属するソマリア警察(国家治安省が監督)海上保安局は、海上保安の実施の中心を担うため新たに設置された部署である(2014年5月現在)。

捜査技術から乗船業務まで

横浜海上保安部で逮捕術の実習を受ける研修員

研修では、海上保安庁の組織や保有施設、幹部職員を養成する海上保安大学校の機能など、日本の海上保安分野の概要に加え、国際法、海賊問題の歴史や対策、テロ対策、薬物対策など海上犯罪取り締りの基礎知識、乗船実習や逮捕術、鑑識実習などの実践的な技術を学ぶ。

第七管区海上保安本部(北九州市)の講師陣からは、鑑識実習として、指紋採取や塗りつぶされた文字を識別する赤外線カメラなど捜査に必要な機材の取り扱いを、海上保安試験研究センター(東京都立川市)では偽装パスポートの見分け方などを学んだ。東京、横浜、千葉など首都圏から小笠原諸島、南鳥島、沖ノ鳥島などを管轄する第三管区(本部:神奈川県横浜市)では、乗船実習、立入検査の見学、逮捕術訓練実習などを行った。また、海上保安大学校(広島県呉市)では、海上保安庁幹部職員養成の概要説明に加え、各種事例の映像を見ながら、その事例が犯罪に該当するかどうかを研修員が議論する討論型の講義も行った。

国際社会の連携強化を目指す

横浜海上保安部を訪問

今回の研修について各国の参加者は、「日本の海上保安庁の機能やオペレーションには見習うべきところがたくさんあった。特にパトロール、情報共有、犯罪捜査に関する技術は、海上の安全確保のために大変参考になった」(国家治安省ソマリア警察 アブドゥルクルム・モハメッド・アブドゥラヒさん)、「乗船実習や立入検査の見学では、適切な検査の仕方を学ぶことができた」(マレーシア海上法令執行庁 ムハマド・サフィアン・エルディン・ビン・アブドゥラさん)と感想を述べた。

また、海上保安庁国際刑事課海賊対策室の林亮治課長補佐は、「今回の研修を通じ習得した知識や経験を自国での業務に生かすとともに、参加者の間で、また日本との間で構築したネットワークを、国境をまたぐ海上犯罪の取り締り強化に役立ててほしい」と、研修員たちの帰国後の活躍に期待を寄せた。

海賊問題をはじめとする海上犯罪の取り締りには、各国が相互に協力、連携することが不可欠だ。JICAは、日本の海上保安庁の知識と経験を生かしながら、今後も各国の取り組みを支援するとともに、国際的なネットワークの構築を支援していく。