アフリカの人材育成のための「修士課程およびインターンシッププログラム」が始動

2014年10月7日

2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で安倍晋三首相が発表した「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(ABEイニシアティブ)(注1)に基づき、JICAは「修士課程およびインターンシッププログラム」によって、2017年度まで4回に分けて900人の研修員を日本に受け入れる。その第一陣として、エチオピア、ケニア、コートジボワール、スーダン、タンザニア、南アフリカ、モザンビーク、ルワンダの8ヵ国から156人の研修員が、9月7日と15日に来日した。

このプログラムは、日本が初めて産学官共同で取り組む留学生受け入れ事業(注2)であり、アフリカの持続的な経済成長をけん引することが期待される優秀な若者に、日本の大学院での修士の取得と企業でのインターンシップの機会を提供する。アフリカの優先課題である産業人材育成を支援するとともに、日本の技術や経営を理解する人材を育成し、民間企業や各国政府内に人的ネットワークを構築することを目指している。研修員の所属先は、各国の政府機関が約半分、民間企業が約3割、大学などの教育関係者が2割弱となっている。また、44人が日本企業23社からの推薦を受けている。

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「激励会」にはアフリカ各国大使館、日本政府などからの来賓をはじめ、大学、企業の関係者も参加し、総勢365人が集まった。

日本とアフリカの友好関係の構築に尽力

「私たちを通じて日本の人々がアフリカを知る機会になれば」と話す研修員代表のワヒニャさん

来日した研修員が各大学に入学する前に、JICAは東京で「共通研修」を実施した。9月19日には、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で「激励会」を開催。アフリカ各国駐日大使館や日本政府をはじめ、研修員を受け入れる大学やインターンシップ実施予定の企業関係者も参加し、総勢365人がプログラムのスタートを祝った。

冒頭、日本政府を代表して中根一幸外務大臣政務官、民間を代表して一般社団法人日本経済団体連合会サブサハラ地域委員会の野路國夫委員長(株式会社小松製作所会長)、続いて逢沢一郎日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長、山際大志郎経済産業副大臣、赤池誠章文部科学大臣政務官があいさつに立ち、三原朝彦衆議院議員が各国の現地語も交えながら乾杯の音頭を取った。

懇談の時間に研修員は、来賓や企業・大学関係者と積極的に交流。国際大学の加藤竜太副学長は「わが校の学生の8割は各国政府機関からの派遣生を含む外国人留学生。今回、アフリカの学生が加わることで、世界の有望人材同士の人脈づくりの場になる」とプログラムへの期待を語る。国際大学は今回、13人の研修員を受け入れる。

ルワンダでオフショア開発事業を行うITベンチャー企業、レックスバートコミュニケーションズ株式会社の田中秀和代表取締役は「このプログラムを通じて、日本の文化や仕事に対する姿勢などを理解した人材が育つことを期待している」と言う。今回、ルワンダの研修員二人が同社の推薦を受けている。

「日本での生活を実りあるものにしてほしい」と研修員を激励する田中理事長

「激励会」の後半、研修員を代表してケニアのフィオナ・ワセラ・ワヒニャさんが「このプログラムを通じて、私たち研修員は日本とアフリカの友好関係の構築に尽力します。また私たちを通じて、日本の人々がアフリカを知る機会になれば幸いです」とあいさつした。ワヒニャさんは、ジョモ・ケニヤッタ農工大学でリサーチアシスタントを経験し、日本では岡山大学の環境生命科学研究科でケニア米の品種改良について研究する予定だ。

続いて、アフリカ各国大使館を代表してモザンビークのベルミロ・ジョゼ・マラテ大使が、日本の関係者にプログラム実施に対する謝辞を述べるとともに、研修員を激励した。最後にJICAの田中明彦理事長が閉会のあいさつに立ち、「このプログラムの革新性は、留学だけでなく、インターンシップも体験できるところにある。これまでに60以上の大学、100以上の企業に受け入れ先として登録いただき、日本国内もこのプログラムに大きな期待を持っている」と語り、研修員に対して「よく学んでほしい。ただし勉強に加えて、日本の文化に親しむ機会や、日本人との交流も積極的に行い、日本での生活を実りあるものにしてほしい」と呼びかけた。

意欲みなぎる研修員に期待

日本文化に関する講義を受ける研修員

「共通研修」で研修員は、基本的な日本語、日本の文化や社会についてだけでなく、日本企業のアフリカ進出の現状なども学んだ。加えて商社やメーカー、物流、小売業などの企業を訪問し、各社の事業内容を聞いたほか、工場の生産現場や配送センターを見学した。

「日本の企業1社の売り上げが自国の国家予算並みで、規模の大きさを実感した」「細やかで徹底した品質管理など、細部にわたる配慮に驚いた」などの声が研修員から挙がった。一方、訪問を受けた企業は「関心が多岐にわたって高く、非常に勤勉な学生たちだ」と印象を語った。

企業を訪問し、日本人社員の話を熱心に聞く研修員

研修を終えて、エチオピアの研修員は「多くの日本企業や日本の大学と積極的にネットワークを構築し、エチオピアに知識を移転したい」と熱い思いを語った。モザンビークの研修員は「日本企業のアフリカ進出には言葉の壁も大きい。今回の留学を通して日本語を習得し、自国への日本企業の呼び込みに貢献したい。また、日本の人々にポルトガル語を教えたい」と意気込む。

研修員は今後、日本全国の48大学、70の研究科の修士課程に入学し、約2年間学ぶ。主な研究分野は工学、経済・経営、農学、政治・公共政策、ICT(情報通信技術)などであり、夏休み中や修士課程修了時に2週間から半年間、日本企業でインターンシップを体験する。産学官共同での取り組みを最大限に生かすため、JICAはこれからも、大学や企業にプログラムへの参加を働きかけ、研修員が日本の優れた研究の成果や技術を修得するとともに、日本の産業界との関係を強化できるように支援していく。


(注1)African Business Education Initiative。TICAD Vで安倍首相が、5年間で1,000人のアフリカの若者に、日本の大学院などでの教育と日本企業でのインターンシップの機会を提供すると表明したもの。
(注2)外務省、文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、JICAが全体運営委員会を構成し、企画・実施している。