ブラジルの日系病院を拠点にした官民連携医療支援に向けて

2015年3月5日

ブラジルの医療分野支援に関する日本の官民連携がいよいよ始まる。その最初の取り組みとして、JICAは2月16日から、ブラジルの日系人医師や日系病院経営に携わる日系人を招いて日本の医療機関や医療機器関連企業などで最先端技術に触れる研修を実施した。

中南米の地域開発の拠点、日系社会

ブラジル・サンパウロ州の日系社会が運営している日伯友好病院

中南米地域は、近年の経済成長に伴い、医療分野の技術やサービスは向上してきているが、医師の技術不足や医療機器の未整備などにより、十分な医療サービスを受けられない人も少なくない。先進的な技術の導入による医療レベルの向上が求められているが、基礎的な医療の充実も必要とされているのが実状だ。

一方、中南米の中でもブラジルを中心とする日系社会では、多くの日系人が医療分野で活躍しており、ブラジルには約1万5,000人の日系人医師がいる。過去約40年にわたりJICAを通じた日本の研修で先進的な医療技術を身につけ、帰国後は診療、治療に当たるだけでなく、身につけた技術を他の医師にも伝えるなど、ブラジルの医療分野に貢献する日系人医師が多い。また、日系団体が経営する病院も多い。中南米では、日系社会は地域開発の拠点として国の経済や社会の発展に大きな役割を果たしており、日系人自身が日本の技術協力や民間企業の海外展開の基点となることが期待されている。

サンタクルス病院

今回の研修は、昨年8月に安倍晋三首相が中南米を訪問した際、ブラジルのサンパウロ市内で開かれた日系団体主催の歓迎会で、「日本と日系社会との絆をより太くしていく」と述べ、日系社会との関係強化と一層の支援を約束したことから実現した。具体的な支援策の一つとして日系病院との連携が掲げられ、その初の取り組みが、今回の研修の実施となった。日本が官民一体となって推進している国際医療展開の一環としても注目されている。

日系社会を通して日本の医療技術を発信

2015年2月16〜27日、JICAはブラジルの日系6病院(アマゾニア病院、サンタクルス病院、杉沢病院、日伯友好病院、ノーボアチバイア病院、パラナ病院)の院長と病院経営者ら12人を日本に招き、「日系医学」研修を実施した。研修では、ブラジルの日系病院関係者が、診断技術や治療技術、医療機器の操作技術など最新の医療技術に関する知識を修得することに加え、今後、官民連携の研修を推進するため、日本とブラジルの医療分野のネットワークを強化することを目的としている。日系人医師らは、独立行政法人国立がん研究センター中央病院や大学病院、東芝メディカルシステムズ株式会社や株式会社日立メディコなどの医療機器メーカーを訪問し、病院運営の実際や医療機器の紹介を受けた。

研修に参加した日伯友好病院の岡本照彦医師は、「世界のトップレベルの水準にある日本の医療技術や病院運営の視察ができ、大変参考になった」と述べ、日本の医療機器メーカーの、ブラジルへのさらなる進出に期待を示した。また、サンタクルス病院の北原貴代志医師は、「われわれの病院は日系なので、できるだけ日本製品を使いたい。そのためにも、日系社会からブラジル全国民に、日本の高度な医療技術を発信していきたい。今後は、日本・ブラジル両政府や、医師、大学などが連携して医療サービスの向上に取り組む必要がある」と語った。

【画像】

日立メディコのショールーム(日立メディカルフォーラム柏)で医療機器の説明を受ける日系人医師ら

医療連携セミナーでもネットワークを構築

ブラジル日系病院との連携をテーマに「国際医療展開におけるブラジル日系病院との連携セミナー」を開催

2月23日には、JICAは日ブラジル外交関係樹立120周年事業「国際医療展開におけるブラジル日系病院との連携セミナー」を開催。日本の病院関係者や大学、医療機器関連企業など130人が集まり、今後のブラジルへの事業進出の課題と日系社会との連携について意見を交わした。また、セミナーは、日系人医師らの所属する各病院の事業拡大に向けて、日本の大学や企業との密接なネットワークを構築する場にもなった。

JICAは、今回の研修の成果を中南米での民間連携事業につなげる可能性を検討し、現地で信頼と成功を得ている日系社会を通じて、日本企業の海外展開を後押ししていくとともに、医療技術の向上など、中南米の開発課題を解決する支援を行っていく。