「ABEイニシアティブ」の留学生が日本企業と交流——アフリカビジネスの水先案内人として

2015年4月10日

JICAはアフリカからの留学生と、アフリカでのビジネス展開に関心のある日本企業の情報交換や人脈づくりを推進するために、「アフリカビジネスネットワーキングフェア」を3月26日〜27日にJICA東京(東京都渋谷区)で開催した。このフェアは、日本企業がアフリカに進出する際、水先案内人となるアフリカ人材の育成を目的とする「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(通称:ABEイニシアティブ)」(注1)の一環として実施したものだ。

日本企業のアフリカ進出を後押し

企業のブースを訪れ、情報や意見を交換する留学生

アフリカ諸国は豊富な天然資源を背景に、安定した経済成長を続けている。日本企業もアフリカを資源の供給源としてだけでなく、今後の人口増加に伴い拡大する10億人市場として、高い関心を寄せている。一方で、アジアには1万5,874社の日本企業が現地法人化しているのに対して、アフリカでは168社に過ぎない(注2)。アフリカは物理的にも心情的にも、まだまだ遠いという現実がある。

日本企業のアフリカ進出には、基盤となる人材の確保が課題となっており、JICAはABEイニシアティブを通じて、日本の文化や企業風土を知る「日本通」の人材育成を支援することで日本企業のビジネスチャンスの拡大につなげ、アフリカの発展に寄与することを目指している。

フェアに参加した留学生は、その一期生で、エチオピア、ケニア、コートジボワール、スーダン、タンザニア、南アフリカ、モザンビーク、ルワンダの8ヵ国から、修士号取得のために2014年9月に来日した約150人。本国では政府機関の行政官や大学の研究員、会社員や起業家で、将来を嘱望されている若者たちだ。専門分野も工学、経済・経営、農業、環境、情報通信技術など多岐にわたる。

留学生の問題意識がビジネスの芽に

自国でのビジネスの可能性について発表する留学生代表

2日間にわたるフェアには、日本企業延べ100社以上が参加。会場のステージに各国の留学生代表が上がり、それぞれの国のビジネス環境や可能性、事業のアイデアなどを発表した。また個別に設けられた各社のブースには多くの留学生が集まり、盛んに情報や意見を交換した。

株式会社リコー(東京都中央区)のビジネスソリューション事業本部新興国事業センター事業企画グループリーダーの藤江陽成さんは、「それぞれの国を担うキーパーソンとなる若者に、リコーに興味を持ってもらいたい。それが将来のビジネスチャンスにもつながると思う」とフェア参加の理由を説明。すでにインターンの受け入れも決めており、「留学生は非常にポジティブで意欲を持っているという印象を受けた。インターンとしてわが社に来る留学生には、社員の刺激となってほしい」と期待を寄せた。

リコーのブースで留学生と個別に面談する藤江さん

株式会社前川製作所(東京都江東区)は、東アフリカでのビジネス展開を視野に入れ、昨年、南アフリカ共和国に事務所を設立した。取締役の楢原龍哉さんはフェアに参加した留学生について「アフリカビジネスの水先案内人になるべき人材という意味がよくわかった。彼らがアフリカでの人脈形成の手がかりになってくれる可能性は大きい」と語った。インターンシップについても、「熱意のある人であれば、ぜひ受け入れたい」と前向きだ。

「農業や環境、経済などを専門とする留学生が、わが社の事業に関心を持ってくれたのは非常に驚きだった」と語るのは、小学校の算数ソフトウェアの開発・販売を行っている株式会社さくら社(東京都千代田区)代表取締役社長の横山験也さん。「それぞれの国の教育事情を語る表情から、自分たちの国の教育を発展させたいという彼らの思いが伝わってきた。日本発の算数教育がアフリカでビジネスにつながると可能性を感じた」と言う。

アフリカの未来を支える人材たち

留学先の新潟では雪祭りやスキーも楽しんだというコロトゥムさん

日本で研修を受けたことをきっかけに現地で社員となったカリウキさん

「日本人はとても親切で謙虚。でも日本語は難しい」とブレッシングさん

留学生たちが寄せる日本企業への期待も大きい。コートジボワールのディアビ・コロトゥムさんは、自国で日本企業に勤めたことがきっかけで、日本への留学を決めた。現在は国際大学国際経営学研究科(新潟県)で経済学を学んでいる。「コートジボワールに進出している日本企業はわずか4社。日本企業のコートジボワールへの投資を増やすため、今回のフェアでは多くの企業と接触した」と語る。

ケニアのムテンペイ・カリウキさんは、現地にある廃棄物処理関係の日本企業の従業員。同社の推薦を受けてABEイニシアティブのプログラムに参加。現在は神戸情報大学院大学で廃棄物管理の研究に取り組んでいるが、夏休み中は日本の本社でインターン生となる。ケニアの首都ナイロビは、人口の急増に伴い廃棄物の量が増え、廃棄物処理施設の不備で大気汚染も深刻化している。同社はナイロビに廃棄物処理施設を建設、運営することを計画しており、カリウキさんはそのプロジェクトマネジャーとして期待されている。「日本企業とのパートナーシップを強化し、いずれはアフリカ諸国とのビジネスも活発化させたい」と意欲を見せる。

南アフリカのビラカジ・ブレッシングさんは、大阪大学工学研究科で工学デザインを学んでいる。金やプラチナ、ダイヤモンドなどの資源をそのまま輸出するのではなく、国内で製品として加工し付加価値を付けることで、自国の利益を大きくすることができるという思いからだ。「帰国後は、南アフリカだけでなくアフリカ全土に日本の新しい技術とイノベーションを伝えるパイオニアになりたい」と夢は大きい。

ABEイニシアティブの登録企業になると、将来、現地社員として雇用したい人材やビジネスパートナーとして期待している人材を、留学生の候補者として応募時点で推薦することができる。夏休み中や修士課程修了後にインターン生を受け入れ(注3)、人脈を強化することも可能だ。また今回のようなイベントに参加し、アフリカの現況把握や現地でのビジネス活動をサポートする人材の発掘などが期待できる。

9月には2期生が350人ほど来日の予定だ。登録企業は現在120社余りに上るが、JICAはインターン生の受け入れ先を拡大するため、企業の登録を受け付けている(下記リンクを参照)。また、JICAは今後もセミナーやイベントを開催し、留学生と日本企業のマッチングの機会を提供していく。

(注1)African Business Education Initiative。2013年に横浜市で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で日本政府が発表した政策の一つ。アフリカの産業発展をけん引する優秀な人材を育成するために、2014年から5年間で計1,000人の留学生を受け入れ、日本の大学院での修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会を提供するもの。このプログラムではそのうち約900人を受け入れる。
(注2)経済産業省「海外事業活動基本調査」(2013年度)による。
(注3)夏休み中は留学生全員がインターン生となり、修士課程修了後は希望者のみとなる。