ナミビア政府の予算策定を支援

−日本財務省の手法を応用して−

2015年7月8日

アフリカ南西部に位置するナミビアで、JICAは2013年4月から2年3ヵ月間にわたって、同国財務省の予算査定に関する能力強化を目指して「ナミビア財務省予算策定能力強化プロジェクト」を実施してきた。プロジェクトは6月に終了、近年、国際協力の分野で重要性が高まっている「公共財政管理」の中でも、一国の予算策定を支援するという、JICA初の事例となった。

途上国における公共財政管理の重要性

首都ウィントフックにある財務省

公共財政管理とは、公的セクターの資金管理全般(歳入出)について、「財政規律」「効率的な資源の配分」「資金の効率的・効果的な利用」の観点から、国の予算制度や仕組みを適切に運営・管理していく取り組みのことだ。開発途上国が開発計画を進めていく上では、適切で持続可能な予算策定・予算執行が不可欠であり、効果的で効率的な予算査定・配分により、その国における円滑な開発が実現し、中長期的な発展が可能となる。

これまでJICAが実施した公共財政管理分野に関する協力は、税務・税関行政や内部監査、公共投資計画などに関する能力強化が主だったが、今回はナミビアの国家予算策定という、公共財政管理の屋台骨ともいえる大仕事への支援となった。

ナミビア財務省の予算査定能力を強化

浦チーフアドバイザー(ナミビア財務省プロジェクトオフィスにて)

通常、国の予算編成は、財政計画、予算制定、国会審議・承認、予算執行、報告、監査・評価など一連のサイクルに沿って編成される。しかしナミビア財務省には、各省から上がってくる予算計画に対する明確な査定基準がなく、過去のデータを参照して翌年度の予算に反映させる仕組みもなかったため、その業務フローの改善と査定基準の導入が望まれていた。

そのような背景から、2007年10月に同国のヒフィケプニェ・ポハンバ大統領が来日した際、公共財政管理に関する専門家派遣が要請された。それを受けてJICAは、同国財務省との対話を通じて、日本に求められている支援内容を検討。予算管理能力、特に財務省の予算査定能力向上に関する技術支援の必要性から、日本財務省の協力を得て、チーフアドバイザーとして浦祐一氏(財務省より出向)、業務調整/人材育成の専門家として白田貴史氏を派遣し、2013年4月に「ナミビア財務省予算策定能力強化プロジェクト」を立ち上げた。

プロジェクトでは予算要求と査定業務の効率を向上させるため、日本財務省の予算査定に関する基本的な概念を応用したエクセル形式の「予算詳細要求フォーム」(以下、フォーム)を導入。これまでとは異なる予算要求の進め方に、当初はナミビア財務省カウンターパート(注)からも戸惑いの声が上がったが、粘り強くフォームの効果を説いた。

「できることから改善し、その効果をカウンターパートが理解し始めたころから、信頼関係ができてきた。カウンターパートを日本に招いて、研修を実施したことも相互理解に大きく役立った」と浦チーフアドバイザーは振り返る。また計算を自動化して手入力を少なくすることで人為的な入力ミスや計算ミスを減らすとともに、プルダウンメニューなどの活用による省力化を目的としたさまざまな工夫を取り入れていった。

そして2015年度予算編成では、プロジェクトで開発したフォームをナミビア政府の全35省庁が活用して予算要求を行い、査定を踏まえた予算策定が実現した。2016年度の予算編成にも継続して活用されている。

35省庁が使用するフォームの維持管理・運営が課題

セミナーには関係者約160人が参加した(正面左が白田専門家)

2度の予算編成を経て、プロジェクトで導入したフォームは、財務省関係者だけではなく、各省庁の関係者からも「予算要求業務の効率化につながった」と高い評価を受けた。

プロジェクト終了を控えた6月15日〜22日、改善された予算査定手続きの定着と効率的な予算管理の実現を目指して、35省庁の予算要求担当者と財務省の予算策定担当者を対象としたセミナーを実施。約160人が参加し、フォームの維持管理と運用に関する理解を深めた。

セミナーでフォームの重要性について説明する財務省カウンターパート

セミナー参加者は「昨年からフォームが導入され、使い慣れてきたところだ」「今回のワークショップでさらに理解が深まった」などと感想を述べた。財務省カウンターパートは「プロジェクトが終了し、今後はわれわれの力でフォームを維持管理していかなければならない。不安はあるがチャレンジしていきたい」と意気込む。

予算策定の業務フローが改善されたナミビアでは、JICAの支援で得た知識や経験を糧として、効率的で効果的な公共財政管理を実現することが期待される。それによって限られた予算が適切に配分されることで開発がスムーズに進み、さらなる発展につながっていく。

(注)国際協力の現場で技術移転や政策アドバイスなどの対象となる組織、または行政官や技術者のこと。