【Featuring Africa】サブサハラ・アフリカの衛生改善に向けた挑戦

−人々の生活習慣をどのように変え、下痢症のないコミュニティーをつくるか−

2013年6月6日

「3人に2人がトイレへのアクセスがない」。これがサブサハラ・アフリカの衛生状況を表すデータだ。2000年の国連総会で定められたミレニアム開発目標(MDGs)(注)では、「2015年までに安全な水と基礎的な衛生施設(トイレ)にアクセスできない人口の割合を半減させる」という指標を掲げた。「安全な水」については2010年に達成されたが、基礎的な衛生施設へのアクセスがない人口の割合は、2000年の44パーセントに対し、2010年時点では37パーセントであり、2015年までの目標の達成は非常に困難といわれている。中でもサブサハラ・アフリカでは70パーセント、つまり3人に2人がトイレへのアクセスがない状況であり、その深刻さは際立っている。劣悪な衛生環境は、下痢症の蔓延(まんえん)、それによる5歳以下の子どもの死亡率増加といった問題を引き起こすため、その解決に向けた対策が急務だ。

建設したトイレを住民が納得して使うことで定着につなげる

このような状況を打破する取り組みの一つとして、JICAはトイレ建設の促進に特化した初の技術協力プロジェクト「タンバクンダ、ケドゥグ、マタム州村落衛生改善プロジェクト」をセネガルで立ち上げた。セネガルにおいても基礎的な衛生施設へのアクセスがない人口の割合は71パーセントと高く(2010年)、これを2015年までに37パーセントに引き下げるというMDGsの目標達成のためには、政府および援助機関が一丸となった衛生改善の促進が不可欠だ。

プロジェクトで建設した二層式トイレ。便槽が二つあるため、一方がいっぱいになっても、継続して使用できる。煙突式の通風孔があり、におわず、ハエも発生しない。頑丈なドアでプライバシーも保たれる

ところが、その改善は実際には容易ではない。援助機関がトイレを建設しても、住民がトイレを利用しない、維持管理しないという事例も少なくないのだ。これまで野外で排泄をしていた住民がトイレで排泄するようになるということは、住民にとって生活習慣の大きな変化を意味する。そのため、住民自身がその必要性と利便性を理解し、行動を変容させることが重要となる。そこで本プロジェクトではCommunity-led Total Sanitation(CLTS)という南アジアで生まれてアフリカにも広がっている手法を採用している。外部からの物理的な支援は行わず、コミュニティーの住民自身が、野外排泄がもたらす環境や健康への影響を理解し、トイレで排泄する重要性を認識するよう促し、住民同士で支え合い、またチェックし合いながら、トイレの建設と野外排泄の撲滅を目指していくものだ。

すでに放棄された伝統的なトイレ。穴を掘って材木で覆い、土で床を塗り固めている

また、一時的に野外排泄がなくなっても、時間が経過すれば一部の住民が再び野外排泄に戻る恐れがある。したがって、このプロジェクトでは、野外排泄に後退することのないよう、さらなるステップアップを目指している。

CLTSでは、コミュニティーが独力でトイレを建設するため、穴を掘りその周りを木の枝などで囲むといった原始的なトイレにとどまるケースが多い。こうしたトイレでは、においやハエの発生がひどく、住民が使いたくなくなるのは当然だ。このため、野外排泄の撲滅に至ったコミュニティーに対して、ソーシャル・マーケティングという手法を用い、衛生的なトイレの意義を再度理解してもらいながら、より快適で使いやすいトイレ(例えば、煙突式の通風口を設置したり、少量の水を流したりしてにおいやハエの発生を抑えるトイレ)を宣伝し、こうしたトイレへのステップアップを促す支援も始めている。多くの援助機関では、住民が野外排泄の問題やトイレの意義を理解しない中でトイレ建設を進めており、結果として使われなくなるトイレも多い。そのような中で、JICAのこのアプローチは、衛生改善を着実に進めるものとして、セネガル政府の期待や他援助機関の注目度は高い。

安全な水と衛生を組み合わせたアプローチを推進

ある地域で安全な水へのアクセスが改善されたとしても、野外排泄により病原菌が川や井戸に流れ込んでしまうと、「安全な水」ではなくなってしまう。一方で、安全な水が得られるようになれば、それを用いて手洗いなどの衛生行動の改善につなげ、一層の健康増進を図ることができる。このように、安全な水の提供と衛生改善(トイレ普及や手洗いなどの衛生行動の啓発)は切っても切れない関係にあり、両方を組み合わせて行うことが重要となる。

2008年の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で、日本政府は650万人に対して安全な水を提供するという目標を掲げ、5年間で達成した。2013年6月のTICAD Vでは、「安全な水」と「衛生」を組み合わせた形で「1,000万人に対する安全な水へのアクセスおよび衛生改善」が支援策として打ち出された。JICAとしても、これまで実績と経験が豊富な「安全な水」に関する協力に、「衛生」に関する協力を組み合わせたアプローチを積極的に進めていく。


(注)貧困削減、教育、ジェンダー平等、母子保健、感染症、環境などについて、2015年までに達成すべき八つの目標。

【TICAD Vの開催に合わせ、アフリカの開発課題、事業の最新動向、援助の在り方についての分析など、アフリカをシリーズで特集しています】