農産加工団地の稼働に向けて(パレスチナ)

−「平和と繁栄の回廊」実現に向けた大きな一歩−

2013年7月26日

ヨルダン川西岸に位置するジェリコ

7月10日、パレスチナのヨルダン川西岸地区に日本の支援で整備されたジェリコ農産加工団地(Jericho Agro-Industrial Park:以下JAIP)への入居第一号となる企業との契約が実現した。JAIPは、日本が地域の安定を目指し、2006年7月に提唱した「平和と繁栄の回廊」構想の中核プロジェクトであり、入居第一号企業との契約は、回廊の実現につながる第一歩といえる。

回廊構想実現に向けたJICAの取り組み

ジェリコは、パレスチナのヨルダン川西岸地区に位置し、ヨルダンへのアクセスも良い。その歴史は、今から約1万年前までさかのぼり、ヘロデ王が住んでいた冬の宮殿遺跡や、イエス・キリストが40日間修行したとされる「誘惑の山」など、豊かな観光資源がある。わき水に恵まれる自然豊かな土地で、農業が基幹産業だ。

JICAは「平和と繁栄の回廊」構想を受け、ジェリコ地域の開発のための調査「ジェリコ地域開発計画調査」(注)を2006年に実施。この調査では参加型計画アプローチを採用し、パレスチナ自治政府、ジェリコ市、JICAなどの関係者間でグループ討議を50回近く行い、現地のニーズを丁寧にくみ取りつつ、ジェリコ地域の総合的な開発計画を策定した。

太陽光パネルの整備(JAIP、2012年)

この地域総合開発調査の結果を踏まえ、JICAは地域の持続的な経済開発のために農産業が主導的な役割を果たせるよう、JAIP設置を支援してきた。JAIPは、ジェリコと周辺のヨルダン渓谷を中心とした地域で生産が盛んな農作物を加工し、付加価値を付けた上で、隣国ヨルダン経由などで輸出、あるいはパレスチナ内に出荷することを目指したものである。2007年から2009年に事業化に向けた調査を実施し、JAIPのインフラ整備詳細計画を策定した。現在、土地造成、太陽光発電システム、給水・貯水タンク、下水処理施設が整備されている。さらに、2010年からはパレスチナの工業団地管理・監督機関である、パレスチナ工業団地フリーゾーン庁(PIEFZA)の職員の育成を行い、ハード、ソフト両方の側面から、JAIP開設の促進に努めてきた。

中東和平に向けて

JAIPフェーズ1完成予想図

イスラエルとパレスチナの関係、中東和平は、国境の画定、難民、エルサレムの地位など、時間の経過とともに複雑化している。このような情勢下で、日本はパレスチナ側関係者の育成や、複数国との協議を積み重ね、関係者と信頼関係を築きながら「平和と繁栄の回廊」構想具現化のための努力を継続してきた。オールジャパンの一員としてJICAもその一翼を担っている。

今回のJAIPへの入居第一号となったパレスチナの企業は、ジェリコを中心とした地元の農家の生産品を使って、冷凍食品やドライフルーツを生産する予定だ。今後、工場の建設や機器の据え付けが行われ、新規に雇用される約30人のスタッフにより操業が開始される。これは「平和と繁栄の回廊」実現に向けた大きな一歩であり、JICAは引き続き、日本の政策の具現化、中東和平という大きな国際的課題への貢献につながる支援を継続していく。

(注)(1)社会・コミュニティー強化プログラム(2)農業開発、農産加工・流通プログラム(3)観光開発、都市環境整備プログラムを立案し、(2)の中で農産加工・物流サービスの集合的立地を提案した。現在その他のプログラムも具現化されており、「官民連携による持続可能な観光振興プロジェクト(フェーズ2)」「ヨルダン渓谷地域高付加価値型農業普及改善プロジェクト」などを実施中。