ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進

−平等な社会の実現に向けて−

2014年2月25日

3月8日は「国際女性の日」である。1908年の同日に、米国で女性労働者が参政権を求めてデモを行ったことを受け、第1回世界女性会議が開催された1975年に、国連がこの日を「国際女性の日」と制定した。日本ではあまりなじみがないが、世界の多くの国では、女性に対する差別や暴力の撤廃や、男性と同等な開発への参加の実現に向けた、さまざまなイベントが開催される。女性の日ごろの労働に感謝し、「男性から女性へプレゼントを贈る特別な日」となっている国もあるようだ。

なぜ「国際女性の日」なのか

モザンビークの若い母親。サハラ砂漠以南のアフリカでは、いまだに周産期に亡くなる女性が多い(撮影:谷本美加)

ジェンダー平等が叫ばれて久しいが、その達成にはまだまだ長い道のりがある。

ジェンダー平等とは、男性と女性が同じになることを目指すものではなく、人生や生活において、さまざまな機会が性別にかかわらず平等に与えられ、女性と男性が同様に自己実現の機会を得られるような社会の実現を目指すものである。しかしながら、現状では女性を不利な状況に置く差別的な慣習や政策・制度が世界的に存在しており、単に男女を同等に扱うだけでは、ジェンダー平等を達成することはできない。

このため、特に女性の人権やエンパワーメントに焦点を当て、女性に対する差別の撤廃と、女性が持つ能力を十分に発揮できる環境の整備に向け、国際社会が一丸となって取り組むことが不可欠なのである。

【教育面における格差】
初等教育におけるジェンダー格差を男児100人に対する女児の就学数で見ると、世界的には、1999年の91人から、2010年には97人へと、近年大幅に改善した。東南アジアの99人(2011年)など、ほぼジェンダー格差が是正された地域もあるが、その一方で、例えばサハラ以南アフリカや西アジアでは、93人(2011年)と、格差が残る国や地域は多い。中等教育になると、この格差はさらに大きくなる。このような就学機会の格差も影響し、世界の非識字人口の3分の2を女性が占めている現状がある。

【保健・医療面における課題】
開発途上国では、周産期(出産前後の時期)に命を落とす妊産婦も依然多い。2010年には世界で28万7,000人が、妊娠・出産期または出産後の6週間以内に、出血や妊娠性高血圧症候群などの合併症を伴って死亡したと推定されるが、そのうちサハラ以南アフリカ(56パーセント)と南アジア(29パーセント)の2地域が、全体の85パーセントを占めている。世界保健機関(WHO)の報告によると、これらの多くのケースは、出産時に熟練医療従事者が立ち会い、適切な機材と用具があれば防ぐことが可能なものとされている。

【女性の置かれている経済状況】
経済的な側面でも、女性はより過酷な現状に直面している。家事や育児、農作業等の家族労働など、直接現金収入に結びつかない労働を女性がより多く担っていること、女性のほうが雇用の機会が制限されていること、同じ労働をしても、女性は男性より賃金を低く設定されていることなどから、世界的に、女性の収入は男性の収入よりも低い傾向がある。世界の貧困層の7割が女性という、「貧困の女性化」の傾向も顕著になっている。

【女性に対する暴力】
「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関」(UN-Women)によると、世界の女性の約35パーセントが、親しいパートナーまたはそれ以外の人による身体的・性的暴力を受けた経験を持っている。国によっては、約70パーセントの女性が、パートナーによる身体的・性的暴力を経験しているという報告もある。また、紛争下や自然災害発生時には、女性に対する性的暴力を含む暴力が増える傾向にあることも、世界的に報告されている。

グローバル化が進展し国際的な人の動きが活発になる中、社会的、経済的に弱い立場にある人々を強制的な手段で移動させ、売春や強制労働などをさせて搾取することを目的とした人身取引も増加している。人身取引は著しい人権侵害であり、暴力の一種であるが、その被害者の大半は女性である。

ジェンダー平等に向けたJICAの支援

マダガスカルの稲作プロジェクトでは、農家向けの研修に夫婦そろっての参加を促した

このような格差、課題が存在する中、JICAが目指す「すべての人が恩恵を受けるインクルーシブな開発」を実現する上で、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進は不可欠である。同時に、人口の約半数を占める女性がその能力を十分に発揮できる環境を整えることは、生産性の向上や社会全体の活性化にもつながり、成長を支える大きな力となることが期待できる。「開発効果の向上」という観点からも、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは不可欠であるといえる。

そこで、JICAでは、ジェンダー平等や女性のエンパワーメントを推進するための行政能力の向上、女子教育や母子保健の推進、女性の起業家育成、人身取引や暴力などによる被害を受けた女性の保護や対策強化などに取り組んでいる。また、その一環として、1996年から外部の専門家を招いて懇談会を開催し、ジェンダー平等を推進していくための助言を得ている。

2月3日、JICAは横浜市と共に日本・アフリカビジネスウーマン交流シンポジウムを開催。JICAの研修で来日中のアフリカの女性起業家も参加した

2015年以降の「ポスト・ミレニアム開発目標」に関する議論においても、「女児と女性の能力強化とジェンダー平等の実現」が目標案の一つとして挙がっている。

安倍晋三首相は、2013年9月の第68回国連総会で、女性の社会進出を進めることとその能力開発の必要性を説き、「女性が輝く社会の実現」を日本が主導していくことを国際社会に公約した。これを受け日本政府は、(1)女性の社会進出推進と能力強化(経済的・社会的エンパワーメント)、(2)女性の保健医療分野の取り組み強化、(3)平和と安全保障分野における女性の参画と保護、の三つを重点分野として定めた。

JICAも、性別にかかわらず一人ひとりの人権が尊重され、能力を発揮することができる平等な社会の実現に向け、今後も積極的に支援を行っていく。