【不定期シリーズ】J-menに聞く(JICA筑波で働く人たち)  市民参加協力調整員 長野 直子 さん

【写真】長野 直子 さん市民参加協力調整員
長野 直子 さん

今回は、長野直子さんにお話を伺いました。所属する研修業務・市民参加協力課は、よく知られているところではJICAボランティアである青年海外協力隊の募集や広報に関わる業務も担当している部署です。

市民参加協力事業調整員の仕事

「出前講座」で研修員とともに学校訪問(東茨城郡城里町立石塚小学校)

JICAは、「国際協力を日本の文化に」を理念として市民参加協力事業に取り組んでおり、その一つである開発教育支援事業を長野さんは担当しています。

「JICA事業の一つである市民参加協力事業は、国際協力に市民の皆さんが参加するきっかけを作る仕事と言えます。中でも、JICA筑波の開発教育支援事業では、学校や社会教育の場で行われる開発教育・国際理解教育を通じて、より多くの人が、開発途上国の現状や課題について知り、それらの課題が私たちの毎日の暮らしに密接につながっていることに気づき、理解し、さらには自らの行動に繋げていくことをねらいとしています。」

JICA筑波では、県内の小・中・高校生や、大学生、一般市民の方々を対象に、各種プログラムを実施しています。昨年度だけでも、約40回の出前講座や20回を超えるセンター訪問受け入れ、ほかにも「高校生国際協力実体験プログラム」「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」、また「教師海外研修」「開発教育指導者研修」などを行いました。

マラウイ共和国での教師海外研修

マラウイ教師海外研修(チンゴンベ中等学校)

活動は、つくば市のみならず、茨城県、さらには世界へも広がります。

JICAの「教師海外研修」は、開発教育・国際理解教育に取り組む教員が、実際に開発途上国を訪問することにより、開発途上国がおかれている現状や国際協力の現場、開発途上国と日本との関係に対する理解を深め、その成果を、学校現場での教育活動に還元していくためのプログラムです。

長野さんは、昨年度はガーナ、今年度はマラウイ共和国(アフリカ東南部)での教師海外研修に同行し、研修をサポートしました。この秋、マラウイ研修に参加した5名の先生方が、県内各地で「マラウイ授業(研修から生まれた授業実践)」として成果を展開する予定です。

賀川豊彦を通して学んだ「救貧・防貧・福利」

ごみ拾い活動をするHOPE学生ボランティア。(フィリピン・ケソン市サンロケ地区)

大学では、文学部教育学科で教育学を専攻していました。
「研究のテーマとしたのは、賀川豊彦の農村教育・農民教育思想でした。(東北農民の救済、生協の発起など社会活動家、政治家、教育者として幅広く活動)この研究から、貧困からの救済である『救貧』、貧困に陥らないための『防貧』、そして人々の生活向上『福利』という思想を学びました。」

「大学2年の時にアメリカでホームステイをしたことはすばらしい経験でした。でも、次はアジアへ行ってみたいと思いました。フィリピンに留学した先輩が身近にいて話を聞いているうちに、フィリピンの教育や社会について学びたいと思うようになりました」

大学卒業後、フィリピン大学大学院で地域開発について学びながら、長野さんは精力的に活動を広げていきます。その頃出会ったロータリークラブやNGO団体HOPEワールドワイドでのボランティア活動は、その後の長野さんの国際協力活動の核、さらにはライフワークとなっていきました。

フィリピンでの体験

『養女(隣の女の子)を学校に行かせたい』と話すおばさん(フィリピン・ケソン市パヤタス地区、通称スモーキーバレー)

「大学の実習やボランティアで、貧困層居住区を訪問する機会があり、ケソン市北部にあるパヤタス地区もそのひとつでした。パヤタス地区一帯は「ごみの山」となっており、10万人位の人々が生活していました。驚いたのは、みんな明るいんですよ。バラックで、ごみの缶を拾ってきては売るような生活をしているのに」
「そんな生活をしているおばさんに『今、何が必要ですか』と聞いた時、その答えにさらにびっくりさせられました。その人は、『隣家の女の子を引き取って育てているが、その子を学校に行かせたい。誰か、学費を出してくれる人はいないだろうか』と言いました。自分の生活も大変なのに、他人を養女にして、しかも自分のことより先にその子の援助をお願いする。ごみの山に暮らし、日々の生活にも事欠く中で、なぜこのような豊かな心が持てるのだろう?衝撃的な会話でした」

帰国後、長野さんは英語教師として、フィリピンでの体験を交えながら、国際理解や国際協力について、生徒たちに伝えていきました。そうする中で、だんだん自分の体験や国際協力について、もっと積極的に関わっていきたい、今までボランティアでしていたことを仕事にしてみたいと思い始めました。

JICA筑波で思いの実現へ

「国際協力というのは特別なものではなくて、自分の生活に密着した身近なものだと考えています。」

「教育現場では、グローバルな人材育成の一環として、国際協力やJICA事業について取り上げる機会があります。JICAの中でも、教育現場で国際理解教育に活用していただけるような素材の整備を進めています。この需要と供給がうまく合い、次世代が国際協力について自然に学んでいけるような橋渡しをしていけるといいな、と思っています。」

調整員としての仕事は息をつく暇もありません。でも、
「少しずつ、進んでいるかな」
地道な活動を通して、今、長野さんはそう感じています。

インタビュー後記

イベントや教師海外研修旅行に向けて忙しい時に、予定時間を超えるインタビューにも関わらず言葉を丁寧に選びながら答えてくれた長野さん。フィリピン時代の記録が、写真とともに丁寧な筆跡で残されている様子などにも、何事にも手を抜かずに一生懸命取り組む姿勢を感じました。
話を伺いながら、次世代にも着実に広がっていく国際協力の輪が見えるような気がしました。