子どもにとって大切なこと

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シリア 元青年海外協力隊員
中嶋僚子

幼稚園教諭として2005年7月から2年間シリアへ派遣されていた中嶋さんにお話を伺いました。中嶋さんは、保育者の資格も養成機関もないシリアの幼児教育の状況を改善するため、現地で活動をしてきました。その中で気付いた本当に「子どもにとって大切なこと」とは何だったのでしょうか。

“助け合うのがイスラムの教えよ”と私の同僚の先生はよく口にしていました。困った人がいたらすぐに声をかける、シリアはそんな親切な人が多い国です。そして何よりも家族を愛し、家族との時間を大切にする人々です。

そんなすてきなシリアですが、幼稚園教育には問題があります。保育者養成機関や資格制度が整っておらず、保育の専門知識や技術が不十分な状態なのです。
配属先の幼稚園では、知識や宗教を指導することが保育者の役割と考えられ、文字や数字、イスラム教の聖典コーランの暗唱が繰り返されています。毎日宿題も出され、幼稚園は勉強の場。教室には玩具も絵本も無く、授業以外は決まった姿勢で待たされることになってしまいます。これでは子どもの成長に合った園生活ではありません。子どもには遊びの体験が大切です。体験の中から、人との関わり方、生活習慣、考える力等、文字や数以外にも多くのことを学ぶのです。保育者の役割は物を教えることだけではなく、こうした体験の学びの環境を整えて、子どもの自主性を伸ばすことだという事を伝えていきたいと考えて、保育者対象の講習会開催や教材作成などの活動に取り組みました。

しかし、豊かな人間形成に重要な場である幼稚園が問題だらけなのに、シリアの人々の人柄が素晴らしいのは何故なのでしょう。その訳はシリア人の家庭におじゃまするとよく分かります。シリアの大人たちの子どもへの接し方は実にメリハリがあります。十分に愛情を表現しながらも、いけないと思ったことは強く叱りつけます。叱るときに手がでる事が多いのは問題と感じますが、それを指摘すると、暴力への反省はしながらも、叱りつける基準は間違っていない、と皆自信を持って子どもに接している事が分かります。
人の気持ちを思いやること、生活習慣、イスラムの教え、すべてを大人一人ひとりが生活の中でしっかり子ども達に伝えているのです。

日本においての子育て状況を振り返ると、他の指摘や多くの情報によって、“この言い方は子どもにとって良くないのかもしれない”と、子どもへの対応をころころ変えてしまう大人の姿が見られるように感じます。シリアの大人たちが子どもに接する姿に触れ、大人が自信を持って物の善し悪しを子どもたちへ伝えることの大切さを改めて感じました。

今後も子育て支援に関わっていく中で、保護者の方々の不安や悩みを和らげ、自信を持って楽しく子育てができるような手助けをしていけたらいいなと考えています。

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勉強机が敷きつめられた教室

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ペットボトルなどの廃材を利用した玩具作り。

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保育室改装後、遊びを取り入れた保育を実践

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ラマダン中の日没後、家族揃って豪華な食事

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モスクでは女性はベールで全身の肌を隠さなければなりません。