世界と学校をつなぐ〜国際都市・茨城を目指して〜

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守谷市立御所が丘中学校 教諭
西尾 直美

現職教員参加制度により青年海外協力隊に参加し、ドミニカ共和国で小学校教諭として活動。帰国後は、教育現場で国際理解教育を実践し、もっと多くの教員に青年海外協力隊に参加して欲しいと、現職参加教員ネットワークを立ち上げた西尾先生。そんな先生が受けた現地教師からの衝撃の言葉とは。

教育の原点

 「私たちは貧しいけれど、日本にはない大切なものをもっています。
  それは、たくさんの愛。
  もっと純粋に、思いを込めて、子どもたちを愛してあげないといけません。
  それが、日本に足りないものだと思います 」

 現職教員参加制度により青年海外協力隊員としてドミニカ共和国で活動し、帰国して早2年。日本の教育現場に復帰して、一時も忘れたことのないこの言葉。ドミニカ共和国の小学校で、私と一緒に活動してきたドミニカ共和国人女性教師の一言。JICA研修生として来日した彼女は、この言葉のあとこう付け加えた。

 「将来ドミニカ共和国が豊かになって、私たちの大切なもの(たくさんの愛)が失われてしまうなら、私は、今の貧しいままがいい」

 私は、教育の原点をドミニカ共和国から学んだ。

「先生は、変わった」・・・ある保護者の声

 「厳しい先生、こわい先生」・・・ドミニカ共和国に赴任前の教え子の私に対する印象である。帰国後の生徒達の印象も、おそらくそう変わってはいないはずだ。でも、今はよく生徒が私に声をかけてくる。時には、自分の身のうちを涙ながらに相談しにくる。つい先日は、愛すべき3年生と感動的な卒業式を挙げることができた。毎日、卒業生から愉快なメールがくる。

 私の教師としての心構えが変わっていた。ドミニカで学んだ「愛情のかけ方」である。聞けば母曰く、以前の日本の大人も同様であったという。それは、「手はかけないが、気をかける」こと。帰国後の私は、生徒が何かにつまずいた時や困難にぶつかった時、じっと見つめて待つことができるようになっていた。今の日本の、早期対応・早期指導という風潮からは逆行することなのかも知れない。たしかに瞬時に指導し援助することで平穏無事な環境は整うかもしれない。しかし、子どもの成長を願う時、子どもが自分で痛みや苦しみを感じ、乗り越えるという経験をさせることも必要なのだ。子どもが自分で(あるいは助けを借りてでも)立ち向かうことができたとき、一緒に心から喜ぶことができるようになった。

 教育とは、お金やモノで手をかけるのではなく、子どもが「する」ことを気にかけて見ていてあげること。本当に必要なときに手を貸してあげること。子どもが成し遂げたことを心から喜んであげること。貧しい生活を送り、十分な教育も受けていないドミニカ共和国の大人達から学んだ、教育技術である。

私が考える国際理解教育

 私が協力隊の経験を、生徒や地域の方々にお話しする時のコンセプトは、「『開発途上国の人々はかわいそう』という概念を崩す」ことである。「途上国の人々に負けないで自分も頑張っていこうと思う」という類の感想ばかりの授業は、失敗であると思っている。ある中学生が「ドミニカ共和国の子ども達の方が遊び方がうまいと言われて、なんだか複雑な気持ちになった」という感想を寄せてくれた。大成功である。彼は将来、途上国と言われる国にそれを確かめに訪れ、きっと途上国の人々から自分を高める「何か」を学ぶであろう。

 私たち現職参加教員が教育に還元できることと言えば、国際理解や国際貢献に大切な精神は、私たちが「援助」しようとする気持ちではなく、「仲よく」なる心を抱くことではないだろうか。かわいそうという同情からは、友好関係は築けない。大切な仲間だから、友人だから、困っていたら助け合うのは当然という、人として大切な心を、国際的な教材を用いて教育する手法が国際理解教育だと考えている。

現職参加教員ネットワーク

 2008年3月16日、第1回の現職参加教員の会合が行われた。茨城県協力隊OV会に登録している協力隊経験教師をはじめ、これから教師を目指そうとしている元隊員や国際協力関係の道に進もうと志を熱くする方々の集まりである。現職参加教員ネットワーク(仮称)として、今後、私たちの経験をさらに教育現場で活用してもらうことを目的として立ち上がったグループである。まだまだ試行段階ではあるが、私個人としては、このネットワークにより、多くの先生方が気軽に諸外国事情の教材を道徳や特別活動などの授業に取り入れていただき(情報発信)、協力隊参加教員が教育還元の方法を模索し(情報共有)、さらに多くの現職参加教員を輩出していく(人材育成)という夢を抱いている。JICA筑波での出前出張講座などに私たちは積極的に参加しているが、協力隊経験教師達が自らチームを組んで動き出したこのネットワークの今後の動向も注目していただきたい。

 教師人生10年目を迎えようとしていた時、「私はこの仕事をこれからも続けるのなら、他の国の子ども達がどのような教育を受けているのか知りたい」と、ある日ふと思った。しかし、この思いは私をとても強く突き動かした。そのような時、現職参加教員制度を知り、気付いたらドミニカ共和国にいた。

 そして帰国後、私は今、日本の教育がおもしろくてたまらない。将来、日本をつくる、世界をつくっていくであろう日本の子ども達を育てるという、こんなにもクリエイティブな職に携わることができている今日の自分の姿に、日々しあわせを感じながら、今日も教室へ向かうのである。愛すべき、子ども達のもとへ。

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小学校での総合的な学習のゲストティーチャーとして。

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地域の方にも、講演を行っています。

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派遣先の小学校にて。算数を教えていた子どもと。