【不定期シリーズ】J-menに聞く(JICA筑波で働く人たち) 研修指導員 澤田康介さん

研修指導員
澤田康介さん

今回は「つくばちびっ子博士2012」で7月24日(火)の体験プログラム野菜コースを担当していただく研修指導員 澤田康介さんにお話を伺いました。

研修指導員ってどんな仕事?

ミャンマーの山岳地帯に咲く日本ソバの花

活動地域を視察(ミャンマー、シャン州)

ワインブドウ収穫のあと(ルーマニア)

JICA筑波での収穫実習中(後列左)

研修員受け入れ事業は、日本国内で行われる人材育成に関わる国際協力であり、JICA事業の柱の一つです。
年間約一万人の研修員が世界各国から来日し、研修を受けています。JICA筑波では、年間150件前後の研修コースを実施しており、約100か国からおよそ900人の研修員が、農業・農村開発分野を始め、教育、水資源、防災、環境分野などの研修を受けています。

「私が在籍している国際耕種株式会社では、2001年よりJICA筑波の野菜・畑作物に係る研修を受託しています。私は2011年から野菜栽培技術コースの研修指導員として、栽培実習を中心とした研修指導にあたっています。2012年は7カ国から9名の研修員が来ています。彼らは2月から11月まで滞在し、種まきから収穫、収穫後の管理まで、野菜栽培に関わる技術を学びます。研修員の多くは各国の普及員であり、ほかに研究員や学校の先生もいます。帰国したら、今度は彼らが教える立場になるわけです。」

出身も言葉も環境もニーズも違う研修員たちに日々向き合う澤田さん。研修指導員となるまでの道のりと研修指導員の仕事について伺いました。

「活きのいい学生」ミャンマーへ飛ぶ

「国際協力に興味を持ったのは、大学時代のミャンマーでの経験がきっかけでした。当時の私の指導教授の恩師、氏原暉男先生(信州大学名誉教授)がJICA専門家として、ミャンマー連邦シャン州で栽培されていた麻薬ケシ撲滅のための代替作物として日本のソバを普及させるというプロジェクトに関わっていました。」

「その氏原先生から『誰か活きのいい学生がいたら面倒を見てやる』と言われ、まだ研究テーマが決まっていなかった私が行くことになりました。そこで目にしたJICA専門家の活動が刺激的で、いつかは自分も農業コンサルタントとして働きたいと考えるようになりました。最終的にはミャンマーには3年間で500日くらい滞在しました。」

青年海外協力隊でルーマニアへ

初めての海外だったミャンマーでは、新しいことへの挑戦や実地での活動が楽しくてたまりませんでした。卒論だけでなく、修論も現地での研究でまとめる成果を残し、澤田さんは次のチャレンジを探しました。

「大学院終了後、青年海外協力隊に応募し、野菜隊員としてルーマニアへ派遣されました。しかし、ここでは自分の力不足を実感することになりました。」
「1年目は農業高校の実習担当、2年目は農協設立のための普及活動を行いましたが、どちらの職場でも、社会経験のない新卒では現場のニーズにこたえることが出来ませんでした。私がやれたのは、一軒一軒農家を回り農作業の手伝いをしながら農協のシステムについて話をするくらい。残念ながら私の在任中に農協設立は叶いませんでした。それでも農家さんとお手伝いの『報酬』として出される食事とワインを囲んだのは、良い思い出になっています。」

悔しさをばねに邁進

自分には現場経験が足りていないことを強く感じた澤田さんは、帰国したのち、日本の農業に積極的に携わろうと種苗会社に就職しました。

「所属は生産部を希望しました。良い野菜を作るためには、良い種が必要です。野菜種子も農産物ですので、生産量や品質は天候に左右されますが、メーカーは良い品質の商品を安定供給する使命があります。販売する種子は国内外の農家に委託して採種するのですが、栽培管理には本当に気を遣いました。」

「会社では、栽培・採種技術だけでなく、社会人としてのイロハ、そしてお客様への商品を届けるメーカーとしての厳しさも学びました。お客様にお金を出していただける商品を作るということが、どれほど大変なことか。」
「2年目からは海外採種も任されるようになり、生育、収量調査のための海外出張も多くなりました。海外での栽培管理を通じて、日本とはまた違った経験を積むことが出来ました。また、海外の会社との契約交渉では購買折衝やコスト管理の大切さも学ぶことができました。」

種苗会社で約5年、現場でも実務でも頼られる立場となり自信となってきたころ、澤田さんに「農業コンサルタント」という夢へのチャンスが訪れました。

JICA筑波の研修指導員となる

「種苗会社の仕事はやりがいがありましたが、やはり学生時代の夢を忘れられずにいました。漠然と転職を考えていた時、知人が『いい会社がある』と国際耕種株式会社を紹介してくれました。それが、JICA筑波で働くきっかけになりました。」

「初めは各国から選ばれてきた研修員に携わるのに緊張もありましたが、今はとても楽しく仕事ができています。日本に居ながらいろんな国の研修員と関われることも魅力です。」
「研修員には、まず野菜をよく知るということを伝えています。野菜には、温度だったり土壌だったり、それぞれ好きな環境があります。なるべくその野菜に適した環境を整えてあげる知識や工夫というものこそが、栽培技術ではないかと考えています。」
「そしてその技術は、日本でも海外でも野菜を栽培するうえで同じように必要なものです。日本の農家は、目的とする品質の野菜を目的とする時期に生産するために、様々な技術を駆使しています。研修員には、そういった日本の農家の高い技術と細やかな栽培管理を学んでいってほしいと思っています。」

「研修員には、JICA筑波での研修に満足して帰国してほしいと思っています。いつか私が海外に出たときに、彼らとつながっていけるという期待もあります。研修員たちと同年代である自分ならではの関わり方で、何か新しい雰囲気を生み出していきたいと思っています」

研修指導員を仕事として一年半になる澤田さん。まだまだJICA筑波での挑戦は続きそうです。

インタビュー後記

ちびっ子博士たちに伝えたいことを伺うと「野菜に興味を持ってもらいたいですね。スーパーに並んでいる野菜にも作った人がいるんだということ。その品質の野菜を作った人々の技術があるということ。ちょっと難しいですけど」

忙しく活躍する澤田さんのもっぱらのお楽しみは、10か月になるお子様。週末には、JICA筑波で収穫された野菜を使っての離乳食作りに腕を振るっているそうです。