目指すのは幸せの国の有機農業−草の根技術協力事業「地域循環型有機農業による地域創生事業(ブータン)

2016年6月29日

首都ティンプーの圃場にて、最大の難敵ヒルムシロについて、熱心に説明するブータン農業省プラント・プロテクション・センターの職員

パロの有機農場の水田の様子。稲の間に浮いている枯葉のような植物がヒルムシロ。

水田横の水溜りでヒルムシロが大量発生している様子

農業機械化センター。事業では必要な機械を無償または低価格でレンタルする予定です。

パロの有機農家訪問。ご尊父は故西岡京治氏(海外技術協力事業団(現JICA)の農業指導員として派遣され、ブータンの農業発展に大きく貢献した人物)が日本に送った最初の研修員とのこと。抑草や有機肥料の材料となる大豆の栽培と、より手間のかからないヒルムシロ対策を実践する予定です。バター茶を頂きました。

首都Thimphuから車で2時間ほどのWongdue Phodrangでの試験圃場候補地。荒地のように見えますが、隣に水路が流れており、圃場の造成は簡単に行えます。

6月13日から6月20日にかけて、ブータンを対象とした草の根技術協力事業「地域循環型有機農業による地域創生事業」の協力内容を協議するための調査を行いました。

 国民総幸福量(GNH)という独自の考え方を国家の指標として掲げ、日本でも注目を浴びるブータン。この理念の下、農業分野においては生物多様性を尊重した100パーセント有機農業化を目指しています。
しかしながら、農業の生産性が高くないため、コメ農家は大量の除草剤や化学肥料に依存した農業を営んでいます。このため、農家は作付けの度に除草剤や化学肥料を購入しなければならず、農家の生計向上に対する足かせになっています。また、除草剤でも駆除できない雑草により収量の増加が思うように達成できていません。

 これら課題の解決に向けて、本事業の提案団体であるNPO法人民間稲作研究所様が持つ独自のノウハウ、具体的には従来よりも丈夫に育てた稲苗の田植え、大豆・トウモロコシなど地域資源を活用した抑草、独自の代掻き及び輪作を実践することで、(1)「除草剤を使用しない、かつ手間のかからない抑草技術の確立」(2)「化学肥料を使用しない収量の確保」(3)「農産物の多様化」を目指すことをブータン側担当機関と協議しました。

調査中、「ショウチュム」という言葉を何度も耳にしました。これは、日本語で「ヒルムシロ(多年生の雑草)」のことで、球根が地下20cmの場所にあるうえに繁殖力が非常に強く、作付け期間に3回も手作業での除草が必要です。調査で訪れたパロの有機農家では、ヒルムシロの根を切らないように手さぐりで球根を探り、球根ごとヒルムシロ全てを除去するという対応を取っています。中腰で肘近くまで水に手を突っ込む手探りの作業、しかも茎や葉を圃場に残せない。想像しただけで相当な作業量です。「年3回も除草するって大変ですね。」調査団がパロの農家の方に言うとこんな答えが返ってきました。「パロでは雑草が残っている田んぼは農家にとって恥なんですよ。手間の問題ではなく、プライドの問題なんです。」

水田でのヒルムシロの防除はブータンの農業での喫緊の課題であることが改めて確認されました。同時に、100%有機農法でありながら、より少ないコスト(人力・資金)で抑草と収量増加を見込めるノウハウに対し「Magic(魔法)」という呼ばれ方をされるほど、ブータン側から大きな期待が寄せられました。事業内容の正式な合意後、ブータン農林省の試験圃場で活動が開始されます。除草剤を使わないヒルムシロ退治、除草剤を使わなくなると発生してくる他の雑草の抑制を第1段階とし、収量の増加を目指す、最終的にはブータンの有機農業の発展を目指して、民間稲作研究所様とブータン農業省関係機関が協力し、本事業を進めていきます。

 草の根技術協力の制度や新たな事業提案に関する皆さんからのご質問、ご相談をお待ちしております。お気軽に当センター研修業務・市民参加協力課(TEL 029-838-1117)にご連絡ください。