「寺子屋ハジメマス」

2017年6月2日

草の根技術協力事業「紅茶プランテーション農園における青年層を活用した学童補習活性化事業」(スリランカ)

5月14日から20日にかけて、草の根技術協力事業「紅茶プランテーション農園における青年層を活用した学童補習活性化事業」の事前調査を実施しました。この事業は、スリランカの紅茶プランテーション農園に住む10代後半〜20代前半の青年層と協働し、同じく農園内に居住する児童に対し補習を含む課外活動を実施することで、児童が自分の人生を前向き・積極的に考えられるなることを目的としています。

ディコヤ地域の中心地。この長さ100mの通りが最も栄えている場所です。

協力対象地域は、スリランカのヌワラエリヤ県ハットン・ディコヤ地域。スリランカ最大の都市であるコロンボから車で5時間かかる山岳地です。標高が1,000mと高く、山から湧き出る水も豊富なため、紅茶の栽培に適した気候を有しています。驚くべきは鉄道です。近隣の町であるハットンと標高ほぼ0mのコロンボとが線路でつながっています。紅茶葉の輸送を目的とした路線ですが、1,000mの標高差を持つ路線が日本で最初に開業した新橋・横浜間の路線より8年も早くに作られていたという事実に圧倒されます。

ハットン駅の様子。標高1,000mのこの場所からコロンボまで路線が続いています。

ハットン・ディコヤ地域に戻ります。町の中心からバスで30分以上かかるへき地です。各農園内に診療所、託児所、学校などがあり、農園で生まれた労働者の子どもは、農園で育ち、農園内の学校を卒業すると農園で働くしか選択肢がありません。職を求めて首都に出たとしても希望の職業に就ける可能性は低く、失意と共に農園に戻った後も職に就かずただ日々を過ごしている青年層が多くいます。

「学校を卒業しても将来の選択肢が殆どない。」
「しかもこの境遇が代々続いていて変わることがない。」

紅茶プランテーション農園の風景。見渡す限りの茶畑と点在する加工場。ところどころに残っている木で日射量を調整しています。

農園に住む労働者たちの閉塞感は想像に難くありません。では、どうすればこの閉塞感を打破できるのか?この事業では、最も閉塞感を感じている農園の青年層に着目しています。農園の子どもが自分の将来を諦めないためには、自分の将来を前向きに捉えられるよう「自分で考える力」を育てることが最も重要です。この「考える力」を育てるために、農園の青年層が中心となって子供への課外活動を行うことで、青年層が生きがいを見つけると共に、子供たちが勉強に励み、自分の将来の選択肢を広げることで、農園のコミュニティが活性化していくことを目指しています。

茶摘みの風景。朝7時から夕方までひたすら茶葉を摘みます。日当制のため、休んだらその日の収入がありません。この生活が毎日続きます。何年もです。

最初は青年層の育成を目指します。子供に勉強を教えられる学力の強化から着手しますが、この事業の提案団体である宇都宮大学がある栃木県宇都宮市は、紅茶消費量が全国でも上位の街。宇都宮大学は、この事業についての栃木県・宇都宮市の人々への発信、そして宇都宮大学の学生や宇都宮市民と紅茶農園の青年や子供たちの交流を促進し、紅茶を通した市民同士のつながりを築きます。この繋がりを通じ、青年層に自分の人生が農園の隔離されているわけではないことを知ってもらい、自尊心を高めることを重視した活動を行う予定です。その後、子供への課外活動やコミュニティ内でのイベントが企画・実施できるようになることを目指します。

保護者代表との面談。近年では子供を学習塾に行かせる親御さんが増えてきているとのことでした。

調査で訪れた学校の校長先生はこう言いました。「子どもたちに最も身につけてもらいたいのは、学力ではなく倫理観や立ち振る舞いといった行動様式なんです。」道徳に基づく躾と理解しました。この事業で実施する「寺子屋」が、課外活動を通じて利他の心を根付かせることができるか。今後も定期的に活動の様子を紹介していく予定です。

 草の根技術協力の制度や新たな事業提案に関する皆さんからのご質問、ご相談をお待ちしております。お気軽に当センター研修業務・市民参加協力課(TEL 029-838-1117)にご連絡ください。