松村恵美子メモリアルファンドより53点の図書資料を寄贈いただきました。

2019年4月10日

メモリアルファンド寄贈式

2019年1月、JICA筑波図書情報室(現:JICA筑波図書館「ライブラリーまつむら」、以下同じ)の前司書である故 松村恵美子さんのご両親松村正昭様、恵子様の「松村恵美子メモリアルファンド」より、53点の図書資料をご寄贈いただきました。

このファンドは2018年10月にご夫妻により立ち上げられたもので、松村恵美子さんが大切に育てた第2図書情報室をより充実したものにすること、そしてJICAの技術研修員が日本の文化にふれ親しむこと、図書室が一般の方向けに開催するイベントを支援することを対象としています。

【JICA筑波図書情報室 前司書 松村恵美子さん】

松村恵美子さんは2007年度から2018年度までJICA筑波図書情報室の司書として勤務されました。

故 松村恵美子さん

 

施設訪問プログラム

図書情報室の蔵書をすみからすみまでご存じで、「このような資料を探しています」と相談すると、すぐに関係書類のリストを作り、利用者に応えます。また、JICA図書館(東京)にもどのような資料があるかということにも精通していて、すぐに必要なものを取り寄せていました。JICA筑波にやってくる研修員たちにも、参考図書へと導き、過去の帰国研修員が作成したアクションプランを準備して、技術研修で彼らが習得する内容をより深められるようにご案内。ある時研修員が図書室を訪れた際に、自分の父親も同じようにJICA筑波で研修を受けたことを松村さんに打ち明けました。すると松村さんはすぐに当時の資料を探してきて、彼の父親が参加していたコースについて教えてくれたそうです。彼はそのエピソードがとても強く心に残っていて、日本に再度来日して博士課程に進むことが決まった際にも、また図書室を訪問したいと考えていたそうです。

普段図書室のカウンターの中からにこやかに私たちを迎えてくれた松村さんは、施設訪問やJICA筑波でのイベント開催時にはいつもと違った表情で、訪れる方を迎えていました。

施設訪問プログラムでは、松村さんが本の紹介をしました。参加者が小学生から大学生までと幅広い中で、松村さんはいつも「今回の生徒さんたちはどんなことに興味があるのかしら?」と担当者に声をかけてくださり、学年や生徒の興味に合わせた本を用意してくれました。「国際協力、国際理解ってなんだか難しいイメージ!」と言う子どもたちにも世界のことを身近に感じてもらえるようにと、「民族衣装」、「食事」、「挨拶の言葉」等、わかりやすいトピック、生徒が思わず手にとりたくなる本を紹介していただきました。図書室訪問を終えた後にも、「もっと世界のことを知りたくなった」と再び図書室を訪れる生徒も多く、たくさんの生徒・学生達に世界に目を向ける楽しさ、大切さを伝えていただきました。「世界の国々の面白いところ、素敵なところを見つけると、その国が好きになるよね。」と優しく話しかける松村さんの笑顔がとても印象的でした。

ちびっ子博士での紙芝居

夏休み中に開催する「ちびっ子博士」では、世界のお話を選び、子どもたちに伝える「おはなし会」を開催しました。ガーナやアフガニスタン、ラオスなど、テレビや学校では聞いたことがあってもこうした国の人たちに会う機会はまだまだ少ないでしょう。そこで、日本語で読むだけではなく、研修員の協力も得て、おはなしの国がどんなところなのか、人びとがどのような暮らしをしているのか伝え、子どもたちが世界の国、文化やおはなしにふれる機会を作りました。また、研修員や、おはなしの国で活動を行ってきた元JICAボランティアが加わり、世界のゲームや体操で交流をしました。「おはなし会」は毎年大盛況で、いつもは静かなJICA筑波のロビーも子どもたちの楽しい声で満ちていました。参加した子どもたちはもちろん、付き添いのご家族からも、今まで知らなかった○○国の文化や食を知ることができた、と感想が寄せられました。

研修員の折り紙教室

2016年6月、国際理解教育や開発教育の書籍を集めた第2図書情報室をオープンしました。第2図書情報室には当初研修員向けに日本の歴史や文化、観光地を紹介した英語の書籍も配架していました。研修員にもっと日本のことを知ってもらいたい、そして図書室にある書籍を手に取ってもらいたい。そこで松村さんが考えたのが研修員向けの折り紙教室です。毎月研修員がチャレンジする作品を決めて、研修員が昼休みに気軽に図書室に来てもらえるように毎日教室をオープン。佐々木偵子さんを紹介する英語の本を購入した際には折り鶴の作り方を教え、広島の原爆や偵子さんのことを研修員に紹介しました。

【想いのつまった世界の絵本展】

世界の絵本展には松村さんの看護師の皆様にもご来場いただきました

第2図書情報室の開室から半年が過ぎた2017年1月、松村さんは腸閉塞で入院し、その後結腸がんであることがわかりました。手術を経て3月には復帰しましたが、11月再度入院されました。

入院中でも、図書室のことや利用者のことを常に考えていた松村さん。病院からJICA筑波に業務の連絡メールを送ってくださいました。2018年4月の科学技術週間中に実施した「世界のえほんがつくばに集合!!絵本で知る世界の国々 - IFLAからのおくりもの」絵本展も松村さんの発案です。実施に際しては、入院中でありながら外出許可をとり、展示の仕方や細かな運営上の懸念点にコメントをくださり、きめ細やかなサポートをしてくださいました。それだけでなく、絵本展の広告塔であった松村さん。お住いのマンションやなんと病院でも絵本展の宣伝活動をしていました。6日間の絵本展には400名ほどの来場があり、その中には、松村さんから話を聞いて足を運んだ方も多くいらっしゃいました。松村さんの主治医や、理学療法士、管理栄養士の先生方、それに何人もの看護師の皆様が絵本展に来てくださいました。開催中、松村さんも治療の合間を縫って何度も会場に駆けつけました。

【まつむら文庫、そしてメモリアルファンド】

松村さんから寄贈いただいた児童書

松村さんは、施設訪問やイベントなどで一般の方や子どもたちが図書室を訪問する際に世界の国々や民話、文化を紹介できるように、ご自分で集められた図書資料や絵本を図書室に展示していました。

松村さんから寄贈いただいた図書

私たちがよく知っている「おおきなかぶ」や「ハーメルンの笛吹き男」から、ミイラの作り方を説明する本、頭にのせた果物を友人に運んでいく途中で動物にとられてしまうケニアの女の子のかわいらしい物語、インドネシアボルネオ島のゾウの命がおびやかされているお話、アフガニスタンの少女と文通をするアメリカの小学生のお話、東南アジアの少数民族の伝承する民話・・・。どれも世界の国をぐっと私たちのそばに引き寄せてくれるような本ばかりです。この他にも松村さんが集めていらっしゃった国際理解の本、日本を紹介する英文資料、アフリカの布「カンガ」やカカオの実。松村さんは、2018年5月に収集していた大切な本や資料を、JICA筑波に寄贈くださいました。

松村さんが作成していた折り紙作品

2回目の入院中に詳細な遺伝子検査の結果、松村さんの体にひそんでいたのは現在の医学では効果的な治療を行うことが非常に難しい、きわめて悪性度が高いがんであることが判明しました。それでも私たちには「(がんが体中に)散らばっていて星のように見えるらしいですよ」と笑顔を見せてくれました。つらい治療中でもいつも利用者のことを考え、図書室の利用促進のためにたくさんの考えをめぐらせていた松村さん。たくさんの本や物品をご寄贈くださった直後、夏のイベント「ちびっこ博士」の企画が始まろうとする2018年6月に逝去されました。

第2図書情報室のまつむら文庫(現在はJICA筑波けやき棟1階図書館「ライブラリーまつむら」にあります)

松村さんの想いがたくさんつまった絵本や資料を集め、JICA筑波では第2図書情報室に「まつむら文庫」コーナーを設けました。世界の国々に想いを寄せることができる「まつむら文庫」はもちろん一般の方にご利用いただくことができます。

「まつむら文庫」は一般の方にもご利用いただけます

2019年1月に松村ご夫妻からからいただいた図書資料は、第2図書室の図書資料充実のために開発教育・国際理解教育書籍、絵本と児童書を「松村恵美子メモリアルファンド」からご支援いただいたものです。「松村さんなら次はこの本を手にとっただろう」と私たちが考えるたくさんの本が、第2図書室に仲間入りしました。

松村正昭様 恵子様 11年以上も恵美子さんからJICA筑波図書情報室にいただいたあたたかなご支援を、引き続きお二人から頂戴し誠にありがとうございます。ご寄贈いただいた資料は図書室に配架させていただき、多くの方にご利用いただけるようにいたします。

JICA筑波図書館「ライブラリーまつむら」をご利用ください!

メモリアルファンドから寄贈された本とともに

JICA筑波図書館「ライブラリーまつむら」は一般の皆様もご利用いただけます。個人への貸出しのほか、団体向けの貸出しも行っています。開室時間、ご利用方法等については、「ライブラリーまつむら」のページをご参照ください。皆様のお越しをお待ちしております!