「世界最古級の鉄器・ガラス」が展示される考古学博物館で地域振興イベントを開催(トルコ・カマン)

2022年5月30日

トルコの首都アンカラから車で1時間半。アナトリアのほぼ中央に位置するカマンは、「世界最古級の鉄器やガラス」が日本隊によって発掘され、日本政府/JICAも博物館等への支援を行うなど、日本とのつながりが深い地域です。この地域の考古学博物館において、2022年5月18日と5月23日に地域振興に向けたプロモーションイベントを実施しました。

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カマン・カレホユック考古学博物館

人口過疎化が進む小さな村落・カマンと日本の深いつながり

トルコでは近年、地方村落から都市部への労働力流失が各地で発生しています。それに伴い、地方村落での人口過疎化が急速に進行しており、クルシェヒル県カマン郡では、2000年時には6万人強だった人口が2021年には3万4千人まで減少しました。カマンの減少幅は県内で最も大きく、深刻な状況となっています。

カマンと日本のつながりは深く、1985年以来、考古学者の大村幸弘博士を中心に中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所(東京都三鷹市)がカマン・カレホユック遺跡等の発掘調査を行っており、2017年には世界最古級とされる鉄器が発掘されました。また、最近では世界最古となる可能性のある5,600年前のガラスも発掘されています。2010年には日本政府の一般文化無償資金協力によって「カマン・カレホユック考古学博物館」が建設されたほか、日本国外で最大級の日本式庭園の一つである「三笠宮記念庭園」があります。過去にJICAは遺跡調査や博物館・日本庭園の管理についてシニアボランティア、専門家、日本での研修などによる支援を実施してきました。現在、これらの遺跡発掘現場や日本庭園などの運営は現地住民によって支えられており、カマンと日本の深いつながりを示しています。

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三笠宮記念庭園における茶道

カマンの独自の芸術・音楽・工芸をイベントでプロモーション

「国際博物館週間」にあたる5月18日および5月23日、カマン・カレホユック考古学博物館、JICA、在トルコ日本大使館、土日基金の協力のもと、カマン地域振興に向けたプロモーションイベントが開催され、エミネ・エルドアン大統領夫人もご参加されました。

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大村博士から説明を受けるエミネ夫人

イベントでは、地域に伝わる民謡や舞踊が演奏され、参加者には地域特有の食事がふるまわれました。また、ヒッタイト帝国の人々の暮らしをテーマにした演劇を地元の女性が披露し、5,000年以上前からの歴史を持つカマンの独特な魅力を発信しました。

また、5,600年前のガラスが近年発掘されたことに因み、収入源のない村人や社会的弱者の将来の生活基盤づくりを目的に、地域の女性を対象としたガラス工芸のワークショップを実施しました。イベントではワークショップで制作した工芸品が展示されたほか、ガラス工芸制作の実演も行われ、参加者が地域の文化・歴史を知り、興味を持つきっかけともなりました。

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ガラス工芸の実演

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地元住民による演劇

カマンと日本との深いつながりを記念し、イベントでは、日本の茶道やけん玉、折り紙等の日本の伝統文化も紹介され、参加者からは「とても楽しかった。是非またやってほしい。」「次はいつですか。」との声が聞かれるなど好評でした。

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折り紙の紹介

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茶道の紹介

イベントが地元の女性の「サクセスストーリー」に

イベント終了後、企画段階から携わったカマン・カレホユック考古学博物館のイゼット・エセン館長は次のように語りました。

「JICA、在トルコ日本大使館、土日基金、クルシェヒル県、カマン市、カマン地区などの多くのパートナーの協力により、本イベントを実現することが出来ました。地域の女性たちによる演劇は、彼女たちのサクセスストーリーになりました。特に、JICAの協力によって実施されたガラス工芸ワークショップは地域の女性たちにとって非常に有益でした。彼女たちは短期間で多くのガラス工芸を制作し、更なる経済的収入を得るための方策とする動機付けとなったと思います。今後もJICAとの連携を深めていきたいと思います。」

本プロモーションイベントを通じて、トルコや日本でのカマンの認知度が高まるとともに、地域全体の振興と活性化につながることが期待されます。