トルコと日本の研究機関による災害リスク軽減のための共同工学研究を支援

2023年1月6日

12月15日(木)、トルコのゲブゼ工科大学で、JICAの安藤直樹理事とゲブゼ工科大学のハジ・アリ・マンタル学長がSATREPS(注)プロジェクト「災害に強い社会を発展させるためのトルコにおける研究と教育の複合体の確立-マルテスト」実施のためのR/D文書に署名しました。

(注)SATREPS:地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム

マルテストの概要と開設の背景

マルテストは、トルコの国家プロジェクトの一環としてゲブゼ工科大学に開設される新たな耐震工学研究の研究機関です。
日本と同じく地震の多いトルコでは、近年大規模な地震が多発しています。特に1999年のトルコ北西部地震は、2万人の犠牲者を出す惨事となりました。またイスタンブール付近のマルマラ海域は地震リスクの高い地域となっているほか、耐震基準の低い建物が多いため、対策が急がれています。
このような中、ゲブゼ工科大学はトルコ北西部地震以降、地震・構造工学に関する研究を行ってきました。
JICAは本事業において、日本の研究機関(香川大学など)からの専門家の派遣や試験機材の提供を通じてマルテストへの支援を行う予定です。

JICAのトルコ防災機関への協力とこれからの展望

これまでJICAはトルコにおいて様々な地震分野での支援を行ってきました。
2010年から2012年にかけては、AFADとボアジチ大学カンデリ観測所の連携構築や地震情報の解析方法に係る技術支援を行いました。さらに2013年から2018年にかけては、上記の協力を発展させ、マルマラ海域での地震観測や地震・津波のシミュレーション、ハザードマップの製作を行いました。
2022年11月23日、イスタンブールの東170kmにあるデュズジェ市を震源地とするM6.1の大地震が発生しました。倒壊した建物の数2,917棟、死者2名、負傷者93名の惨事となりましたが、1999年11月12日の同じデュズジェ市を震源地とする大地震の被害(地域の全建物の約60%が倒壊、死者894名、負傷者5,000名)に比べ被害が抑えられました。本事業のR/Dへの署名後、安藤直樹JICA理事も被災後のデュズジェ市を視察し、1999年の大地震後に建築物の耐震化が図られた結果、倒壊家屋数が大幅に減少したことを確認しました。
被害の減少にはJICAの支援も貢献したと言われており、本事業においても、これら過去の協力内容の成果が活用される予定です。
また本事業を通じて様々な工学実験が行われ、類似した研究内容の共有や新たな災害リスク方法の開発・統合を通じ、減災に繋げることが期待されています。最終的にはゲブゼ工科大学を中心とするトルコの研究機関が地震工学分野の知見を蓄積して、周辺国を含んだ国際研究開発の協力体制を構築することを目指しています。

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署名式の様子

本プロジェクトでは、ゲブゼ工科大学の4名の教授が、1)地震工学発展のための環境整備と都市の脆弱性調査、2)外部性を考慮した地震・津波に対するソフト・ハード総合対策プラットフォームの構築、3)地震・地殻変動観測に基づく北アナトリア断層の活動評価、4)都市災害と防災リテラシー向上にかかる各ワーキンググループをリードします。署名式の際には、ハジ・アリ・マンタル学長に加え、4名のワーキンググループリーダーも出席し、香川大学をはじめとする日本との長きに亘る協力について紹介がありました。本プロジェクトを通じて、日本・トルコの研究分野における協力がさらに深化されることが期待されます。

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