2018年6月29日
北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト(Northern Uganda Farmers' Livelihood Improvement Project:NUFLIP)は2015年12月に開始され、ウガンダ北部のアチョリ地域を対象に実施されています。この地域では長い内戦があり、多くの住民が避難を余儀なくされましたが、内戦終結から10年以上が経ち、徐々に避難民の再定住が進み、復興の兆しが見えてきました。NUFLIPでは対象とする農家グループの自立と生計向上を実現するために、野菜の栽培と販売を通した市場志向型農業の推進と、食料の計画的な生産や消費、備蓄を通した生活の質向上の両面から支援を行っています。
2018年5月で開始から2年半が経ち、5年間のプロジェクト期間のちょうど折り返しとなることから、中間モニタリングを実施しました。中間モニタリングには、ウガンダ農業畜産水産省(MAAIF)の関係者やJICAウガンダ事務所が参加し、農家グループへのインタビューを行ったほか、野菜の栽培状況を視察するなどこれまでの成果や課題を確認しました。
まず、NUFLIPの屋台骨となるのが、市場志向型の野菜栽培・販売、即ち“売るため”に作る農業の支援です。野菜栽培は、狭い農地でも比較的大きな収入を得られるため、農家グループにとってはポテンシャルの高い生計向上手段の一つです。しかし、闇雲に野菜を生産しても、市場ニーズや需給状況の情報なしには販売にk~げることができません。そこで、NUFLIPでは、農家グループと市場で売れる野菜の種類や質・時期などの情報を調査し、“売るため”の知識を身に付ける活動を実施したほか、調査で得た情報をもとに、農民グループ自らが栽培作物を決定するための研修を行いました。2017年に研修を終えた農家グループからは、「市場の状況を意識して栽培する野菜や作付けのタイミングを考えるようになった。」、「きちんと管理すれば、小さな畑からでも利益を上げられることが分かった。」、「野菜生産の技術を身に付けることができた。」などの前向きなコメントが数多く寄せられました。NUFLIPではこの効果が持続していくよう引き続きフォローアップとモニタリングを継続します。
続いて、生活の質向上に向けた支援活動です。この活動は家族みんなが幸せになることを目標としており、1)社会的弱者・ジェンダー配慮、2)家族の目標設定、3)食べる量、売る量、栄養を勘案した作物栽培、4)収穫物や家畜のストック管理、5)現金の収入・支出管理、6)栄養を勘案した食事や衛生改善に配慮した活動を行っています。この結果、「家庭の決定事項は、家族みんなで話して決めるようになった」、「今まではまず何エーカーの畑を耕すかを考えていたが、食べる量・売る量を決めて作付け計画を作るようになった」、「毎日の主食の量をちゃんとカップで計るようになったので、食料在庫が不足することがなくなった」など、農家グループから多くの成果を報告して頂いています。
また、農家グループだけでなく、私達の心強い同僚であるのが現地の農業普及員です。農業普及員とは野菜や作物の栽培方法を農家に教える県に所属する職員のことです。NUFLIPでは、支援活動の効果をより多くの人々へ伝えるため、農業普及員の能力強化にも取り組んでいます。多くの農業普及員は農家グループの変化を目の前にして、自分たちの仕事に誇りを持ってくれていると感じました。また、農業普及員が所属する県の農業課長や生産局長もNUFLIPの取り組みを高く評価していて、この取り組みを県が主導して継続していきたい意向を示しています。
折り返しに差し掛かったプロジェクトは、期待された成果がはっきり見え始めてきました。中間レビュー後に実施されたMAAIF・プロジェクト対象県・JICA関係者との合同調整委員会では、残りの期間で更に成果を拡大していく必要性が確認されました。NUFLIP専門家チームは、今後も農家のことを第一に考え、真摯に努力していこうと強く思っています。
農家グループへのインタビュー
農家グループの野菜栽培圃場の視察
農家グループの野菜栽培圃場の視察
農業普及員による農家研修